半導体の会社分析

イオン注入機メーカーやイオン注入(ドーピング)の原理

イオン注入(イオンインプラント, ion-implant)は、半導体製造工程の一つであり、特に製品の品質と性能を向上させるために用いられます。

イオン注入装置は、特定の種類のイオンを高速で物質(多くの場合はシリコン)に注入するために使用されます。

イオン注入は、イオンインプラやインプラ、イオンドーピングなど、いろいろな呼び方がありますので、混乱するかもしれません。

イオン注入機の用語解説

加速エネルギー

加速エネルギーは、注入されるイオンがどれだけのエネルギーを持つかを示すパラメータであり、通常は電子ボルト(eV)またはその倍数の単位(keV、MeVなど)で表されます。

加速エネルギーによって、イオンが半導体内部にどの程度深く侵入できるかが決まります。

エネルギーが高いほど、イオンはより深く材料に侵入することができます。

しかし、その分、半導体材料にダメージも多く入ります。

(半導体のダメージは、そのあとに適切な温度で熱処理をすれば回復することもあります)

イオン注入装置では、イオン源から生成されたイオンを電場中に放出することで、これらのイオンに適切なエネルギーを与えます。

その後、これらの高エネルギーイオンは、ターゲットとなる半導体ウェハーに向かって加速されます。

加速エネルギーの選択は、目的とする半導体デバイスの特性に大きく影響を与えます。

たとえば、高いエネルギーを持つイオンは、デバイスの深部に影響を及ぼすことが可能であり、これは深いジャンクションを作成するのに役立ちます。

一方、低いエネルギーを持つイオンは表面近くに影響を及ぼすため、表面電極の作成などに利用されます。

したがって、加速エネルギーは、イオン注入プロセスにおける重要な制御パラメータの一つであり、デバイス設計と性能に大きな影響を及ぼします。

ビーム電流

ビーム電流とは、特定の時間内にイオンビームを通過する電荷の量を示すもので、その単位はアンペア(A)です。

このビーム電流はイオン注入装置において非常に重要なパラメータとなります。

イオンビームのビーム電流は、イオン注入の速度と深さを調節するために用いられます。

ビーム電流が高いほど、注入速度が速くなり、一定の時間内により多くのイオンが注入されます。

逆に、ビーム電流が低い場合、注入速度は遅くなります。

また、ビーム電流は注入するイオンの総量(ドーズ)を制御するのにも使用されます。

ビーム電流が高いほど、一定の時間内に注入されるイオンの数が多くなります。

したがって、ビーム電流は半導体デバイスの製造プロセスにおいて、注入するイオンの量と速度を調節し、必要なデバイスの特性を得るために重要な役割を果たします。

例えば、高速なスイッチング性能が求められるデバイスでは、大量のイオンを高速に注入するために、高いビーム電流が必要となることがあります。

RFシャワー

RF(Radio Frequency)シャワーシステムは、イオン注入プロセスを支える重要なコンポーネントの一つです。

RFシャワーは、イオンを生成し、それを対象の物質に対して均一に分散する役割を果たします。

RFエネルギーは、プラズマ(電子とイオンからなるガス)を生成するために使われます。

このプラズマはその後、イオン注入機によって加速され、対象物質に注入されます。

RFシャワーシステムは、イオン生成のプロセスを制御し、イオンビームの品質と一貫性を維持するために重要な役割を果たします。

これにより、半導体デバイスの性能と信頼性が向上します。

プラテン

プラテンとは、半導体製造装置などにおいて使用される部品で、半導体ウェハーなどの物体を固定または支持するためのプラットフォームまたはテーブルを指します。

プラテンは、さまざまな形状、サイズ、材質で作られ、使用目的や装置の種類により異なります。

例えば、イオン注入装置では、プラテンは半導体ウェハーを正確な位置に保持し、均一なイオン注入を可能にする役割を果たします。

プラテンは通常、ウェハーが装置内で回転したり、移動したりすることを可能にする機構を持っています。

これにより、ウェハー全体に対して一様なイオン注入が可能になり、高品質な半導体デバイスの製造をサポートします。

また、プラテンは熱処理装置(アニーリング装置など)では、高温に耐えられる材料(例えば、石英や特殊なセラミックス)で作られ、ウェハーを均一に加熱するために使用されます。

