リードフレームとは?構造・材料・製造方法を半導体の視点で徹底解説【図解付き】

スマートフォンや自動車の中で動く半導体チップは、そのままでは基板に載せられません。極小のチップを保護し、外部の回路とつなぎ、扱えるようにする“器”が半導体パッケージであり、その骨組みとなるのがリードフレーム(lead frame)です。
リードフレームは、半導体の後工程(組立)を支える最も基本的な部品のひとつでありながら、構造・材料・製造方法には奥深い世界が広がっています。この記事では、リードフレームとは何かという基本から、構造・材料(銅と42アロイの違い)・製造方法(スタンピングとエッチング)・後工程での使われ方・パッケージの種類・基板系との違い・最新動向まで、半導体の視点で体系的に解説します。
リードフレームとは?
リードフレームとは、半導体チップを支持・固定し、チップと外部の回路を電気的に接続するための金属製の薄い枠組みです。厚さはおおむね0.1〜0.4mm(100〜400µm)程度の金属板を加工して作られます。
リードフレームの役割は、大きく次の3つに整理できます。
- 支持・固定:チップ(ダイ)を載せて機械的に支える
- 電気的接続:チップと外部端子の橋渡しをする(信号・電力の通り道)
- 放熱:チップが発する熱を外部へ逃がす
樹脂で封止された一般的なICパッケージで、黒い樹脂の周囲から脚のように伸びる金属端子(リード)が、リードフレームの一部です。リードフレームは、最も代表的なプラスチックパッケージの“背骨”であり、現在も半導体パッケージの多くで使われています。なお、その原型は1960年代に考案されたとされ、半世紀以上にわたって進化を続けてきた成熟技術でもあります。
リードフレームの構造 ―― 各部の名称

1枚のリードフレームには、同じパターンが連続して複数並んでおり、それらをまとめて搬送するための外枠が付いています。1個分のパターンは、主に次の部位で構成されます。
| 部位 | 役割 |
|---|---|
| ダイパッド(アイランド) | 半導体チップを搭載・固定する台座。放熱経路も兼ねる |
| インナーリード | 樹脂の内側にある端子。チップの電極とワイヤボンディングで接続する |
| アウターリード | 樹脂の外側に出る端子。基板(PCB)にはんだ付けされる |
| タイバー(ダムバー) | リード同士をつなぎ、封止時の樹脂の流出を堰き止める。最後に切断される |
| 吊りリード(サポートバー) | ダイパッドを外枠から支える梁 |
| 外枠・パイロット穴 | 搬送・位置決めのための枠と穴 |
ポイントは、インナーリードとアウターリードは1本のリードがつながったもので、樹脂で封止される境界を境に呼び名が変わるという点です。組立の最終工程でタイバーが切り落とされて初めて、各リードが電気的に独立した端子になります。
リードフレームの材料 ―― 銅合金と42アロイ

リードフレームの材料には、電気伝導性・熱伝導性・機械的強度・封止樹脂との密着性・熱膨張率などが求められます。素材は大きく銅(Cu)合金系と鉄ニッケル(Fe-Ni)合金系の2つに分けられます。
| 銅合金系(Cu) | 42アロイ(Fe-Ni系) | |
|---|---|---|
| 代表材 | C194 ほか各種Cu合金 | 鉄に約42%のNiを添加した合金 |
| 電気・熱伝導性 | 高い(放熱・低抵抗に有利) | 低い(銅の約1/30と小さい) |
| 熱膨張率 | シリコンと差がある | シリコンに近い(接合の信頼性に有利) |
| コスト | 低い(42アロイの約半分) | 高い |
| 主な用途 | パワーIC・放熱重視の製品・多くの汎用IC | 多ピン・狭ピッチで寸法安定性が要る製品 |
かつてはシリコンとの熱膨張率が近い42アロイが封止信頼性の面で主流でしたが、熱放散性に劣るため、放熱・低抵抗が求められる現在は銅合金系が広く使われています。一方で、銅は機械的強度や酸化膜による樹脂剝離の課題があり、各社が添加元素による高強度化や、樹脂密着性を高める表面粗化処理で対応しています。
表面処理(めっき)
リードフレームには用途に応じためっきが施されます。代表的なものは次の通りです。
- Agめっき:ダイパッドやインナーリードに部分的に施し、ワイヤボンディング性を確保
- Snめっき:アウターリードのはんだ付け性を確保(鉛フリー対応)
- Pd-PPF(パラジウム・プリプレーテッドフレーム):組立前にNi/Pd/Auをあらかじめめっきしておく方式。鉛フリーで工程を簡素化でき、車載向けなど高信頼用途で採用が拡大
リードフレームの製造方法 ―― スタンピングとエッチング

