半導体用語集

「H」から始まる半導体用語

HEMT

HEMT(High Electron Mobility Transistor、高電子移動度トランジスタ)は、高速動作が可能な半導体デバイスです。HEMTは、1980年代初頭に発明され、特に高周波数でのアプリケーションや低ノイズ要求が厳しい分野で利用されています。このトランジスタは、その構造において特定の異種半導体材料の界面に高電子移動度チャネルを形成することにより、高速動作を実現します。

HEMTの構造と原理

HEMTは、非常に高性能な化合物半導体デバイス[トランジスタ]だ。

HEMTは、AlGaN/GaN(窒化ガリウムと窒化アルミニウムガリウムのヘテロ接合)や、InGaAs/InP(ヒ化インジウムガリウムとヒ化インジウムリンのヘテロ接合)など、異種の半導体材料を組み合わせて作ることが一般的だ。

これらの材料の界面には、二次元電子ガス(2DEG)と呼ばれる非常に薄い高電子密度層が形成される。

この層は非常に高い電子移動度を有しており、HEMTの高速動作の肝となっている。

HEMTの特徴

  • 高速動作: 2DEGによる高い電子移動度により、非常に高速なスイッチングが可能。
  • 低ノイズ: 高いキャリア密度と高速動作により、特に高周波数で低ノイズ特性を実現できる。
  • 高い出力: HEMTは高出力動作が可能で、特に高周波数アンプに適している。

HEMTの応用分野

  • 通信機器: 携帯電話基地局や衛星通信など、高周波数帯での信号増幅に利用される。
  • レーダーシステム: 軍事用途や自動車の衝突回避システムなど、高性能なレーダー装置にHEMTが使用される。
  • 低温物理研究: 2DEGは非常に低い温度でも高い電子移動度を維持するため、低温物理学の研究にも用いられる。
  • 無線LANアンプ: Wi-Fiなどの無線LANアプリケーションでの信号増幅にも利用されている。

HEMTの課題

HEMTの製造には、高度な半導体製造技術が必要であり、製造コストが高くなる場合がある。

また、高電子移動度を維持するためには、半導体材料の品質が非常に重要であり、材料の不純物や欠陥を極限まで減らす必要がある。

これらの課題に対して、材料科学や製造技術の進歩が求められている。

HCl[塩酸, Hydrochloric Acid]

半導体製造プロセスにおいて、塩酸(HCl)は重要な役割を担っている。

HClは、主にウェハーの表面処理、洗浄、エッチング(微細な部分を除去するプロセス)、および特定の薄膜の成長制御に使用される。

その化学的性質により、HClは半導体の製造における多くのステップで利用される汎用的な化学薬品だ。

HClの使用例

  • ウェハーの表面処理: 半導体ウェハーの表面から酸化物やその他の汚染物質を除去するために、HClベースの薬液が使用される。この処理により、ウェハー表面が清浄化され、後続の製造プロセスの品質を向上させることができる。
  • エッチングプロセス: HClは、シリコンやシリコン化合物のエッチングに使用されることがある。HClガスを使用したドライエッチングプロセスでは、プラズマを介してウェハー表面の微細な部分を正確に除去することができる。
  • エピタキシャル成長: エピタキシャル層(結晶層が基板の上に直接成長すること)の成長プロセスにおいて、HClは不純物の除去や成長速度の制御に役立つ。特に、シリコンウェハー上に高品質なシリコン層を成長させる際に使用される。

HClの安全性と取り扱い

HClは非常に反応性が高く、腐食性があるため、取り扱いには注意が必要だ。

人体にはもちろん有害だ。

半導体製造施設では、HClガスを扱う際には、適切な排気処理設備や安全対策が施されている必要がある。

また、HClを含む液体の取り扱いでは、適切な保護具の着用が必要だ。

HClの取り扱いにおいては、作業者の安全と環境保護が最優先される。

HDL[Hardware Description Language]

HDL(Hardware Description Language)は、デジタル回路や電子システムの構造と動作を記述するために使用されるプログラミング言語の一種だ。