プラテンは半導体製造プロセスにおいて、精密なウェハーの取り扱いと均一な処理を可能にするために重要な部品です。

均一性

イオン注入の「均一性」というのも重要なキーワードです。

半導体ウエハに対して、どの程度均一に、どのぐらいの数のイオンが、どのくらいの加速エネルギーで打ち込まれたかが、半導体デバイスの性能を左右します。

なぜなら、半導体デバイスはμmオーダー、nmオーダーという極めて細かい寸法で設計されているからです。

高い均一性をもつイオン注入装置は、それだけ性能が良いイオン注入装置といえます。

イオン注入機メーカー

住友重機械イオンテクノロジー株式会社

URL: https://shi-ion.jp/vision-mind/

住友重機械イオンテクノロジー(株)のイオン注入装置のラインナップは下記の通り。

SAion: All-in-ONEイオン注入装置

装置メーカー:住友重機械イオンテクノロジー株式会社

装置名:SAion

イオン注入できるウエハサイズ:200mm,300mm,450mm

加速エネルギー範囲は最小:0.2keV~最大:630keV

装置名のSAionというの名前は、

・住友(Sumitomo)の頭文字S

・All-in-Oneの頭文字A

・イオン注入機のion

からとって、「SAion」になっている、のかもしれません。

eVという単位は、エレクトロンボルトと呼びます。

keVは、キロエレクトロンボルトと呼びます。

エレクトロンボルト、という呼び方をしますが、電圧の単位ではありません。

エレクトロンボルトは、電圧ではなく、エネルギーの単位なので、間違えないように要注意です。

S-UHE, SS-UHE: 高エネルギーイオン注入装置

装置メーカー:住友重機械イオンテクノロジー株式会社

装置名:S-UHE, SS-UHE

MC3-Ⅱ/GP: 中電流イオン注入装置

装置メーカー:住友重機械イオンテクノロジー株式会社

装置名:MC3-Ⅱ/GP

SHX-Ⅲ/S, NV-GSD Ⅲ: 高電流イオン注入装置

装置メーカー:住友重機械イオンテクノロジー株式会社

装置名:SHX-Ⅲ/S, NV-GSD Ⅲ

日新イオン機器株式会社(Nissin Ion Equipment CO., LTD.)

日新イオン機器株式会社(Nissin Ion Equipment CO., LTD.)は、日本の京都府京都市に本社を構える企業で、「高温」イオン注入装置などを販売している点が特徴的です。

URL: https://www.nissin-ion.co.jp/

EXCEED3000AHシリーズ:中電流イオン注入装置

最大加速エネルギー:750keV

EXCEED9600Aシリーズ:中電流イオン注入装置

最大加速エネルギー:960keV

IMPHEAT-II:高温イオン注入装置

IMPHEAT-IIは、日新イオン機器(株)の象徴的な高温イオン注入装置です。

・SiCパワーデバイス向けアルミニウム(AI)注入が可能

・室温から500℃までをカバー(つまり、500℃という高温でも搬送・処理可能)

・業界最高の高温スループット

対応できる半導体ウエハのサイズ:直径100mm(4インチ)/150mm(6インチ)/200mm(8インチ)の3種類

高温イオン注入は、3次元立体デバイス(3Dデバイス)において、成長欠陥を防ぎ、ドーパントの活性化を促し、欠陥によるデバイスのリークを減少させる効果が見込まれる技術です。

