半導体プロセス

写真製版(光学的リソグラフィ)工程について解説します

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リソグラフィ(Lithography)とは、マスクに描かれたパターン(模様)を、半導体ウェーハの上につけた感光性物質(フォトレジスト)に転写することです。

リソグラフィで転写されたレジストのパターンは、イオン注入領域や電極のコンタクトなど集積回路の構造を決める非常に大事なパターンです。

このパターンに各半導体メーカーのノウハウが注ぎ込まれています。

このリソグラフィで描かれたレジストは、プロセス中の一時的なものであり、イオン注入処理やエッチング処理(酸化膜などを削る処理)が終わればきれいに除去されます。

さもないと他の装置を汚してしまうので。

つまり、デバイスの最終形態にレジストは残らないというわけです。

集積回路(IC)をはじめとする半導体デバイスに光学的リソグラフィは必要不可欠な技術です。

製造で使用するリソグラフィ装置は、たいてい紫外線(光の波長:200~400nm)使用しています。

この記事では、光学的写真製版についてできるだけわかりやすく解説したいと思います。

もしなにか質問事項などがございましたら、お問い合わせフォームからお願いいたします。

写真製版にとってクリーンルームの清浄度は超重要

半導体の写真製版プロセスにおいて、クリーンルームの清浄度は非常に重要です。

なぜなら、もしゴミがシリコンウエハやマスクに付いてしまうと、回路パターンが崩れたり、デバイスに欠陥が発生して使い物にならなくなるためです。

他にもウエハを結晶成長させるエピタキシャル成長という技術がありますが、エピタキシャル成長時にウエハにゴミが付着していると、キレイな成長(単結晶成長)ができなくなり、品質の良い半導体チップができなくなります。

図を使って説明します。

下図のように、写真製版に使うマスクにサイズ1.0μmのゴミが付着していたとします。

マスクの寸法は、露光しないエリアの幅1.0μm、露光するエリアの幅1.0μmとします。

マスクにゴミがついたままポジレジストに露光してしまうと、ゴミがついた箇所は露光が遮られることになります。

ポジレジストは、露光された箇所が剥がれるレジストです。

露光がさえぎられるとどうなるのか。

ひとつひとつ考えてみましょう。

まず、ゴミの箇所は、本来露光されるべき箇所が露光されないので、レジストが残ることになります。

すると、設計では金属を乗せる場所(エリア)が狭くなってしまいます。

つまり、金属の面積が小さく出来上がってしまうので、電流の流れる通路がせまくなり、電流密度が一部だけ高くなります。

一部だけ電流密度が高くなると、その箇所だけ温度分布が高くなってICの性能を下げてしまったり、放熱性が悪くなってチップの不具合に繋がる可能性もあります。

次にもっと大きなサイズのゴミを考えてみましょう。

直径2.0μmサイズのゴミがマスクに付着した図をかいてみました。

このくらいのサイズのゴミがパターンにまたがってしまうと、金属が分断されてしまいます。

金属が分断されると当然電気は通りませんから、回路に支障が出てしまいます。

聡明な皆様には、これで写真製版(光学的リソグラフィ)するときのクリーンルームの清浄度が重要な意味がわかっていただけたかと思います。

 

写真製版のパターン転写は、露光機という装置を使って行います。露光機の主要メーカーは、ASML(オランダ)、NIKON(日本)、CANON(日本)などです。

露光機の性能は主に3つで決まります。

  1. 解像度(正確に転写できる最小寸法)
  2. 重ね合わせ精度
  3. スループット(決まった時間でどれだけのウエハを処理できるかを示す指標)

さらに、露光のやり方には2つの方法があります

  1. 等倍転写法
  2. 投影法