1. はじめに – なぜ今「次世代半導体」なのか?
AIの進化、電気自動車(EV)の普及、5G/6G通信の拡大──これらの基盤を支えているのが半導体です。
従来のシリコンベース半導体に加え、SiC(炭化ケイ素)やGaN(窒化ガリウム)などの次世代材料が注目を集めています。
また、AI用プロセッサや先端パッケージ技術など、性能と省電力を両立する技術革新が進行中です。
2. 次世代半導体の主要技術
2-1. 先端プロセス(GAA・EUV)
GAA(Gate-All-Around)トランジスタ:ナノシート構造でリーク電流を抑え、性能向上
EUV露光(極端紫外線リソグラフィ):ASMLが独占する最先端の微細加工技術
主な採用企業:TSMC(2nm)、Samsung(2nm)、Intel(20A世代)
2-2. 先端パッケージング
CoWoS(Chip-on-Wafer-on-Substrate):TSMCが提供、HBM搭載AIチップに必須
Foveros(Intel)、FO-WLP(Fan-Out Wafer-Level Packaging)
AIチップは高帯域メモリ(HBM)とCPU/GPUを密結合するため、パッケージが性能を左右
2-3. 新材料半導体
SiC(炭化ケイ素):EVインバータ用パワー半導体で普及中(耐熱性・高電圧特性)
GaN(窒化ガリウム):急速充電器、データセンター電源など高周波・高効率分野で採用
**Ge(ゲルマニウム)や2D材料(グラフェンなど)**も研究段階
2-4. AI専用半導体(NPU)
NVIDIAのH100/B100(HBM3e搭載)
GoogleのTPU v5e
AI学習・推論用にメモリ帯域と演算性能を極限まで引き上げ
3. 産業動向と注目企業(2025年版)
分野 | 企業 | 特徴 |
---|---|---|
ファウンドリ | TSMC | 2nm量産開始、CoWoS増強 |
ファウンドリ | Samsung | GAA採用2nm試作、メモリ統合強み |
IDM | Intel | 18A/20Aロードマップ、Foundry事業再構築 |
メモリ | SK hynix | HBM3e供給でAI市場シェア拡大 |
メモリ | Micron | 米国内HBM工場建設 |
パワー半導体 | Wolfspeed | SiCウエハ供給トップ |
パワー半導体 | ROHM | EV向けSiCモジュール拡販 |
装置 | ASML | High-NA EUV露光機出荷開始 |
装置 | Tokyo Electron | 薄膜成膜・エッチング装置でシェア拡大 |
4. 市場背景と課題
AI需要急増 → データセンターの消費電力が爆増
サプライチェーン分断 → 米中摩擦で調達リスク増加
環境負荷 → 半導体製造のCO₂排出・水使用量が問題視
5. 今後の展望(〜2030年)
2nm→1.4nm世代の量産(GAA主流化)
先端パッケージが設計の中心(モノリシックからチップレットへ)
SiC・GaNの量産コスト低下でEV普及加速
AI専用プロセッサ多様化(NVIDIA一強から複数勢力へ)
持続可能な製造プロセス(省エネ・水リサイクル技術)
6. まとめ
次世代半導体は、単なる性能競争ではなくAI時代の社会インフラとしての位置づけが強まっています。
特に、先端パッケージ+新材料+AI専用設計の3本柱が、今後の競争軸となります。
技術だけでなく、地政学・環境・供給網の課題を含めてウォッチすることが、2025年以降の半導体業界を読み解くカギです。