半導体の工場

クリーンルームの構造 – 半導体製造を支える“究極に清浄な空間”の作り方

1. クリーンルームとは

クリーンルームは、空気中の塵や微粒子、微生物を極限まで減らした特殊な作業空間です。
半導体や液晶パネル、医薬品などの製造では、ナノレベルのゴミが製品不良の原因になるため、厳密な清浄度管理が求められます。

清浄度は「クラス」で表され、米国規格(FED-STD-209E)では、1立方フィートの空気中の粒子数で規定されます。
例:クラス1は、0.5μm以上の粒子が1立方フィート中に1個以下。


2. クリーンルームの基本構造

クリーンルームの構造は、大きく分けて以下の要素で成り立っています。

2-1. 天井(天井HEPA/ULPAフィルター)

  • 天井一面に**HEPA(High Efficiency Particulate Air)ULPA(Ultra Low Penetration Air)**フィルターを配置

  • 外部空気や循環空気を99.99%以上の効率でろ過し、微粒子を除去

  • 清浄度の高いエリアほどフィルター面積を広く取る


2-2. 気流方式(垂直層流 or 水平層流)

  • 垂直層流(Vertical Laminar Flow)
    天井から床に向けてまっすぐ空気を流す方式。粒子の再浮遊を防ぐ。
    半導体製造の前工程で多く採用。

  • 水平層流(Horizontal Laminar Flow)
    横方向に一方向で空気を流す方式。作業台や検査エリアで採用。


2-3. 床(グレーティング床)

  • 床は細かい穴やグリッド構造になっており、天井から流れてきた空気を床下に吸い込む

  • 空気は床下のリターンダクトに集められ、再びフィルターで清浄化


2-4. 壁・仕切り

  • 表面は粒子が付着しにくく、清掃しやすい素材(PVC、ステンレス、アルミパネル)

  • 内側は気密性を確保するために隙間なく施工


2-5. エアシャワー・パスボックス

  • 作業員や物資が入室する際にエアジェットで塵を吹き飛ばす装置

  • クリーンルーム内の汚染を防ぐ重要な入口設備


3. 気流と圧力管理

クリーンルームでは、室内の空気圧を外部より高く(陽圧)保ちます。
こうすることで、外部から汚れた空気が入り込むのを防ぎます。

  • 前室(クリーンロビー)→作業エリアへ進むほど清浄度を高く設定

  • 気流は一方向に制御し、乱流が発生しないよう設計


4. 半導体工場のクリーンルーム例

  • 前工程(ウエハー製造):クラス1〜100
    ナノレベルの微粒子も許されないため、天井全面フィルター+垂直層流方式

  • 後工程(組立・検査):クラス1,000〜10,000
    精密性は必要だが、前工程ほど厳密ではない


5. エネルギー消費と課題

  • クリーンルームは空気を大量循環させるため、電力消費が非常に大きい

  • 最新工場では、空調エネルギーの30〜50%削減を目指した省エネ設計が進む

  • フィルターやダクトの圧損管理、変風量制御(VAV)などが採用される


6. まとめ

クリーンルームは、天井のフィルター、床のグレーティング、層流設計、陽圧管理といった構造によって、微粒子を徹底的に排除しています。
半導体製造においては、この構造が製品の歩留まり(良品率)を大きく左右するため、空調・気流制御は製造装置と同じくらい重要です。