1. 光電融合とは?
光電融合(Photonic-Electronic Integration)とは、電子回路(エレクトロニクス)と光通信回路(フォトニクス)を1つの半導体チップやパッケージに統合する技術です。
従来は別々のデバイスとして扱われていた「光」と「電子」を融合させることで、通信と処理をより高速・省エネルギーで行えるようになります。
2. なぜ光と電子を融合するのか?
従来の電子通信の課題
高速化に伴い信号の劣化や遅延が増える
長距離配線では消費電力が大きい
高密度化による発熱問題
光通信のメリット
長距離でも信号が劣化しにくい
高速かつ低遅延
低消費電力で動作
発熱が少ない
➡ 光と電子を組み合わせれば、電子の計算能力と光の高速伝送能力を両立できる
3. 光電融合の基本構造
光電融合デバイスは、主に次の要素から構成されます。
電子回路部:CPU/GPU/ASICなどの演算回路
光変調器:電気信号を光信号に変換
フォトダイオード:光信号を電気信号に変換
光導波路:チップ内やパッケージ内で光を伝送
光ファイバー接続部:外部の光ネットワークと接続
4. 光電融合の主な方式
シリコンフォトニクス(Silicon Photonics)
CMOSプロセスで光回路を製造。既存半導体製造技術を活用できる。Co-Packaged Optics(CPO)
光トランシーバをスイッチASICやGPUと同じパッケージ内に実装。オンチップ光通信
チップ内部の配線に光導波路を導入し、電気配線の代替や補完に利用。
5. 応用事例集
5-1. データセンター
課題:AIやクラウド処理によるデータ転送量の爆発的増加
解決:光電融合でサーバー間通信をTbps級に高速化
事例:Intel・Cisco・BroadcomがCPO搭載スイッチを開発中
5-2. AIスーパーコンピューター
課題:GPU同士の大量データ転送でボトルネック発生
解決:光電融合でNVLinkやインターコネクトを光化し遅延を削減
事例:NVIDIAが将来世代GPUに光接続技術を検討
5-3. 5G/6G基地局
課題:大容量通信と低遅延を同時に実現する必要
解決:光電融合プロセッサで基地局間の光接続を高速化
事例:NTTのIOWN構想で光電融合プロセッサを開発
5-4. 自動運転車
課題:LiDARやカメラからの膨大なセンサーデータ処理
解決:光電融合チップでセンサー~AIプロセッサ間の通信を高速化
事例:研究段階だが、車載向け光インターコネクトが進行中
5-5. 医療・科学研究
課題:ゲノム解析や分子シミュレーションの膨大なデータ処理
解決:光電融合による低遅延・大容量データ転送
事例:スーパーコンピューター「富岳」の後継機でも採用検討
6. 今後の展望と課題
展望
5年以内にデータセンターやHPCで標準化
長期的にはスマホやノートPCにも搭載可能性
課題
製造コストの高さ
光素子と電子素子の熱設計
インターフェース標準化
7. まとめ
半導体光電融合は、電子の演算能力と光の通信能力を融合させることで、データ転送の限界を突破する次世代技術です。
データセンター、AI、通信、自動運転、医療など幅広い分野での応用が進んでおり、次世代インフラの中核技術になる可能性が非常に高いです。