半導体の会社分析

日本のシリコンウエハーは世界的シェアをもっているのに、原料のシリコンを輸入に頼る理由とは

日本がシリコンを輸入に頼る理由

半導体材料の代表格はシリコン(Si)です。

シリコンはケイ素(珪素とも表記)とも呼ばれます。

地表近くの地殻中に存在する元素の存在比率は「クラーク数」と呼ばれますが、1位が酸素の約50%、そして2位がシリコンなのです。

つまり、地球上で2番目に多い元素なのです!!

工業用シリコンの主原料は二酸化シリコン(SiO2)でエス・アイ・オー・ツー、二酸化ケイ素、珪石、シリカとも呼ばれ、その辺の白っぽい石ころにもたくさん含まれています。

そこらへんにたくさんあるシリコンですが、半導体材料としては必要不可欠です。

シリコンを集めて、純度を高めて、シリコンウエハーにして、半導体製造装置を使い、回路やいろいろなパターンを形成して、スマートフォンやパソコンなどに搭載される高性能チップとなるのです。

そこらへんの石がスマートフォンの頭脳のチップになるというのは、すごいですよね。

しかしながら、ここで気になるポイントがあります。

それは、日本は、シリコンの生産をほとんど行っていないということ。

そして、シリコンのほとんどを外国からの輸入に頼りきっている、という事実です。

そのへんにたくさんあるはずなのに、なぜなのでしょうか?

 

その理由は、電気代です。

そこらへんにある石から[二酸化シリコン(SiO2])からシリコン(Si)を取り出すためには、二酸化シリコンを木炭などの炭材を含む材料と一緒に電気炉に入れて大電流を流し、炉の温度を上げてどろどろに溶かす必要があります。

溶かすと、炭材から出る炭素(C)ガスが二酸化シリコンから酸素を吸い取って、二酸化炭素や一酸化炭素になり、純粋なシリコンだけを取り出すことができます。

このシリコンは金属シリコンあるいは金属グレードシリコンと呼ばれ、約99%の高い純度を持っています。

この純度の高い状態にしてはじめて半導体の材料のシリコンウエハーとして使用することができます。

しかしながら、ここまでくるために大量の電力を使うため、電気代の高い日本国内ではシリコン生産されておらず、輸入するようにしているのです。

つまり、電気代のせいなのですね。

もちろん、輸入するのにも、輸送費(大型船を使うことが多いと思います)、ガソリン代、人件費などがかかりますが、それよりも電気代が高すぎるので、輸入している、ということになります。

2010年の世界のシリコンの生産国比率は、中国、ロシア、ノルウエー、ブラジル、アメリカ、南アフリカ、オーストラリアなどです。

こういった国々は日本に比べて段違いに電気代が安いのです。

しかし、ネガティブな面ばかりではありません。

シリコンを日本に輸入してから、シリコンウエハーに仕上げるのは、日本の材料メーカーが非常に得意な分野です。

日本には、信越化学工業とSUMCOという代表的なシリコンウエハーメーカーが存在します。

この2社は、世界中の半導体メーカーや半導体関連メーカーに向けて極めて高品質なシリコンウエハーを販売して、高いシェアを獲得しています。

高品質なシリコンウエハーを作るためには、高い技術力が必要で、そこに信越化学工業やSUMCOの強みがあり、高い競争力を維持しています。