東京エレクトロンのFY2022は、売上高が2兆円を突破するという大きな節目の年となりました。
この記事では、東京エレクトロンのFY2021(2022/3/31締め)とFY2022(2023/3/31締め)の有価証券報告書に記載の財務諸表から、売上高2兆円を突破した東京エレクトロンという会社を紐解いていきたいと思います。
PL:損益計算書
PLを棒グラフにしてみました。
その結果、FY2022(2023/3/31〆)のほうが、FY2021(2022/3/31〆)よりも、売上高、粗利益、営業利益、経常利益、税引き前利益、当期利益までアップしていることが確認できます。
売上高(売上収益)は、FY2022(2023/3/31〆)に2兆円を超えており、非常に大きな規模となっています。
売上高(売上収益)
売上高が前年比1500億円以上アップしていることがわかります。
粗利益(売上総利益)
営業利益
経常利益
当期利益
FY2022(2023/3/31〆)は、4845億円以上という数字で確定しています。
総資本経常利益率
総資本経常利益率は、会社の経常利益に対する会社の利回りを示す数値です。
総資本経常利益率は、次の計算式で計算します。
総資本経常利益率=(経常利益)/(総資本)×100[%]
売上高に対する3つの指標
売上高に対する3つの指標として、
1.売上高対総利益率=(売上総利益[粗利益])/(売上収益[売上高])×100[%]
2.売上高対営業利益率=(営業利益)/(売上収益[売上高])×100[%]
3.売上高対経常利益率=(経常利益)/(売上収益[売上高])×100[%]
を用意しました。
これらを1から順に追っていくことで、会社の問題点に気づきやすくなります。
例えば、ある会社の決算報告から、1.売上高対総利益率は前年から増加しているけれど、2.売上高対営業利益率が低下している場合、粗利は多く取れているけれど、販売費および一般管理費に多くのコストがかかったために、営業利益の数字が前年よりも低下しているということが推測できます。
他には、売上高対営業利益率が増加しているのに、売上高対経常利益率が低下している場合は、営業以外のコスト面(借入金が増えるなど)に課題があることが推測できます。
BS:貸借対照表
上記が東京エレクトロンのFY2021とFY2022のBS(バランスシート,貸借対照表)です。
注目すべきは、固定負債がほとんどないことです。
そして、自己資本比率が高いことです。
これは後ほど別のグラフを用いてご説明します。
流動比率
流動比率は、会社の短期の安全性を測る指標です。
流動比率の計算式は、
流動比率=(流動資産)/(流動負債)×100[%]
で計算しています。
流動負債は、1年以内に支払わなくてはいけないものと定義します。
したがって、1年以内の短期で、流動負債を支払えるだけの現金がないと、資金ショートを起こし、最悪の場合、会社が倒産となってしまいます。
この流動負債の返済には、現預金や、すぐに現金化できるもの、つまり「流動資産」が重要となります。
一方で、不動産などのすぐに現金化しにくい「固定資産(不動産など)」は対象外となります。
流動比率は、数字が大きいほどに短期的な安全性が高いことを示します。
なぜなら、1年以内の短期に返さなくてはいけないお金(流動負債)を上回る流動資産を余分に保有している会社といえるからです。
自己資本比率
長期的な会社の安全性を判断するための一つの基準が、自己資本比率です。
短期的な会社の安全性を判断する流動比率と組み合わせて分析指標としてよく使用されます。
自己資本比率は、総資本(流動負債+固定負債+純資産)に占める、純資産(自己資本)の割合を示す数値です。
そのため、自己資本比率の計算式は、
自己資本比率=(純資産[自己資本])/(総資本)×100[%]
となります。
自己資本比率が高いほど、長期的な会社の安全性が高いということを示しています。
自己資本比率が高いということは、投資しているお金のうち、返済が必要なお金の割合が多い=体力のある会社ということがいえます。
固定長期適合率
固定長期適合率は、長期的な会社の安全性を判断するための指標の一つです。
固定長期適合率は、下記の計算式で算出します。
固定長期適合率=(固定資産)/(固定負債+純資産)×100[%]
固定長期適合率は、低いほど、長期的に安全性が高いと判断できます。
従業員数の増減
東京エレクトロン本社の従業員数は、2023/3/31時点で1969人となっており、前年度から200人以上増えていることがわかります。
従業員1人当たりの総利益
従業員1人当たりの総利益は、その名の通り、下記の計算式で算出します。
従業員1人当たりの総利益=(粗利益[売上総利益])/従業員数
この金額が高いほど、会社の生産性が高いということがいえるでしょう。
従業員数は増えていますが、従業員1人当たりの総利益は大幅に向上しています。
労働分配率
労働分配率とは、会社の生産性の高さを示す一つの指標です。
労働分配率は、会社が生み出した付加価値のうち、どれだけを人件費として分配しているか、を示す指標です。
計算式で表現すると、
労働分配率=(人件費総額)/(付加価値)×100[%]
少し表現を変えて、人件費総額は「販売費および一般管理費」に含まれ、付加価値は「粗利益(売上粗利益)」と言い換えると、
労働分配率=(販売費および一般管理費)/(粗利益)×100[%]
ともいえると考えます。
労働分配率は前年度より低下しました。
会社としてはかなり余裕があるので、労働分配率を高めてもよいかもしれませんが、現時点でも従業員の年収は日本国内随一の水準を保っています。