リードフレームのパターン形成には、大きく2つの製法があります。金型で打ち抜くスタンピングと、薬品で溶かすエッチングです。それぞれ得意分野が異なります。
| スタンピング(打ち抜き) | エッチング(化学腐食) | |
|---|---|---|
| 原理 | 精密金型で金属板をプレス打ち抜き | フォトレジストでパターンを描き、薬液で溶かす |
| 初期コスト | 高い(金型が必要) | 低い(マスク変更で対応) |
| 単価(量産時) | 安い | 金型方式より割高 |
| 得意な領域 | 大量生産・標準ピッチ | 試作・少量多品種・多ピン狭ピッチ |
| 精度・特徴 | 高速だが残留応力が生じる | 残留応力がなく微細加工に有利。ハーフエッチングが可能 |
使い分けの基本は、「量産が決まった標準品はスタンピング、試作・少量多品種や微細な多ピン品はエッチング」です。金型コストは高いが単価が安いスタンピングへ移行する前段階として、設計変更が容易なエッチングが試作・評価で使われる、という流れもよく見られます。
エッチング特有の利点がハーフエッチングです。板の片側だけを途中まで溶かして凹凸や段差を作る加工で、たとえばダイパッド裏面に凹凸を付けてモールド樹脂との密着力を高める、QFNのような微細なリードレス構造を作る、といった用途に活かされます。
後工程(組立)でのリードフレームの流れ