EXCEED400HY:パワーデバイス向けのイオン注入装置

EXCEED400HYは、水素(H+)イオンを注入するためのイオン注入装置であり、

パワーデバイス(パワー半導体)向けのイオン注入装置です。

最大加速エネルギーは、400keVですが、ビーム電流が高いので、処理速度(スループット)が高いのが特徴とのこと。

アプライド・マテリアルズ(Applied Materials)

アプライド・マテリアルズ(Applied Materials)は、半導体製造装置の大手メーカーで、イオン注入装置も製造しています。

URL: https://www.appliedmaterials.com/jp/ja.html

中電流イオン注入装置:VIISta® 900 3D

VIISta® 900 3Dは、もともとVarianというイオン注入装置メーカーのものでした。

Varianがアプライド・マテリアルズ(Applied Materials)に合併されたことを受け、現在も同じ製品名が残り続けています。

VIISta® 900 3Dは、先端ロジックICから、電力制御用のパワーデバイス(パワー半導体)まで幅広く対応することが可能なイオン注入装置です。

VIISta®は、アプライド・マテリアルズ(Applied Materials)社の登録商標です。

アクセリステクノロジーズ(Axcelis Technologies)

アクセリステクノロジーズ(Axcelis Technologies)は、アメリカに拠点を置く半導体製造装置メーカーで、イオン注入装置の設計と製造を行っています。

URL: https://www.axcelis.com/?lang=ja

Purion Hシリーズ高電流イオン注入装置

アクセリステクノロジーズ(Axcelis Technologies)の製品ラインナップの中で、「高電流イオン注入機」のカテゴリーに位置するのが、Purion Hシリーズです。

Purion Mシリーズ中電流イオン注入装置

アクセリステクノロジーズ(Axcelis Technologies)の製品ラインナップの中で、「中電流イオン注入機」のカテゴリーに位置するのが、Purion XEシリーズです。

高エネルギー能力を備えたPurion Mシリーズのイオン注入装置は、比較的高いエネルギーを使う製造工場や、重い質量のイオン種を半導体ウエハに注入したいシーンで役立つといわれています。

Purion XEシリーズ高エネルギーイオン注入装置

アクセリステクノロジーズ(Axcelis Technologies)の製品ラインナップの中で、「高加速エネルギーのイオン注入機」のカテゴリーに位置するのが、Purion XEシリーズです。

以下の通り、最大の加速エネルギーがXEシリーズの中でも幅広いランナップがあることがわかります。

最も大きいのは、Purion XEmaxという機種で、15MeVという極めて高い加速エネルギーを持っています。

このような高い加速エネルギーのイオン注入装置でイオン注入を行うと、非常に深い位置にイオンを打ち込むことができます。

しかし一方で、少なからず注入ダメージも半導体ウエハ(半導体デバイス)に入ります。

注入ダメージをその後のウエハプロセスでどこまで回復させることができるかが重要となるはずです。

Purion XE

最大エネルギーが4.5MeV(4500keV)の12段LINAC

Purion EXE

エネルギーがPurion XEより高く、最大5.25MeV(5250keV)の12段LINAC

Purion VXE

最大エネルギーが8MeV(8000keV)のエネルギーブースター搭載の14段LINAC

Purion XEmax

最大エネルギー15MeV(15000keV)向けの、特許取得済みBoost TechnologyTM搭載デュアルLINAC設計

Purion XEパワーシリーズ

高容量パワーデバイス向けのアルミニウム(Al)イオン注入、直径150mm SiCウエハ搬送、直径200mm薄型Siウエハ搬送向けに設計されたXEおよびEXEモデル

松定プレシジョン(まつさだプレシジョン)

松定プレシジョンは、イオン注入機に欠かすことができない下記製品を販売している企業です。

・イオン源に使用される高耐圧フィラメント電源

・引き出し電極の高圧電源

・アナライザーマグネットに使用する定電流電源

・イオンを加速させるための電圧最大200kVの高圧電源

・イオンビーム走査用高速高電圧バイポーラ電源

・二次電子抑制用高圧電源