HDLを使用することで、論理回路や集積回路(IC)の設計者は、物理的なハードウェアを製造する前に、コンピュータ上で電子回路の設計、シミュレーション、検証を行うことができる。

HDLを活用すると、複雑なデジタルシステムの設計を効率化し、設計の誤りを早期に発見し修正することが可能だ。

HDLの主な種類

  • VHDL(VHSIC Hardware Description Language): 米国国防総省のVHSIC(Very High Speed Integrated Circuit)プログラムの一環として開発された。複雑なデジタルシステムの設計に適しており、特にヨーロッパと米国で広く使用されている。
  • Verilog: よりシンプルで学習が容易な言語であり、初期の段階から商業的な設計に用いられてきた。米国を中心に広く使われており、SystemVerilogとして拡張された形で、より高度な機能を提供している。

HDLの機能と利点

  • 抽象化: HDLは、電子回路の動作を高いレベルで抽象化して記述することを可能にする。これにより、設計者は具体的な実装方法に囚われることなく、回路の動作やインターフェースを定義できる。
  • シミュレーション: HDLで記述されたモデルは、実際のハードウェアを製造する前にシミュレーションを行い、動作を確認できる。これにより、設計ミスを早期に発見し、修正コストを削減できる。
  • 再利用: 一度HDLで記述されたコンポーネントは、異なるプロジェクトでも再利用することができる。これにより、設計プロセスの効率化と開発期間の短縮が可能になる。
  • 自動合成: HDL記述から自動的に論理合成を行い、ゲートレベルのネットリストや配置配線情報を生成することができる。これにより、設計から製造までのプロセスが自動化できる。

HDLの使用例

HDLは、FPGA(Field-Programmable Gate Array)やASIC(Application-Specific Integrated Circuit)の設計、マイクロプロセッサの開発、組み込みシステムの設計など、幅広い分野で使用されている。

また、教育や研究分野でも、デジタル回路設計の基本を学ぶためのツールとして利用されている。

HDLを使用することで、複雑な電子システムの設計が効率的に行えるため、現代の電子機器開発において不可欠な技術となっている。

HDP[High Density Plasma,高密度プラズマ]

HDP(High Density Plasma、高密度プラズマ)は、半導体製造プロセスにおいて使用されるプラズマの一種で、非常に高い密度のイオンと電子を含んでいるものだ。

HDPは、エッチング(材料の除去)、成膜(薄膜の形成)、プラズマ洗浄など、さまざまなプロセスで重要な役割を果たしている。

HDPを使用することで、微細な構造を持つ半導体デバイスの製造が可能になり、集積度の向上やデバイス性能の改善に貢献できる。

HDPの特徴

  • 高いイオン密度: HDPは、従来のプラズマに比べてイオン密度が非常に高いため、より効果的なエッチングや成膜が可能となる。これにより、高いアスペクト比の構造の形成や、均一な薄膜の堆積が実現できる。
  • 方向性: HDPエッチングでは、イオンが高密度であるため、より方向性のあるエッチングが可能となる。これは、微細なパターンの形成において非常に重要だ。
  • 低温プロセス: HDPを使用したプロセスは、比較的低温で行うことができるため、熱に敏感な材料に対しても使用することが可能。

HDPの応用

  • エッチング: HDPエッチングは、半導体デバイスの微細な構造を精密に形成するために用いられる。特に、チップの3次元構造で使用するような深いビア(穴)の形成や高アスペクト比の構造に対して有効。
  • 成膜: HDP-CVD(Chemical Vapor Deposition、化学気相成長)は、シリコン酸化膜や介電膜などの薄膜を均一かつ高密度に堆積させるために使用される。このプロセスにより、微細な隙間も充填することができ、デバイスの信頼性を向上させる。
  • プラズマ洗浄: HDPを用いたプラズマ洗浄は、ウェハー表面の微細な汚染物質を除去するために使用される。高いイオン密度により、効果的な洗浄が可能となる。