リードフレームは、半導体の後工程(パッケージング/組立)で中心的な役割を果たします。複数個のチップを1枚のフレームに載せたまま一括搬送し、各工程を通していくのが特徴です。代表的な流れは次の通りです。
- ダイボンディング:ダイパッドにチップを接着・固定する
- ワイヤボンディング:チップの電極とインナーリードを金や銅の細線でつなぐ
- モールド(封止):樹脂で全体を包み、チップとワイヤを保護する
- めっき:アウターリードにはんだ付け用のめっきを施す(PPFの場合は事前めっき済み)
- タイバーカット/リードフォーミング:タイバーを切断し、リードを所定の形に曲げ成形する(段差を付けるディプレス/ダウンセットを含む)
- 個片化(シンギュレーション):外枠から切り離し、1個ずつのパッケージに分離する
つまりリードフレームは、チップを載せる台座であると同時に、組立工程を通して製品を運ぶ“搬送パレット”でもあるわけです。
リードフレームを使うパッケージの種類
リードフレームは、外部端子が「脚(リード)」の形をしたパッケージを中心に、幅広く使われています。
- 挿入実装型:DIP など(基板の穴に挿す古典的タイプ)
- 表面実装型(リードあり):SOP/SOIC、QFP、SSOP など(側面2方向・4方向にリードが出る)
- リードレス型:QFN/DFN/SON など(リードを出さず裏面端子化し、小型・薄型化に貢献。リードフレームを使う点は同じ)
- パワー・ディスクリート型:TO、SOT、DPAK など(大電流・放熱対応。ヒートシンク付きや厚銅タイプも)
- その他:LED、フォトカプラなど
誤解されやすいのがQFNです。QFNは「リードが出ていない(リードレス)」ため基板パッケージと混同されがちですが、中身はリードフレームベースです。リードを出さずに裏面の端子で接続する構造で、小型・薄型化と低コストを両立できることから採用が拡大しています。
リードフレーム系と基板(サブストレート)系の違い
半導体パッケージは、骨組みにリードフレームを使うタイプと、樹脂やセラミックの配線基板(サブストレート)を使うタイプ(BGAなど)に大別できます。
| リードフレーム系 | 基板(サブストレート)系・BGA | |
|---|---|---|
| 骨組み | 金属フレーム | 配線基板(有機・セラミック) |
| 端子数(ピン数) | 少〜中ピン向き | 多ピンに対応しやすい |
| コスト | 低い(成熟・大量生産向き) | 相対的に高い |
| 放熱・大電流 | 得意(パワー・車載向き) | 構造により対応 |
| 主な用途 | 汎用IC・ディスクリート・パワー・車載 | 高機能・高集積なLSI、プロセッサ など |
高集積・多ピンのプロセッサなどはBGAなどの基板系が主流ですが、低〜中ピンで、低コスト・高信頼・高放熱が求められる領域では、リードフレーム系が今なお主役です。両者は置き換え関係というより、用途に応じた使い分けの関係にあります。
リードフレームの最新動向
成熟技術でありながら、リードフレームは時代の要求に合わせて進化を続けています。主なトレンドは次の通りです。
- 薄型化・多ピン化・狭ピッチ化:板厚は従来の0.15mmから0.10〜0.125mmへと薄くなり、リード変形に耐える高強度材料の開発が進む
- リードレス化(QFN/DFN):小型・薄型・低背の要求に応え、エッチングによる高密度パターンで採用が拡大
- パワー半導体・車載向けの強化:EV/HEVのインバータやモーター制御に向け、放熱と大電流に対応する厚銅・ヒートシンク付き・かしめ接合タイプが伸長
- 樹脂密着性の向上:表面粗化処理やハーフエッチングで封止樹脂との密着力を高め、車載などの高信頼用途に対応
- 鉛フリー・PPF化:環境対応として、Pd系のプリプレーテッドフレームやめっき使用量の削減が進む
よくある質問(FAQ)
Q. リードフレームとは何ですか?簡単に教えてください。
半導体チップを載せて固定し、チップと外部回路を電気的につなぐ金属製の薄い枠組みです。パッケージの“背骨”であり、樹脂から脚のように出ている端子(リード)もその一部です。
Q. 銅と42アロイ、どちらが使われますか?
放熱・低抵抗・低コストに優れる銅合金系が現在は主流です。一方、シリコンに近い熱膨張率で信頼性に有利な42アロイは、多ピン・狭ピッチで寸法安定性が重要な用途などに使われます。用途に応じた使い分けです。
Q. QFNはリードフレームを使っていますか?
はい。QFNはリードが外に出ていない「リードレス」構造ですが、中身はリードフレームベースのパッケージです。小型・薄型・低コスト化に向くため採用が広がっています。
Q. BGAとの違いは何ですか?
BGAは金属フレームではなく配線基板(サブストレート)を骨組みに使い、裏面のボール端子で接続します。多ピン・高集積に向く一方コストは高めです。リードフレーム系は低〜中ピンで低コスト・高放熱に強く、用途で使い分けられます。
Q. なぜ成熟技術なのに今も使われるのですか?
大量生産でのコスト効率、高温・振動への高い信頼性、低インピーダンスな信号伝送など、バランスに優れるためです。とくにパワー半導体や車載分野で重要性が高まっています。
まとめ
最後に要点を整理します。
- リードフレームはチップを支持・接続・放熱する金属製の枠組みで、半導体パッケージの背骨。
- 構造はダイパッド・インナーリード・アウターリード・タイバーなどからなる。
- 材料は放熱・低コストの銅合金系と低熱膨張で信頼性に強い42アロイの使い分け。
- 製法は量産向きのスタンピングと少量多品種・微細向きのエッチング。
- 後工程では搬送パレットとして機能し、QFNなどのリードレス品もリードフレームベース。
- パワー・車載需要を背景に、薄型化・リードレス化・高放熱化が進む現役の重要技術。
リードフレームは、半導体の「縁の下の力持ち」とも言える存在です。その構造と材料を理解することは、半導体パッケージ、ひいては後工程全体の理解につながります。














