半導体の会社分析

I-Cube完全ガイド – Samsungの2.5Dパッケージング戦略

1. I-Cubeとは?

I-Cube(Interposer-Cube)は、Samsung Electronicsが開発した2.5D先端パッケージング技術のブランド名です。
GPU、AIプロセッサ、ネットワーク向けチップなどのロジックダイと高帯域メモリ(HBM)をシリコンインターポーザー上で統合します。

基本構造はTSMCのCoWoSと似ていますが、Samsung独自の工程最適化により、大面積対応・高集積化・コスト効率を強みとしています。


2. I-Cubeの構造と仕組み

構成要素

  1. ロジックチップ(CPU/GPU/AI ASICなど)

  2. HBMスタック(High Bandwidth Memory)

  3. シリコンインターポーザー

  4. 有機基板(Substrate)

動作原理

  • ロジックチップとHBMをシリコンインターポーザーで接続

  • インターポーザー内部の超微細配線により、広帯域・低遅延通信を実現

  • HBMを最大8スタック以上搭載可能


3. I-Cubeの種類

3-1. I-Cube2

  • 初期世代

  • 1つのロジックチップ+複数のHBMを配置

3-2. I-Cube4

  • ロジックチップを複数搭載可能

  • HPC・AIトレーニング向けに最適化

3-3. I-CubeS

  • スタッキング技術との組み合わせ

  • 将来的には3D構造の「X-Cube」と連携する構想


4. I-Cubeのメリット

  1. 高帯域幅通信

    • HBMとの接続帯域は1TB/sクラス

  2. 高集積化

    • 複数の大型ダイを1パッケージに統合

  3. 拡張性

    • ロジック+HBMの構成を柔軟に変更可能

  4. 製造の内製化

    • Samsungはメモリとロジックの両方を自社製造可能(垂直統合型)


5. 課題

  • 大型インターポーザーの製造コストが高い

  • 発熱対策が必要(特にHBM搭載時)

  • 歩留まりが低下しやすい(大面積チップ配置のため)


6. 主な採用事例(2025年時点)

  • Samsung製HPC向けAIプロセッサ

  • 一部ネットワーク機器メーカーのASIC+HBM構成

  • HBM3搭載GPUやアクセラレータ


7. CoWoS(TSMC)との比較

項目I-Cube(Samsung)CoWoS(TSMC)
技術開始2018年頃2012年頃
主力市場HPC、AI、ネットワークAI、HPC、GPU
メモリ対応HBM2E〜HBM4HBM2E〜HBM4
製造体制メモリ&ロジック内製ファウンドリ+外部メモリ
強みメモリ統合効率、コスト競争力先行実績、歩留まり

8. 市場動向と将来性

  • AIトレーニング需要の急増により、I-Cube搭載製品の出荷は増加

  • SamsungはI-Cubeの大型化と高帯域化を進め、HBM4(2026年以降)対応を計画

  • X-Cube(3D積層)とのハイブリッド構造でさらなる性能向上を狙う


9. まとめ

I-Cubeは、Samsungがメモリとロジックの両方を製造できる強みを活かし、AI・HPC市場におけるパッケージング競争の中核を担っています。
TSMCのCoWoSに比べ後発ではあるものの、垂直統合によるコスト効率と製品供給力で差別化が可能です。
今後は、I-Cubeと3D技術X-Cubeを組み合わせた新世代パッケージが、次世代AIチップの性能を引き上げる鍵となるでしょう。