HDPの課題

HDPを利用したプロセスは、高いイオン密度による利点がありますが、装置の複雑さやコスト、プラズマによる損傷のリスクなど、いくつかの課題も存在する。

これらの課題に対処するために、プロセス条件の最適化や、損傷を最小限に抑える技術の開発が進められている。

HMDS[Hexamethyl Disilazane,ヘキサメチルジシラサン]

HMDS(Hexamethyl Disilazane、ヘキサメチルジシラサン)は、化学式が(C2H3)3SiNHSi(CH3)3の有機シリコン化合物だ。

HMDSは、特に半導体産業においてフォトリソグラフィプロセスの一環として重要な役割を果たす。

HMDSは、主にフォトレジストの密着性向上剤として用いられ、ウェハー表面の改質を行い、フォトレジストの密着を促進する。

HMDSの特徴と利点

  • 水分の排除: HMDSはウェハー表面から水分を排除し、その表面を疎水性に変えることで、フォトレジストの密着を向上させることができる。
  • 表面改質: ウェハー表面を疎水性にすることで、フォトレジストが均一に塗布されやすくなり、後の露光プロセスでのパターンの精度が向上する。
  • プロセスの改善: HMDSの使用により、フォトレジストの剥離や欠陥を減少させることができ、製造プロセスの信頼性と収率が向上する。

HMDSの使用方法

HMDSの適用方法には、スピンコーティングなどがある。

スピンコーティングでは、HMDSを溶液としてウェハーに塗布し、遠心力を利用して均一な膜を形成します。

ウェハー表面を疎水性にすることが目的だ。

HMDSの安全性と取り扱い

HMDSは揮発性が高く、吸入や皮膚への接触を避ける必要がある。

取り扱いに際しては、適切な保護具を着用し、良好な換気のある環境で作業を行うことが必須だ。

また、HMDSは可燃性があるため、火気を避ける必要がある。

HPM洗浄[HPM Cleaning]

HPM洗浄(Hydrogen Peroxide Mixture Cleaning)は、半導体製造プロセスにおいて使用されるウェハーの洗浄技術の一つだ。

この洗浄方法は、過酸化水素(H2O2)を含む混合溶液を使用し、ウェハー表面の有機物質、金属イオン、その他の汚染物質を除去することができる。

HPM洗浄は、ウェハー表面の清浄度を高め、後続の製造プロセスの品質と収率を向上させることを目的としている。

HPM洗浄の成分

HPM洗浄液は主に、過酸化水素(H2O2)と水(H2O)、およびアンモニア(NH3)や塩酸(HCl)などの添加剤から構成される。

これらの化学物質の比率は、洗浄対象の汚染物質やウェハーの材質によって最適化する必要がある。

  • 過酸化水素:強い酸化剤として働き、有機物質の酸化分解や金属イオンの除去に寄与する。
  • アンモニアまたは塩酸:pH調整剤として機能し、洗浄液の反応性を制御する。また、特定の汚染物質に対する洗浄効果を高めるために使用する。

HPM洗浄のプロセス

HPM洗浄プロセスは、通常、ウェハー製造の複数の段階で実施される。

プロセスには以下のステップが含まれる。

  1. 洗浄液の調製:過酸化水素と他の化学物質を混合して洗浄液を調製する。
  2. ウェハーの浸漬:ウェハーを洗浄液に浸漬し、一定時間保持する。この間に汚染物質が除去される。
  3. リンスと乾燥:洗浄後のウェハーを純水でリンスし、乾燥させる。

HPM洗浄の利点

  • 高い清浄度:HPM洗浄は、ウェハー表面の微細な汚染物質まで効果的に除去することができる。
  • 多様な汚染物質の除去:有機物質、金属イオン、粒子など、さまざまな種類の汚染物質に対して高い洗浄効果を発揮する。
  • プロセスの柔軟性:洗浄液の組成を調整することで、異なる材質や汚染物質に対応することができる。

