たくさんある半導体デバイス(デバイスは英語で、Deviceと書きます。日本語に直すと「端末」となります)の種類について整理に試みたいと思います。
【図解あり】半導体デバイスマップで全体像を把握する
下の図に半導体デバイスの全体像をまとめました。
名付けて【半導体デバイスマップ】です(いま考えました)。
半導体デバイスというのは、非常に多岐にわたるので、全体像を把握するだけでも難しいものです。
逆に、全体像を抑えた上で、細かい半導体の話に入っていくことができれば、半導体に関する理解のスピードが格段に上がります。
ぜひ、こちらの半導体デバイスマップをご活用ください。
半導体は時代とともに技術革新が進みますので、半導体デバイスマップも適宜加筆・修正していきます。
IC(Integrated Circuit, 集積回路)[半導体デバイスその1]
まずはICです。
正式名称は、Integrated Circuitと書き、頭文字をとってICと呼びます。
日本語に直すと「集積回路」です。
なにを集積しているかというと、半導体で作るトランジスタ(MOSFETの進化版のFinFETなど)やキャパシタ、抵抗などを指します。
ICチップなどと呼びますよね。
ICチップ=半導体チップと捉えて問題ないと思います。
あと、ICはロジック半導体と呼んだりすることもあります。
論理回路(ロジックサーキット)を作ってコンピュータの演算処理を行うことから、ロジック半導体という呼び方がついたと思われます。
そしてICチップのなかにも、さらに細かい区分けがあります。
それを見ていきましょう。
プロセッサ
ICの代表的な存在がプロセッサ(処理装置)です。
プロセッサによってコンピュータの様々な処理が高速で行われます。
そしてプロセッサにもいろいろな種類があります。
CPU(Central Processing Unit)
「コンピュータの頭脳」に相当するのが、CPUです。
セントラル・プロセッシング・ユニットの頭文字をとってCPU(しーぴーゆー)と呼びます。
CPUを量産している代表的な企業は、アメリカのintel(インテル)ですね。
その他にも、AMDといった会社も最近は一般家庭向けのパソコン用のCPUの選択肢に入ってきています。
そして最近では、ファブレス半導体メーカーという企業が増えています。
「ファブレス」とは、工場(ファブリケーションエリア)を持たない(レス)半導体メーカー、そして工場は持たないけど、ICの設計だけを行い、あとはその設計図どおりにものをファウンドリーという製造工場で作ってもらう、というビジネスモデルが普及しています。
ファブレス企業の代表は、アメリカのApple(アップル)です。
AppleのパソコンであるMacは、以前はIntelのCPUを採用していましたが、最近は自社設計のCPUを取り入れて、もっとMac専用に最適化されたチップを作り、もっとMacの処理速度をあげようという動きがあります。
そして、ファブレス半導体メーカーが実際のモノの製造を委託するのが、ファウンドリーです。
ファウンドリー企業の代表は、台湾のtsmc(ティー・エス・エム・シー)です。
tsmcは名実ともに世界トップのファウンドリーです。
tsmcの半導体製造ラインの実力は世界一との呼び声が高いです。
ICではいかに微細なパターンを作り込むのかが重要な要素で、半導体メーカーの競争力の根源なのですが、いま最も世界で微細なパターンを作れるのがtsmcと言われています。
tsmcは、ときどきTSMCと大文字アルファベットで表記されることもありますが、公式のロゴマークでは小文字アルファベットのtsmcが採用されています。
GPU(Graphic Processing Unit)
GPUは単純で膨大な量の計算をこなすのが得意なプロセッサです。
上記のCPUは複数の作業を並列で同時に走らせる処理が得意なプロセッサで、GPUとは正反対の特徴をもっています。
GPUは画像処理や仮想通貨のマイニング計算処理などで非常に強みを発揮します。
画像処理の分野は最近、自動車の自動運転技術やAIでのカメラ映像認識技術の開発によって大きな注目が集まっています。
さらにビットコインを始めとした仮想通貨のマイニング(採掘)の計算にもGPUが重宝されています。
このGPUの世界的リーダーなのが、アメリカのNVIDIA(エヌビディア)です。
マイコン(MCU, Micro Control Unit)
マイコンはCPUの廉価版のようなイメージで、CPUよりも製造コストが低く、そのため消費者(企業)はより低い価格で入手することができます。
マイコンはいまではありとあらゆる製品に組み込まれています。
たとえば、洗濯機やエアコンにも入っていますし、自動車には100個以上のマイコンが載っているものもあるはずです。
マイコン製造メーカーはたくさんありますが、日本で有名なのはルネサステクノロジだと思います。
ASIC
特定用途向けASIC
ASSP
SOC(System On Chip)
メモリ[半導体デバイスその2]
不揮発性メモリ
EEPROM
フラッシュメモリ
NAND型フラッシュメモリ
NOR型フラッシュメモリ
EPROM
揮発性メモリ
DRAM
DRAMは揮発性メモリの代表格の半導体デバイスです。
DRAMの概要と基本動作をまとめた記事はこちら↓↓
SRAM
その他のメモリ
FRAM(FeRAM)
MRAM
発光デバイス[半導体デバイスその3]
半導体レーザー
青色発光ダイオード
2014年にノーベル賞を受賞した青色発光ダイオードはここに分類されます。
受光デバイス[半導体デバイスその4]
太陽電池
無機物でできた太陽電池
単結晶Si
多結晶Si
非晶質Si
GaAsで出来た化合物太陽電池
CIGSで出来た化合物太陽電池
CdTeで出来た化合物太陽電池
有機物でできた太陽電池
光センサー
フォトダイオード
