「半導体検査装置」と一口に言っても、フォトマスクの欠陥を見る装置、ウェーハ上のパターンを計測する装置、完成したチップの電気特性をテストする装置は、まったく別の企業が作っています。

本記事では「何を検査するか」という工程別の分類軸で半導体検査装置市場の全体地図を描き、KLA・レーザーテック・アドバンテスト・日立ハイテクの各社を業績・技術・シェアで比較します。

半導体検査装置の工程別分類──全体地図

半導体の製造工程は大きく「前工程(ウェーハ加工)」「後工程(パッケージング・テスト)」に分かれ、検査装置もそれに応じて専門化しています。

検査カテゴリ何を検査するか主要企業
① マスク検査フォトマスク(EUV・DUV)の欠陥レーザーテック(EUV独占)・KLA(DUV)
② ウェーハ欠陥検査(光学)露光後ウェーハのパターン欠陥KLA(シェア50%超)・Applied Materials
③ ウェーハ計測(CD/SEM)パターン寸法・形状の精密計測KLA日立ハイテク・Nova
④ 電子線ウェーハ検査電子線でウェーハの微細欠陥を検出KLA・日立ハイテク
⑤ 後工程テスト(電気特性)完成チップのSoC・メモリ動作検証アドバンテスト・テラダイン

この地図を頭に入れた上で各社を見ていきます。

KLA Corporation(ケーエルエー)──ウェーハ検査の絶対王者

項目内容
本社米国カリフォルニア州ミルピタス
上場Nasdaq(ティッカー:KLAC)
FY2026売上約$13.1B(約1兆9,000億円)・前年比+13.4%
強み領域光学式ウェーハ欠陥検査・CD-SEM・プロセス制御全般
市場シェア半導体計測・検査装置全体で約22%(最大手)
主力製品Puma(光学欠陥検査)・eBeam検査・CD-SEM・Archer(オーバーレイ計測)

KLAの強みと「EUVマスク検査に参入できない理由」

KLAはウェーハ上の欠陥検査・パターン計測という「前工程の幅広い分野」をカバーする総合的なプロセス制御プラットフォームを持ちます。売上$13.1B・営業利益率約40%という超高収益企業です。

しかしEUVフォトマスクのActinic検査(13.5nm実光源)では、レーザーテックに競合できていません。KLAはDUV光やeBeamによる「代替検査」は提供していますが、Actinic検査装置の量産出荷実績がなく、この一点でレーザーテックに独占を許しています。(詳細:レーザーテックの競争力を徹底解剖

レーザーテック(Lasertec)──EUVマスク検査の唯一絶対者

項目内容
本社神奈川県横浜市港北区
上場東証プライム(証券コード:6920)
FY2026売上約2,200億円(前年比約▲13%)・受注は2,000〜2,400億円に上方修正
強み領域EUVフォトマスク検査(ブランクス・パターン)
EUVマスク検査シェア100%(世界独占)
主力製品ABICS(マスクブランクス検査)・ACTIS A200HiT(パターンマスク検査)

「KLAより規模が小さいのに独占できる理由」

レーザーテックの売上は約2,200億円でKLAの約$13.1B(約1兆9,000億円)の10分の1以下です。それでも独占できる理由は市場構造にあります。

  • EUVマスク検査装置の市場規模は年間2,000〜3,000億円程度のニッチ
  • KLAが本腰を入れて参入するには投資対効果が合いにくい
  • かつEUV光源(13.5nm)の自社開発という技術的参入障壁が高い
  • レーザーテックは20年以上かけてこのニッチに特化してきた

「大きな川は取れないが、その川の要所にある橋を独占している」──これがレーザーテックのビジネスモデルです。

アドバンテスト(Advantest)──後工程テストで世界首位

項目内容
本社東京都千代田区
上場東証プライム(証券コード:6857)
FY2026売上(2026年3月期)1兆1,286億円(前年比+44.7%)・過去最高
営業利益4,991億円(前年比+118.8%)・過去最高
FY2027予想売上1兆2,970億円(+27%予想)
強み領域SoCテスター・メモリテスター・後工程電気特性試験
主力顧客NVIDIA・TSMC・HBMメーカー(SKH・Micron)・Apple

アドバンテストとKLA・レーザーテックの違い

アドバンテストが検査する対象は「完成したチップ(ダイ)の電気特性」であり、フォトマスクやウェーハ表面の欠陥を検査する他社とは根本的に異なります。

AIチップ(NVIDIA H100・B200等)はSoCテスターの複雑なテスト工程を経て出荷されます。GPUの演算ユニット数が増えるほどテスト時間が長くなるため、AI半導体が高機能になるほどアドバンテストのテスター需要が増えるという構造があります。2026年3月期の売上+44.7%はまさにこの構造の恩恵です。

