半導体デバイス

有機EL(OLED)のすべて – 次世代ディスプレイ技術の仕組みと展望

1. 有機ELとは?

有機EL(Organic Light Emitting Diode, OLED)は、有機化合物を発光層に用いた自発光ディスプレイです。
液晶(LCD)のようにバックライトを必要とせず、電流を流すと有機層が直接発光します。

  • 方式の種類

    • PMOLED(パッシブマトリクス方式):小型・低解像度向け

    • AMOLED(アクティブマトリクス方式):スマホ・テレビなど大型・高精細向け

  • 特徴:薄型・軽量・高コントラスト・柔軟性あり(曲げられるディスプレイ)


2. 仕組み

有機ELは複数の薄い層で構成されています。

  1. 基板(ガラスまたはプラスチック)

  2. アノード(陽極)

  3. 有機層

    • 電子輸送層

    • 発光層(有機発光材料)

    • 正孔輸送層

  4. カソード(陰極)

電圧をかけると電子と正孔が発光層で再結合し、光を放出します。


3. 有機ELのメリット

3-1. 高画質

  • 完全な黒を再現可能(バックライトがないため)

  • 高コントラスト比(100万:1以上)

  • 広視野角で色変化が少ない

3-2. 薄型・軽量

  • 液晶のようなバックライトユニット不要

  • スマホでは6mm以下の薄型化が可能

3-3. フレキシブル性

  • プラスチック基板を使えば曲げられる

  • 折りたたみスマホや曲面ディスプレイの実現

3-4. 高速応答

  • 応答速度が液晶の約1,000倍(動画やゲームに有利)


4. 課題と弱点

4-1. 焼き付き(Burn-in)

  • 長時間同じ表示を続けると、画素が劣化して残像が残る

4-2. 寿命

  • 青色有機材料の寿命が短く、全体の耐用年数に影響

  • 一般的に約2〜5万時間で輝度低下が目立つ

4-3. コスト

  • 高精細パネルの歩留まり(良品率)が低く、製造コストが高い

  • 大型OLEDテレビは液晶に比べて価格が高い傾向


5. 最新動向

5-1. 大型化の進展

  • LG Displayが77〜97インチのOLEDテレビパネルを量産

  • Mini LED搭載液晶との競合が激化

5-2. 高耐久化

  • TADF(熱活性化遅延蛍光)や量子ドットとの組み合わせで寿命延長

  • 青色発光材料の改良による耐用年数向上

5-3. 新市場の拡大

  • 自動車ディスプレイ、AR/VR用マイクロOLED

  • 折りたたみスマホ、巻き取り式ディスプレイ


6. 有機ELの将来性

有機ELは、高画質とデザイン自由度を武器にプレミアム市場での地位を固めつつあります。
一方で、大量普及のためには低価格化と寿命改善が課題です。
将来的には、液晶やMicroLEDと市場を棲み分けながら、スマホ・車載・ウェアラブル機器など幅広い分野に展開していくと考えられます。