1. 車載半導体とは?
車載半導体とは、自動車に搭載される電子制御用の半導体デバイスの総称です。
エンジン制御や安全装置、カーナビ、電動化、通信機能など、現代の車のほぼすべての機能に関わっています。
近年では、EV化(電動化)や自動運転技術の進展により、1台あたりの半導体搭載量が急増しています。
2. 車載半導体の主な種類と役割
種類 | 役割 | 代表例 |
---|---|---|
マイコン(MCU) | エンジン、ブレーキ、エアバッグなどの制御 | ルネサスRX/TXシリーズ、NXP S32 |
パワー半導体 | モーター駆動、充電、電力変換 | SiC MOSFET、IGBT(Infineon、三菱電機) |
センサー | 車両状態・周囲環境の検知 | CMOSカメラ、LiDAR、ミリ波レーダー |
アナログIC | センサー信号の増幅・変換 | Texas Instruments、Analog Devices |
メモリ | ソフトウェアや地図データの保存 | NORフラッシュ、DRAM(Micron、Samsung) |
通信IC | 車内・車外通信(CAN、Ethernet、5G) | Qualcomm、NXP |
3. 需要が急増する背景
3-1. EV化(電動化)
ガソリン車と比べ、EVは半導体搭載量が2〜3倍
モーター制御用パワー半導体、バッテリー管理IC(BMS)が必須
3-2. ADAS・自動運転
高性能プロセッサやAIチップが必要
カメラ・レーダー・LiDARからの大量データ処理を行うSoCが搭載される
3-3. コネクテッドカー
常時インターネット接続による地図更新・遠隔診断
5G通信モジュール、V2X(車車間・路車間通信)対応チップが必要
4. 主要メーカー
カテゴリー | 主な企業 |
---|---|
総合車載半導体 | ルネサスエレクトロニクス(日本)、NXP(オランダ)、Infineon(ドイツ) |
パワー半導体 | Infineon、STMicroelectronics、三菱電機、富士電機、ROHM |
AI/自動運転SoC | NVIDIA(Driveシリーズ)、Qualcomm(Snapdragon Ride) |
メモリ | Micron、Samsung、SK hynix |
5. 課題とリスク
5-1. 半導体不足
2020〜2022年に自動車生産が減速
車載向けは長期供給契約が主流で、急な増産が難しい
5-2. 品質基準の高さ
AEC-Q100/101などの車載規格に準拠
高温・振動・長寿命(15年以上)への対応が必須
5-3. 技術転換のスピード
SiC(炭化ケイ素)、GaN(窒化ガリウム)パワー半導体の採用拡大
既存技術との切り替えに伴う開発コスト増
6. 今後の展望
EV市場拡大:2030年までに車載半導体市場は倍増(約1,300億ドル規模)
AI搭載車の普及:車載GPU・AIアクセラレータの需要増
半導体の内製化:トヨタ、テスラなど一部自動車メーカーが独自チップ開発を開始
再設計の波:地政学リスク回避のため、生産地分散・サプライチェーン再構築が進む
まとめ
車載半導体は、自動車の“頭脳”と“神経”を担う存在です。
EV、自動運転、コネクテッド化といったトレンドが加速する中で、自動車メーカーと半導体メーカーの連携はますます重要になります。
今後10年、車載半導体は半導体業界の成長を牽引する分野の1つになるでしょう。