注意点

HPM洗浄は高い洗浄効果を持ちますが、使用する化学物質の取り扱いには十分な注意が必要だ。

過酸化水素は強い酸化剤であり、取り扱い中の安全対策は必須。

また、洗浄プロセスの条件(温度、浸漬時間など)は、ウェハーの材質や洗浄対象の汚染物質に応じて慎重に選択・最適化される必要がある。

適切なプロセス条件の選定は、ウェハーへの損傷を防ぎ、洗浄効果を最大化するために重要だ。

加えて、洗浄後のリンスと乾燥ステップは、洗浄プロセスの成果を保持するために必要だ。

不十分なリンスは、残留汚染物質の原因となり、不適切な乾燥プロセスはウェハー表面に水跡や汚染を引き起こす。

そのため、洗浄、リンス、乾燥の各ステップは、総合的な清浄度とウェハー品質を確保するために、細心の注意を払って管理するべきだ。

さらに、HPM洗浄プロセスを実施する際には、環境への影響も考慮する必要がある。

使用される化学物質は適切に処理・廃棄されるべきであり、排出される廃液は環境基準に適合していることが求められる。

このため、半導体製造施設では、化学物質の取り扱いに関連する規制やガイドラインに従うことが不可欠だ。

HTO[High Temperature Oxide]

HTO(High Temperature Oxide)は、半導体製造プロセスにおいて使用される酸化シリコン(SiO2)膜の一種で、高温での熱酸化によって形成される。

この方法では、シリコンウェハーを高温(通常は900°C以上)の環境に置き、酸素または水蒸気の存在下でウェハー表面に酸化膜を成長させる。

HTO膜は、その優れた電気的特性と信頼性から、絶縁膜、ゲート酸化膜、保護膜など、さまざまな用途で広く使用されている。

HTOの特徴

  • 高品質: 高温で形成されるHTO膜は、密度が高く、均一な膜厚を持ち、低い欠陥率が特徴だ。これにより、優れた絶縁特性と高い信頼性を実現できる。
  • 優れた電気的特性: HTOは、高い絶縁耐力と低いリーク電流を持ち、半導体デバイスの性能向上に貢献する。
  • 高い耐熱性: 高温プロセスで形成されるため、HTO膜は高い耐熱性を持つ。これにより、後工程での高温処理に対する耐性が向上する。

HTOの応用

  • ゲート酸化膜: MOSFET(Metal-Oxide-Semiconductor Field-Effect Transistor)などのトランジスタでは、ゲート酸化膜としてHTOが使用される。これにより、ゲート制御の精度が向上し、デバイス性能が改善される。
  • 絶縁膜: 半導体デバイスの異なる層間の絶縁や、ウェハー表面の保護膜としても利用される。これにより、デバイスの信頼性と耐久性が向上する。
  • キャパシタの誘電体膜: 特にDRAM(Dynamic Random Access Memory)などのメモリデバイスにおいて、HTOはキャパシタの誘電体膜として使用され、デバイスの容量と速度の向上に貢献する。

HSG[Hemi Spherical Grain]

HSG(Hemi-Spherical Grain)シリコンは、半導体デバイスの製造において、特にDRAM(Dynamic Random Access Memory)などのメモリデバイスのキャパシタで使用される微細なシリコン構造だ。

HSGシリコンは、半球形の粒子(grains)を持ち、これがキャパシタの表面積を増加させることで、単位面積あたりのキャパシタンス(電気容量)を大幅に向上させることができる。

HSGの特徴と利点

  • 表面積の増加: HSG構造により、キャパシタの表面積が増加し、同じスペースでより多くの電荷を蓄積できるようになる。これにより、メモリデバイスのデータ保持能力がアップする。
  • 高い電気容量: キャパシタの電気容量は、その表面積に比例する。HSG構造を採用することで、電気容量を増加させることができ、メモリセルの性能向上に寄与する。
  • 製造プロセスの互換性: HSG構造は、既存の製造プロセスに組み込むことが可能であり、特別な設備投資を必要としない場合が多い。

HSGの製造方法

HSGシリコンの形成は、一般的には化学気相成長(CVD)プロセスによって行われる。

このプロセスでは、アモルファスシリコン層をウェハー表面に堆積させた後、適切な温度とガス環境下で熱処理を行い、半球形の多結晶シリコン(ポリシリコン)粒子を形成する。

この熱処理により、アモルファスシリコンが多結晶化し、HSG構造が形成される。