フォトダイオードとは、光を電気に変換する半導体デバイスです。
フォトダイオードとフォトトランジスタは違うものなのでご注意ください(^^)
フォトダイオードは、ダイオードという名前の通り、PN接合のみで構成されているシンプルな半導体デバイスです。
使い方は、PN接合に逆バイアスをかけて、微小な抵抗を接続して使います。
逆バイアスとは、P側にマイナス電位、N側にプラス電位をかけている状態のことです。
この状態のフォトダイオードに光を当てることで、光エネルギーをPN接合で吸収して、電子の移動が起こり、電流が流れます。
詳しく説明すると、光があたって、価電子帯の電子に光エネルギーが与えられて、そのエネルギーをもらった電子は、自由電子になります。
このあと、価電子帯には自由電子のスペースが余ります。
自由電子と自由正孔(ホール)はペアで発生するので、ダイオードに印加された逆バイアスに従って、自由電子はプラス電位側に、自由正孔はマイナス電位側に移動していき、電流が流れます。
光エネルギーが多ければ多いほど、移動する自由電子と自由正孔の送料が多くなるので、流れる電流量もあがります。
フォトダイオードにも種類があって、pnフォトダイオード、pinフォトダイオード、アバランシェフォトダイオードなどがあります。
フォトダイオードの種類
・pnフォトダイオード
・pinフォトダイオード
・アバランシェフォトダイオード
フォトトランジスタ
フォトトランジスタは、フォトダイオードとトランジスタを組み合わせたようなものです。
フォトダイオードの小さな出力を、トランジスタで増幅してあげよう、というのがフォトトランジスタです。
もっと専門的にいうと、フォトトランジスタは、バイポーラトランジスタをエミッターコレクタの2端子素子として扱い、ベース領域で光を吸収して、光の吸収によって励起された電子(注入電子ともいう)を増幅する受光素子です。
ベースとコレクタを構成しているPN接合部分がフォトダイオードにあたります。
ここに光がはいってくると、電流が発生し、エミッタに流れていきます。
ただし、このエミッタ電流は、バイポーラトランジスタの蔵副作用にって、ベースーエミッタ間で発生したフォトダイオードの小さな出力電流の数百倍に増幅されている、という寸法です。
フォトトランジスタは、感度が高く、高速に応答できるので、かなり普及している受光デバイスといえます。
等価回路でいうと、バイポーラトランジスタのベースーコレクタ間にフォトダイオードを追加した回路とみなすことができます(^^)
フォトカプラ
フォトカプラは「光複合デバイス」といわれる半導体デバイスです。
フォトインタラプタ
フォトインタラプタは、フォトカプラと同じく「光複合デバイス」です。
イメージセンサー
CCDイメージセンサーとCMOSイメージセンサーの違いは、下記の記事でざっくりまとめています。ご参考までに(^^)
CCDイメージセンサー
今の主流は低コスト&低消費電力なCMOSイメージセンサーになっています。。。
CMOSイメージセンサー
CMOSイメージセンサーに強いのが、日本のソニーセミコンダクタソリューションズや韓国のサムスン電子です。
半導体センサ[半導体デバイスその5]
磁気センサー
ホール効果を利用するホール素子型
磁気抵抗効果を利用する磁気抵抗素子型
圧力センサー
ピエゾ効果を利用する圧力センサー
加速度センサー
MEMS半導体を利用した加速度センサー
静電容量を検出する加速度センサー
ピエゾ効果を利用する加速度センサー
MEMS半導体センサー
ガスセンサー
指紋認証センサー
イオンセンサー
パワー半導体[半導体デバイスその6]
Si系のパワー半導体
パワーMOSFET
パワーMOSFETはユニポーラデバイスです。
IGBT
IGBTはバイポーラデバイスです。
化合物系のパワー半導体
SiCのパワー半導体
GaNのパワー半導体
高周波デバイス[半導体デバイスその7]
GaAsでできたMESFET
GaAsでできたHEMT
バイポーラトランジスタ
バイポーラトランジスタの、「バイ」という言葉には「2つ」という意味があります。
そして「ポーラ」という言葉には「極性」という言葉があります。
バイポーラトランジスタの意味するところは、「2つ」の「極性」のキャリアが作用するトランジスタだよ、ということになります。
さて、バイポーラトランジスタにどのような種類があるのか列挙してみましょう。
・小信号トランジスタ:高周波受信機などに使用する小さな信号を増幅するために用いるバイポーラトランジスタ
・パワートランジスタ:送信出力やスピーカー駆動の電力増幅のために使用するバイポーラトランジスタ
・電源用パワートランジスタ:スイッチング電源用のバイポーラトランジスタ
・IGBT(Insulated Gate Bipolar Transistor; 絶縁ゲートバイポーラトランジスタ):スイッチング電源用のバイポーラトランジスタです。呼び方は「あいじーびーてぃー」といいます。
ユニポーラトランジスタ
ユニポーラトランジスタの「ユニ」は「1つ」という意味を示し、「ポーラ」は「極性」という意味を示します。
ユニポーラトランジスタの意味するところは、「1つ」の「極性」のキャリアが作用するトランジスタだよ、ということになります。
・パワーMOSFET:送信出力や電源用に使われるMOSFET
・IPD(Intelligent Power Device):付加機能を一体化した電源用集積回路(IC)
化合物半導体
ガリウムヒ素(GaAs)
ガリウムヒ素は化学記号でGaAsと書きます。
Ga:ガリウムの化学記号、As:ヒ素の化学記号を表しています。
ガリウムヒ素は、
・超高速コンピュータ
・光通信
・衛星通信
に使用されます。
Siデバイスほど大量生産は難しいですが、値段が高くてもSiよりも高い性能のデバイスを作りたいときにガリウムヒ素デバイスは使われます。