エピタキシャル成長とは?【半導体製造の基礎】ホモ・ヘテロの違いと主な成長方法

半導体製造において、ウエハの上に高品質な結晶薄膜を積み上げる技術「エピタキシャル成長」は、トランジスタや発光ダイオード(LED)、レーザーダイオードなど多くのデバイス製造に欠かせない重要なプロセスです。
本記事では、エピタキシャル成長の基本概念から種類・主な成長方法・半導体デバイスへの応用までを体系的に解説します。
エピタキシャル成長とは
エピタキシャル成長(Epitaxial Growth)とは、単結晶の基板(下地)の上に、基板の結晶構造を引き継ぎながら薄い単結晶薄膜を成長させる技術です。
「半導体が成長する」と聞くと不思議に思うかもしれませんが、正確には「半導体を構成する結晶を、基板の上に整然と積み上げていく」プロセスです。このため「結晶成長」という言葉も広く使われます。
語源
エピタキシャル(Epitaxial)という言葉は、ギリシャ語に由来します。
- epi(エピ):「上に」という意味
- taxis(タクシス):「そろえる・整列させる」という意味
つまりエピタキシャルとは「上にそろえて成長させる」というイメージです。英語では「epitaxy(エピタキシー)」と表記します。
ホモエピタキシャルとヘテロエピタキシャル
エピタキシャル成長は、基板と成長させる薄膜の材料の組み合わせによって2種類に分類されます。
ホモエピタキシャル成長(Homoepitaxy)
基板と成長させる薄膜が同じ材料のエピタキシャル成長です。
例:シリコン(Si)基板の上にシリコン(Si)薄膜を成長させる
ホモエピタキシャル成長は、基板と薄膜の格子定数(結晶の周期)が完全に一致するため、結晶欠陥が生じにくく高品質な薄膜が得られるのが特徴です。シリコンMOSFETやバイポーラトランジスタの製造に広く使われています。
ヘテロエピタキシャル成長(Heteroepitaxy)
基板と成長させる薄膜が異なる材料のエピタキシャル成長です。
例:シリコン(Si)基板の上に窒化ガリウム(GaN)薄膜を成長させる
ヘテロエピタキシャルでは基板と薄膜の格子定数が異なるため、格子不整合(Lattice Mismatch)が生じます。格子不整合が大きいと結晶欠陥(転位)が発生しやすくなるため、緩衝層(バッファ層)を挿入するなどの工夫が必要です。
LED・レーザーダイオード・高電子移動度トランジスタ(HEMT)など化合物半導体デバイスの製造に不可欠な技術です。
主なエピタキシャル成長方法
エピタキシャル成長にはいくつかの代表的な手法があります。
① CVD法(化学気相成長法 / Chemical Vapor Deposition)
ガス状の原料を反応させて基板上に薄膜を堆積させる方法です。シリコンエピタキシャル成長では最も広く使われています。
代表的なシリコン系原料ガス:
- シラン(SiH₄)
- ジクロロシラン(SiH₂Cl₂)
- トリクロロシラン(SiHCl₃)
高温(900〜1200℃程度)で反応させることで、高品質なシリコンエピタキシャル層が得られます。量産性が高く、半導体工場での主流手法です。
② MBE法(分子線エピタキシー法 / Molecular Beam Epitaxy)
超高真空中で原料をビーム状に照射して基板上に成長させる方法です。
原料を高温で蒸発させ、分子・原子のビームとして基板に照射します。超高真空環境(10⁻¹⁰ Torr程度)で行うため、高純度・高品質な薄膜が得られます。
CVD法と比較して成長速度は遅く量産性に劣りますが、原子層レベルの精密な膜厚制御が可能なため、研究開発や高性能化合物半導体デバイスの製造に適しています。
③ LPE法(液相エピタキシー法 / Liquid Phase Epitaxy)
高温に溶融した溶液から基板上に結晶を析出させる方法です。
比較的シンプルな装置で実施でき、高品質な結晶が得られる反面、膜厚制御や大面積化が難しいため、現在では主に化合物半導体の研究用途や一部の特殊デバイスに限定されています。
エピタキシャル成長の半導体デバイスへの応用
エピタキシャル成長は以下のような多様なデバイスに活用されています。
- シリコンMOSFET・BiCMOS:ホモエピタキシャルによる高純度Si層形成。デバイス特性向上や素子間分離に活用
- LED・レーザーダイオード:GaN/AlGaN、InGaAs/InPなどのヘテロエピタキシャル構造。波長制御に不可欠
- HEMT(高電子移動度トランジスタ):AlGaN/GaN、AlGaAs/GaAsなどのヘテロ接合を利用した高周波・パワーデバイス
- 太陽電池:多接合型(タンデム型)太陽電池においてヘテロエピタキシャル積層構造を使用し、変換効率を向上
- パワー半導体:SiC・GaNエピタキシャル層を用いた高耐圧・低損失パワーデバイス
まとめ
エピタキシャル成長のポイントをまとめます。
- エピタキシャル成長とは、単結晶基板の上に結晶構造を引き継ぎながら薄膜を成長させる技術
- 基板と薄膜が同材料なら「ホモエピタキシャル」、異材料なら「ヘテロエピタキシャル」
- 主な成長方法はCVD法(量産向け)・MBE法(高精度)・LPE法(研究用)
- LED・レーザー・HEMT・パワー半導体など幅広いデバイスに不可欠な技術
半導体デバイスの高性能化・多様化を支えるエピタキシャル成長は、今後もさらに重要性が増す基盤技術です。














