半導体の理論

冗長回路とは? – 信頼性を高めるための仕組みと活用例

1. 冗長回路とは

冗長回路とは、システムや回路の信頼性を高めるために、予備の回路や機能を追加しておく仕組みのことです。
万が一メインの回路が故障しても、冗長回路が代わりに動作し、全体の機能を維持します。

日常生活で言えば、

  • 車のスペアタイヤ

  • 航空機の複数エンジン
    のような「バックアップ」の考え方と同じです。


2. なぜ冗長回路が必要か?

電子機器やシステムは、次のような原因で動作不能になることがあります。

  • 部品の故障

  • 接触不良

  • 過熱や過電流

  • 外部からのノイズや衝撃

特にミッションクリティカルな分野(航空宇宙、医療、通信インフラ、半導体製造装置など)では、一瞬の停止も許されません。
冗長回路は、このリスクを最小限にするための重要な手段です。


3. 冗長回路の主な方式

3-1. 二重化(Dual Redundancy)

同じ回路を2つ用意しておき、1つが壊れたらもう1つを使う方式。
例:電源回路を2系統用意し、片方が停止しても切り替えて動作。


3-2. 三重化(Triple Modular Redundancy, TMR)

同じ回路を3つ用意して、**多数決(投票)**で正しい出力を決定する方式。
例:1つが故障しても、残り2つが一致していれば正しい結果を維持。


3-3. 自己修復型冗長

予備回路が待機していて、異常検知時に自動で切り替える方式。
FPGAなどの再構成可能デバイスで使われる。


3-4. パリティ・ECC(Error Correction Code)

回路そのものではなく、信号やデータに冗長情報を付加してエラーを検出・訂正する方法。


4. 冗長回路の実例

分野
航空宇宙航空機のフライトコントロール回路の三重化
通信ルーターの二重化電源回路
医療人工心肺装置の予備回路
データセンターサーバー電源やネットワーク経路の冗長化
半導体DRAMの冗長セルで不良ビットを置き換え

5. メリットとデメリット

メリット

  • システムの信頼性・稼働率向上

  • 故障時のダウンタイム削減

  • 安全性の確保

デメリット

  • コスト増(部品・設計・スペース)

  • 消費電力増加

  • 設計の複雑化


6. 冗長回路の設計ポイント

  • どの部分を冗長化すべきか(全体ではなく重要部のみ)

  • 自動切り替えか手動切り替えか

  • 故障検知の仕組み(自己診断回路など)

  • 冗長回路の試験方法(定期的に動作確認)


7. まとめ

冗長回路は、**「壊れても止まらないシステム」**を実現するための重要な技術です。
特に、停止が重大な損害や危険につながる分野では欠かせません。
コストや消費電力とのバランスを取りながら、適切な範囲で導入することが成功のカギとなります。