半導体の会社分析

AEC-Q100/101とは? – 車載半導体の品質を守る国際規格

1. AECとは?

AEC(Automotive Electronics Council、自動車電子部品協議会)は、1994年に**米国の自動車メーカー(クライスラー・フォード・GM)**が中心となって設立された業界団体です。
目的は、車載電子部品の品質と信頼性を確保するための共通規格を作り、世界中で統一的に活用することです。


2. AEC-Q100とAEC-Q101の違い

規格名対象主な内容
AEC-Q100集積回路(IC)車載向けICの信頼性試験(マイコン、アナログIC、メモリなど)
AEC-Q101ディスクリート半導体車載向け個別半導体(パワーMOSFET、ダイオード、トランジスタなど)の信頼性試験

簡単に言うと、Q100はIC用、Q101はパワー素子やトランジスタ用の規格です。


3. なぜ必要なのか?

自動車は**-40℃〜150℃の過酷な温度環境、振動、湿度、長期間の使用に耐える必要があります。
もし半導体が走行中に故障すれば、命に関わる事故につながりかねません。
そのため、民生用半導体よりも
はるかに厳しい品質基準**が求められます。


4. AEC-Q100の主な試験項目(IC向け)

試験項目内容目的
高温動作寿命試験(HTOL)高温環境で長時間動作させる長期耐久性の確認
高温保存試験(HTS)高温で通電せず保存材料劣化の確認
温度サイクル試験高温と低温を繰り返す熱膨張・収縮による劣化確認
温湿度動作試験(THB)高温高湿環境で通電湿気による腐食や短絡確認
静電気耐性試験(ESD)静電気を印加ESD破壊耐性の確認
落下衝撃試験衝撃を与える機械的強度の確認

5. AEC-Q101の主な試験項目(ディスクリート向け)

  • 高温リバースバイアス試験(HTRB)

  • 高温ゲートバイアス試験(HTGB)

  • 温度サイクル

  • パワーサイクル

  • パッケージ破壊耐性評価

特にパワー半導体では熱サイクルや電力負荷の耐久性が重要視されます。


6. 認証ではなく「自己宣言」

AEC-Q100/101は公式な認証制度ではなく、メーカーの自己適合宣言です。
つまり、「自社製品がAEC規格を満たしている」とメーカーが宣言し、試験データを顧客(自動車メーカーやティア1部品メーカー)に提示します。
ただし、要求水準は非常に高く、AEC適合=車載市場への参入チケットと言えるほど重要です。


7. まとめ

AEC-Q100/101は、自動車用半導体の安全性と信頼性を保証するための世界標準です。
特に自動運転・EV化が進む現代では、半導体の故障は交通事故やリコールのリスクに直結するため、この規格の重要性はますます高まっています。
車載半導体メーカーにとっては、AEC規格を満たすことが市場参入の最低条件であり、品質と信頼の証でもあります。