日立ハイテク(Hitachi High-Tech)──CD-SEM・電子線計測の専門家

項目内容
本社東京都港区
親会社日立製作所(非上場子会社)
強み領域CD-SEM(限界寸法走査型電子顕微鏡)・電子線検査・電子顕微鏡
主力製品CD-SEM CG/CXシリーズ・S-9000シリーズ(EUV対応)
競合CD-SEM分野ではKLAと二強

CD-SEMとは何か

CD-SEM(Critical Dimension Scanning Electron Microscope)は、走査型電子顕微鏡を使ってウェーハ上に形成されたパターンの寸法(線幅・孔径)を精密に計測する装置です。露光後に「設計通りの寸法で焼けているか」を確認する品質管理の要です。

3nmの先端ノードでは1nm以下の計測精度が必要であり、日立ハイテクはその精度維持で長年の実績を持ちます。なおCD-SEM分野はKLAとの二強体制で、シェアは拮抗しています。

テラダイン(Teradyne)──アドバンテストと後工程テストで二強

項目内容
本社米国マサチューセッツ州ノースレディング
上場Nasdaq(ティッカー:TER)
FY2025売上約$2.8B(約4,200億円)
強み領域SoCテスター・メモリテスター・産業用ロボット(Universal Robots)
顧客Intel・Qualcomm・メモリメーカー

後工程テストはアドバンテストとテラダインの二強です。AI半導体需要の恩恵はアドバンテストがより多く受けており(NVIDIA向けシェアが高い)、テラダインはロジックSoC・ロボット事業で補完する形です。

主要5社の業績・規模比較(2026年)

企業売上規模(円換算目安)強み領域利益率
KLA米国約1兆9,000億円ウェーハ欠陥検査・CD計測約40%
アドバンテスト日本1兆1,286億円SoCテスター・メモリテスター約44%
テラダイン米国約4,200億円SoCテスター・ロジック試験約25%
レーザーテック日本約2,200億円EUVマスク検査(独占)約45%
日立ハイテク日本非公開(日立グループ内)CD-SEM・電子線計測

AI需要が各社に与える影響の違い

AI半導体ブームは各社に異なる形で恩恵をもたらしています。

企業AI需要の恩恵経路2026年の状況
KLA先端ロジック(3nm・2nm)ウェーハ検査増加売上+13.4%・安定成長
アドバンテストGPUのSoCテスト工程増加・HBMテスト需要売上+44.7%・過去最高更新
レーザーテックHBM・先端ロジック向けEUVマスク検査増加受注回復基調(2,000〜2,400億円上方修正)
日立ハイテク3nm以下でのCD-SEM需要増加先端ノード向け受注増
テラダインロジックSoC試験増加アドバンテストほどの爆発的成長ではない

日本3社(レーザーテック・アドバンテスト・日立ハイテク)の特徴

日本の半導体検査装置メーカーは3社ともニッチ特化で世界首位を狙う戦略が共通しています。

  • レーザーテック:EUVマスク検査という超ニッチで独占。従業員1,300人で利益率45%
  • アドバンテスト:SoCテスターで世界首位。AI需要で2026年3月期に売上1兆円超え
  • 日立ハイテク:CD-SEMでKLAと二強。日立グループの信頼性と日本のものづくりが強み

一方でKLA・テラダインの米国勢は規模と製品幅で優位性を持ちます。米国の輸出規制でKLAの中国向け売上にも影響が出ており、中国依存度の低い日本3社が相対的に有利な局面もあります。

まとめ

  • 半導体検査装置は工程ごとに専門企業が分かれた高集中市場(上位10社で93%)
  • KLA:ウェーハ欠陥検査・CD計測の王者。売上$13.1Bで業界最大
  • レーザーテック:EUVマスク検査で世界独占。規模は小さいが利益率45%の超高収益
  • アドバンテスト:後工程SoCテスターで世界首位。AI需要で2026年3月期に売上1兆円超・過去最高
  • 日立ハイテク:CD-SEM・電子線計測でKLAと二強。日本製造業の信頼性が武器
  • テラダイン:後工程テストでアドバンテストと二強。ロジックSoC・産業用ロボットで補完

関連記事:レーザーテックの競争力を徹底解剖──EUVマスク検査100%独占の理由EUVフォトマスク完全解説EUVとDUVを徹底比較AI半導体に強いメモリメーカーはどこか

【参考・引用元】

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半導体業界の技術・企業・市場動向を発信するブログ「semi-connect.net」の管理人。半導体プロセス・前工程・後工程からエレクトロニクス企業の財務分析まで、業界の基礎から最新情報をわかりやすく解説します。