1. はじめに
かつては高価な家電の代名詞だった液晶テレビ(LCD TV)ですが、近年では大型でも数万円台で購入できる時代になりました。
その背景には、製造コストの低下・競争の激化・市場環境の変化が複雑に絡み合っています。
2. 製造コスト低下の要因
2-1. 生産規模の拡大と効率化
中国・韓国・台湾の大手メーカーが**大型パネル工場(Gen 10以上)**を建設
1枚のガラス基板から切り出せるパネル枚数が増加し、1インチあたりの製造コストが低下
自動化設備の導入により、人件費削減&不良率低減
2-2. 技術の成熟化
液晶パネル製造技術が成熟し、歩留まり(良品率)が向上
新規開発費や研究費が減り、製品化コストが安定
LEDバックライトの普及で部品コストも大幅低下
2-3. 部材コストの下落
ドライバICや偏光板などの周辺部品が量産化で安くなった
ガラス基板の大型化と製造効率の向上による原材料費の削減
3. 市場構造の変化
3-1. グローバル競争の激化
中国メーカー(TCL、Hisense、Skyworth)が低価格モデルを大量投入
韓国勢(Samsung、LG)や日本メーカーも価格競争に巻き込まれる
OEM/ODM生産が増え、同じ工場で異なるブランド製品が作られる
3-2. 需要の鈍化
一度購入すると数年は買い替えない耐久財であるため、国内市場は飽和
大型化ニーズはあるが、全体の販売台数は伸び悩み
メーカーは価格を下げてでもシェアを確保する戦略に
3-3. 新技術との競合
有機ELテレビ(OLED TV)の普及により、液晶は「価格優位性」で勝負する方向へ
高級モデルはOLEDへ、液晶は廉価・大画面市場へと棲み分け
4. 消費者行動の変化
ネット通販の普及により、価格比較が容易になった
家電量販店のセール・ポイント還元が常態化
「4K・大型・低価格」が当たり前になり、値下げしないと売れない市場構造に
5. まとめ
液晶テレビの価格下落は、製造技術の成熟・部材コストの低下・国際的な価格競争・市場の飽和といった複数の要因が重なった結果です。
今後は、8KやMini LEDなどの新技術を取り入れた高付加価値モデルと、低価格モデルへの二極化が進むと予想されます。