ToF・3Dセンシング向けCMOSセンサーランキング|深度センシング技術の最前線


ToF・3Dセンシング向けCMOSセンサーランキング|深度センシング技術の最前線

スマートフォンのFace ID・拡張現実(AR)デバイスのハンドトラッキング・自動運転車の障害物検知・産業ロボットの物体把持——これらすべてに「3次元センシング(3Dセンシング)」技術が使われています。その核となるのがToF(Time of Flight)センサーや構造化光センサーと組み合わさったCMOSイメージセンサーです。本記事では3Dセンシング向けCMOSセンサーの主要技術と市場リーダーを解説します。

3Dセンシングの主要方式

dToF(ダイレクトToF)

光パルスを照射し反射光の飛行時間を直接計測。LiDARに採用される長距離高精度方式。Apple LiDARスキャナー(iPad/iPhone Pro)に採用。

iToF(間接ToF)

変調した光を照射し、反射光の位相差から距離を計算。短〜中距離で高フレームレートが得意。Intelリアルセンス・各社リアカメラ深度計測に採用。

構造化光(SL)

既知のパターン光を投影し、変形から3D形状を復元。Apple Face ID(前面カメラ認証)がこの方式。短距離・高精度で顔認証に最適。

ToF・3Dセンシング向けCMOSセンサーメーカーランキング

順位企業名主力技術・製品主な採用先
1位Sony Semiconductor Solutions日本dToF(SPAD)、IMX556/569 iTOFセンサーiPhoneリアLiDAR、各社スマートフォン
2位STMicroelectronics仏・伊VL53シリーズ(iToF)、SPAD多数のスマートフォン・IoTデバイス
3位Infineon Technologies(IFX)ドイツREAL3シリーズ(iToF)PC・スマートフォン・産業
4位Softkinetic(Sony傘下)ベルギー/日本DepthSense(iToF)コンシューマ・産業ロボット
5位LG Innotek韓国ToFカメラモジュールSamsung Galaxy、各社スマホ
6位MelexisベルギーEVK75027(iToF)車載・産業用
7位Ams OSRAMオーストリアTMF882XシリーズIoT・スマートフォン補助AF
8位Teledyne FLIR米国Firefly DL(3D+熱画像融合)産業ロボット・ドローン
9位Microsoft(Azure Kinect)米国dToF + RGB融合センサー産業・研究・クラウド連携
10位Luminar Technologies米国Iris(自動車LiDAR)自動車向けLiDAR

各社技術詳細解説

1
Sony dToF(SPAD)センサー / iToF IMX556
Sony Semiconductor Solutions

ソニーはdToFとiToF双方で業界をリードします。Apple iPhone 12 Pro〜16 Pro向けのリアLiDARスキャナーにはソニーのSPAD(Single Photon Avalanche Diode)ベースのdToFセンサーが採用されており、単一光子を検出できる極限の感度で最大5mの距離を精密にスキャンします。このLiDARによりポートレートモードのボケ精度・ARオクルージョン・夜間のAF速度が大幅に改善しています。

iToF(間接ToF)では、IMX556/569シリーズが複数のAndroidスマートフォンメーカーに採用。深度情報をリアルタイムでRGBカメラと融合することで、背景ボケ・ARエフェクト・3D顔認証などを実現します。

技術SPAD(dToF)+ iToF
検出方式単一光子〜変調光
使用例iPhone リアLiDAR
到達距離最大5〜10m(dToF)

SPAD dToFApple LiDAR採用iToF対応

2
STMicroelectronics VL53シリーズ
STMicroelectronics

世界で最も広く普及しているToF距離センサーシリーズ。スマートフォンのカメラAF補助・デバイス接近検知・フリップカバー開閉検知など、幅広い用途で採用されています。チップサイズが極めて小さく(2mm×2mm以下)コスト競争力も高いため、ハイエンドからミドルレンジまでの多数のスマートフォンに採用されています。最新のVL53L8CHは64ゾーンの空間深度マップをリアルタイムで生成でき、ジェスチャー認識・スマートホームデバイスへの展開も進んでいます。

超小型・低コストAF補助普及率最高

3
Infineon REAL3 iToFセンサー
Infineon Technologies

PC・スマートフォン向けの高性能iToFセンサーシリーズ。Windows Helloの顔認証機能を搭載するPCのIR深度カメラに採用されており、ノートPC市場での存在感が大きい製品です。TOF技術に特化したREAL3プロセッサとセンサーを組み合わせたモジュールとして提供され、システムインテグレーションを容易にしています。産業用ロボットアームの空間認識にも採用例があります。

Windows Hello認証PC内蔵iToF

Apple Face IDとLiDARが示す3Dセンシングの進化

Apple 3Dセンシングシステムの構成(参考):
Face ID(前面、構造化光方式):
・ドットプロジェクタ(3万点の赤外線ドットを投影)
・赤外線カメラ(ドットパターンの変形を読み取り)
・RGBカメラ(通常撮影)
・「A〜A17 Proチップ」のNeural Engineが顔データを3Dマップ化

LiDARスキャナー(背面、dToF方式:iPhone 12 Pro〜):
・SPADベースのdToFセンサー(Sony製)
・赤外線レーザー発光ユニット
・最大5mの精密3Dポイントクラウド生成
・夜間AF速度6倍向上・ARオクルージョン精度向上に貢献

自動運転向けLiDAR市場との関係

自動車向けのLiDAR(Light Detection and Ranging)は、より長距離(100〜200m)・高精度の3Dスキャンが求められ、消費者向けのToFセンサーとは技術的に異なる製品カテゴリです。Luminar・Velodyne・Waymoなどが競合し、いずれもSPAD・APD(アバランシェフォトダイオード)をベースにした独自センサーを開発しています。車載CMOSとLiDARセンサーを組み合わせたマルチモーダルセンシングが次世代自動運転の標準アーキテクチャになると見られています。

まとめ

3DセンシングとCMOSイメージセンサーの融合は、スマートフォン・AR/VR・自動運転・産業ロボットなど多岐にわたる市場で革命を起こしています。ソニーのSPAD技術・STMicroelectronicsの普及型ToFセンサー・Infineonの産業向け製品が市場を三分しながら、各社独自の強みで用途特化を進めています。Apple・Meta・Googleなどのプラットフォーム企業がAR/VRデバイスへの投資を拡大する中、3Dセンシングセンサーの需要は今後急拡大することが確実視されています。