1. はじめに
半導体製造において、**超純水(Ultra-Pure Water, UPW)**は欠かせない存在です。
ウエハーの洗浄工程は数百回にも及び、そのたびに極限まで不純物を取り除いた水が使われます。
では、この超純水を安定的に供給するための設備・技術は、どのような企業によって支えられているのでしょうか。
2. 超純水産業の3つの主要プレイヤー
超純水関連ビジネスは、大きく分けて次の3つの領域があります。
水処理装置メーカー – 超純水を作る装置を製造
水処理エンジニアリング企業 – 工場全体の水循環システムを構築
水処理薬品メーカー – イオン交換樹脂、膜、洗浄薬品などを供給
3. 主な企業紹介
3-1. オルガノ株式会社(Organo Corporation)【日本】
強み:半導体向け超純水製造プラントの国内トップクラスシェア
特徴:RO膜、イオン交換装置、UV酸化装置などを組み合わせた総合システムを提供
実績:TSMC熊本工場、キオクシア、ソニーなど国内外の半導体工場に納入
3-2. 栗田工業株式会社(Kurita Water Industries)【日本】
強み:超純水製造だけでなく、使用済み水の再生・リサイクル技術に強い
特徴:高再生率(90%以上)を実現するリサイクルシステム
実績:台湾や韓国の大手半導体メーカーにも設備納入
3-3. 日立造船株式会社(水処理プラント部門)【日本】
強み:大規模産業向けの超純水・排水処理システム
特徴:半導体だけでなく発電所や化学プラント向けにも実績
3-4. Ebara(荏原製作所)【日本】
強み:CMP(化学機械研磨)装置に関連する超純水供給システム
特徴:精密洗浄に対応する安定した流量制御
3-5. Veolia Water Technologies【フランス】
強み:グローバル規模での水処理プラント設計・運営
特徴:欧州・北米の半導体工場や製薬工場に多数導入
3-6. SUEZ Water Technologies & Solutions【米国】
強み:RO膜やフィルターの世界的サプライヤー
特徴:膜技術の改良による低エネルギー化と高純度化
3-7. Dow(旧Dow Water & Process Solutions)【米国】
強み:イオン交換樹脂・RO膜の大手メーカー
特徴:長寿命で高性能な膜製品は世界中のUPWプラントに採用
4. なぜこれらの企業が重要なのか
供給の安定性:半導体工場は24時間稼働のため、超純水供給が止まれば生産ラインも止まる
品質保証:ナノメートル精度の製造に対応できる水質を維持する技術が必要
環境配慮:大量の水を消費する半導体製造において、高い再利用率と低エネルギー化が求められる
5. 今後の展望
水使用量削減:再利用率90%以上の循環型システムが標準化へ
海外進出加速:TSMCやSamsungなど海外メガファブへの設備納入増加
新素材対応:EUV露光や新型パッケージング工程に対応した洗浄水質基準の高度化
6. まとめ
超純水は「半導体製造の血液」ともいえる重要インフラであり、これを安定的に供給する企業の技術力が産業の成否を左右します。
今後は、**「水を作る技術」だけでなく「水を効率的に使い回す技術」**が競争のカギになるでしょう。