1. EMIBとは?
EMIB(Embedded Multi-die Interconnect Bridge)は、Intelが開発した2.5D先端パッケージング技術の一種です。
従来の2.5D技術では大きなシリコンインターポーザーを使ってチップ間を接続しますが、EMIBでは必要な部分にだけ小さなシリコンブリッジを埋め込むのが特徴です。
これにより、高帯域通信とコスト削減を両立できるパッケージ技術として、IntelのサーバーCPUやFPGA、GPUに採用されています。
2. 従来の2.5Dとの違い
項目 | 従来型(インターポーザー) | EMIB |
---|---|---|
配線方法 | 大型のシリコンインターポーザー | 部分的な小型ブリッジ |
コスト | 高い(大面積シリコン使用) | 低い(必要部分のみシリコン) |
帯域幅 | 高い | 高い(ほぼ同等) |
適用分野 | GPU+HBM、大規模チップ | 柔軟に多用途対応可能 |
3. EMIBの構造と仕組み
基板の一部に小さなシリコンブリッジを埋め込み
その上に複数のダイ(チップ)を直接接続
マイクロバンプ配線により、高速・低遅延通信を実現
大型インターポーザーを使わないため、歩留まり改善にも貢献
4. EMIBのメリット
コスト効率の高さ
大型シリコンインターポーザー不要、材料費削減
設計の柔軟性
必要な部分だけ高速接続を実装可能
歩留まり改善
小面積シリコンは欠陥リスクが低い
高性能化
チップ間通信帯域は1TB/sクラスも実現可能
5. 主な採用事例
Intel Stratix 10 FPGA(初採用)
Intel Agilex FPGA
Intel Xeon CPU(Sapphire Rapids)+HBM統合モデル
Intel GPU Ponte Vecchio(AI/HPC向け)
特にHPCやデータセンター向け製品では、CPU+HBMの統合やFPGAの拡張性において重要な役割を果たしています。
6. CoWoSとの比較(TSMC技術)
技術 | 開発企業 | 構造 | コスト | 主用途 |
---|---|---|---|---|
EMIB | Intel | 部分的シリコンブリッジ | 中 | CPU+HBM、FPGA |
CoWoS | TSMC | 大型インターポーザー | 高 | GPU+HBM(AI/HPC) |
まとめると:
CoWoS:超高帯域だがコスト高、大型デバイス向け
EMIB:高帯域+コスト効率、柔軟性重視
7. 市場動向と将来性
IntelはEMIBを多チップ構成の中心技術として拡大予定
将来的には、Foveros(3D積層)と組み合わせたEMIB+Foverosハイブリッド構造が主流化
HBM4世代(2026〜2027年想定)では、さらに高帯域なEMIB設計が導入される可能性
8. まとめ
EMIBは、半導体パッケージングの世界で「コスト効率」と「性能」のバランスを取る革新的技術です。
Intelはこの技術を武器に、AI・HPC市場での競争力を強化しており、今後は他社にもライセンス提供される可能性があります。
**「必要な場所にだけ橋をかける」**という設計思想が、今後の半導体設計・製造の標準のひとつになるかもしれません。