半導体プロセス

半導体プロセスの前工程「ウェットエッチング」について解説します

wet-etching_eyecatch

半導体プロセスに欠かせないのが特定の膜を削り取るエッチングプロセス(Etching Process)です。

エッチングの手法には大きく分けて2つのやり方があります。

それが、薬液を使うウェットエッチングと、ガスとプラズマを使うドライエッチングです。

今回は、ウェットエッチングに絞った解説を行います。

ウェットエッチングの概要

まずは、半導体ウエハが出来たところから考えてみましょう。

半導体ウエハは、インゴットという大きな円柱状の結晶を、ワイヤで切り出して作られます。

ワイヤで切り出す工程はあくまで機械的にゴリゴリ削るので、切り出されたウエハには傷や欠陥が多数存在してしまいます。

このままで出荷すると、半導体工場のクリーンルームでデバイスを作り込んだとしても正常に動作しない可能性が非常に高いです。

半導体メーカーは製品を出荷できず、ウエハメーカーに「どうなってんねん!!」とクレームを入れるでしょう。

ウエハメーカーは品質の高いウエハを供給するために、エッチング液を使ってウエハ研磨やウエハを鏡のようにピカピカにする鏡面仕上げを施し、発生した欠陥を除去してからウエハを出荷します。

さて、舞台は半導体工場に移ります。

ウエハが装置内で搬送されたとき、また保管庫で保管していたときにもウエハに汚れ(異物)は発生してしまうものです。

クリーンルームといえども、ゴミをゼロにすることは難しいのです。

クリーンルームに関する詳しい情報はこちらの記事を参照ください。

クリーンルームって何?クリーンルームは半導体をつくるために必要な部屋 クリーンルーム...

表面の汚れは、熱酸化工程やエピタキシャル成長工程の前に、特定の薬液を混ぜた液に浸して化学的に清浄にします。

この洗浄をしないと、汚れが熱酸化を行う装置の中を汚してしまい、他のウエハにも悪影響を与え、たくさんのウエハが出荷できなくなる可能性があります。

ウェットエッチングは、特に多結晶(ポリSiともいいます、単結晶シリコンよりも結晶の質が少し劣るSi結晶のことです)、酸化膜、窒化膜、金属膜、III-V族化合物半導体などの全面工ッチングに適しています。

ウェットエッチングの仕組みは3ステップで理解できる

ウェットエッチングは3ステップに分けて考えることが出来ます。

まずステップ1では、反応液を用意します。

ステップ2で、いろいろな膜が乗ったウエハを反応液が入れ、特定の膜の表面で化学反応が起こります。

ステップ3では、化学反応で発生した反応物質が薬液の一部となり、薬液の撹拌(薬液をぐるぐるかき混ぜること)でウエハの表面からいなくなります。

撹拌や反応液の温度は、ウェットエッチングの速度(エッチングレートともいう)を変える重要なパラメータです。

集積回路(IC)のプロセスでは、ウエハを反応液(エッチング液)に浸したり、吹きつけたりします。

反応液(エッチング液)にウエハをジャボっと浸すと、均一な反応と反応速度を得るために、液を攪拌(かくはん)が必要です

ウエハが浸るくらいたくさんの量の薬液が必要になり、薬液コストも多くかかります。

一方、反応液を吹きつけて行うウェットエッチングでは、常に新しい反応液をウエハに吹きかけることになりますので、高いエッチ速度と均一性が得られます

ウェットエッチングの均等率について

ウェットエッチングは、薬液につけて狙いの膜を削り取ります。

薬液は、薬液の入った容器の場所によって薬剤の濃度が変わってくるので、ウエハ前面をいかに均一にウェットエッチングできるかが、高品質な半導体を製造するカギとなります。

容器の中で薬液は常に循環されていますが、容器のどの場所でも均一な濃度を作ることは難しいのです。

そこで、エッチングレートの均等率を考えてみましょう。

エッチングレートの均等率は以下の式で表現できます。

etching rate_fomula

具体例を考えてみましょう。

直径300mmのシリコンウエハの上に、Al(アルミニウム)が載っています。

このAlをウェットエッチングしたところ、ウエハの面内でこのようなエッチングレートの差が確認されたとします。

・ウエハの中央のAlのエッチングレート:200 nm/min

・ウエハの上側のAlのエッチングレート:180 nm/min

・ウエハの右側のAlのエッチングレート:185 nm/min

・ウエハの下側のAlのエッチングレート:190 nm/min

・ウエハの左側のAlのエッチングレート:187 nm/min

このときの平均エッチングレートと、エッチングレートの均等率を考えてみましょう。

まず、Alの平均エッチングレートは、

(200+180+185+190+187)/5=188.4 nm/min

になります。

そして、エッチングレートの均等率は、先程の式を使って計算してみます。

最大のエッチングレートは、200nm/min

最小のエッチングレートは、180nm/minなので・・・

(200-180)/(200+180)×100=5.26%

となります。

これによっておおよそウエハ面内で、Alのエッチングレートが5.26%ばらつくよ、ということがわかります。

平均エッチングレートは、188.4 nm/minだったので

188.4 nm/min × 5.25%=9.92nm/minくらいウエハ面内でAlのエッチングレートがばらつくことを表しています。

たとえば、188.4(平均エッチングレート)+9.92=198.32nm/minとなり、だいたい最大のエッチングレート200nm/minと近いです。

188.4(平均エッチングレート)-9.92=178.48nm/minとなり、こちらも最小エッチングレート180nm/minと近い値になっています。

このようにエッチングレートの均等率を算出しておくと、他のウエハのAlのエッチングレートをまた測ることなく、大まかな予測が立てれるので便利です