1. はじめに
半導体工場の歩留まりを左右するのは、製造装置や設計技術だけではありません。
空気中のわずかな塵や微粒子を除去し、清浄度を保つクリーンルームは、生産の心臓部です。
このクリーンルームを構築・維持するためには、多くの専門企業の技術が欠かせません。
2. クリーンルーム産業の主要分野
クリーンルームに関わる企業は、大きく以下のカテゴリーに分けられます。
クリーンルーム建設・設計企業
空調・フィルター機器メーカー
クリーンルーム機器・付帯設備メーカー
清掃・保守サービス企業
3. 主な企業と特徴
3-1. 大成建設(Taisei Corporation)【日本】
分野:クリーンルーム設計・施工
強み:半導体・FPD(フラットパネルディスプレイ)向け大規模クリーンルーム建設実績
特徴:気流シミュレーションによる最適レイアウト設計、省エネ型空調システムの導入
3-2. 鹿島建設(Kajima Corporation)【日本】
分野:大規模半導体工場のクリーンルーム施工
実績:TSMC熊本工場、ソニー半導体製造拠点
特徴:高天井・全面層流方式など、最先端工場に対応した構造設計
3-3. 荏原製作所(Ebara Corporation)【日本】
分野:クリーンルーム用空調機器・ファンフィルターユニット(FFU)
強み:低消費電力かつ均一な気流制御
用途:半導体・医薬品工場の天井HEPAフィルターシステム
3-4. パーカーコーポレーション(Parker Corporation)【日本】
分野:クリーンルーム用内装材・床材
特徴:帯電防止・防塵性能に優れたパネルやシートを供給
3-5. ダイキン工業(Daikin Industries)【日本】
分野:空調・フィルタリング技術
強み:大規模施設向け精密温湿度制御と高効率空調
特徴:省エネ性と微粒子除去性能を両立
3-6. Camfil(カムフィル)【スウェーデン】
分野:産業用高性能フィルター
特徴:HEPA/ULPAフィルターで世界的シェアを持ち、半導体・製薬分野で多数採用
3-7. ATS(Advance Tech Service)【日本】
分野:クリーンルームの清掃・メンテナンス
特徴:定期的な粒子測定・フィルター交換・気流バランス調整
4. なぜこれらの企業が重要なのか
製造品質の安定化:ナノメートルレベルの製造では、空気中の粒子1つが不良原因になる
省エネルギー化:クリーンルームは工場の電力消費の大きな割合を占めるため、省エネ設計が競争力につながる
拡張性:半導体需要の変動に応じたレイアウト変更や増設が可能な設計力
5. 今後の動向
メガファブ対応:5万㎡超の巨大クリーンルーム案件が増加
AI活用の環境監視:リアルタイムで粒子や気流をモニタリング
カーボンニュートラル化:空調エネルギー削減や再生可能エネルギーの利用拡大
6. まとめ
クリーンルームは、半導体工場の「見えない主役」です。
建設・空調・フィルター・保守といった多くの専門企業の技術が組み合わさって、世界最高レベルの清浄度を維持しています。
今後、半導体需要の拡大とともに、これら企業の存在感はますます高まるでしょう。