2026年4月、米国議会に「MATCH法案」という注目の法案が提出され、日本の半導体業界に緊張が走っています。この法案は、日本やオランダなどの同盟国に対し、米国と同水準の対中輸出規制を150日以内に実施するよう義務付けるものです。従わない場合、米国は半導体製造装置の中国向け販売を全面禁止できるという強力な内容で、東京エレクトロンやASMLといった主要装置メーカーに大きな影響が及ぶ可能性があります。

MATCH法案とはどんな法律か

MATCH法(Multilateral Action on Controlling Technology and Hardware Act=ハードウェアの技術管理の多国間整合法案)は、2026年4月2日に米国下院へ超党派で提出されました。与野党の議員が共同提案しているため、法案の成立可能性は比較的高いとみられています。

法案の核心は3点です。

第一に、日本・オランダなどの主要同盟国に対し、150日以内に米国と同水準の半導体製造装置輸出規制の導入を求めること。第二に、期限内に対応しない場合は米国が独自に、これらの国の企業による中国向け販売を禁止できること。第三に、対象はASML(オランダ)のEUV露光装置のような最先端品にとどまらず、より広いカテゴリの装置に及ぶ可能性があることです。

この法案が生まれた背景には、中国が先端半導体の自国開発を急速に進めているという強い危機感があります。米国は単独で輸出規制を強化してきましたが、同盟国が「抜け穴」になることを防ごうとする意図があります。

東京エレクトロンをはじめ日本企業への具体的な影響

法案が成立した場合、最も大きな影響を受けるのは東京エレクトロン(TEL)です。同社の売上高に占める中国向けの割合は非常に高く、過去には30〜40%を超えることもありました。半導体製造プロセスで使われるエッチング装置や成膜装置などは中国の工場で幅広く使用されており、規制強化はそのままビジネスの縮小を意味します。

また、日本の装置メーカー全体にとって中国は主要市場の一つです。中国のファウンドリ(受託製造会社)や国内の半導体メーカーが積極的に設備投資を行っていることもあり、輸出規制の強化は業界全体の売上に直撃する可能性があります。

一方、同様に規制圧力を受けるオランダのASMLは、すでに高NA(ハイNA)EUVという最先端機種の中国輸出が禁止されています。今後は中位のEUV機種や、現在は輸出が許可されているArF液浸露光装置にも規制が拡大するかどうかが焦点です。

経済安保とラピダス戦略との関係

日本政府にとって、米国の要求に応じることは必ずしもマイナスばかりではありません。日本は現在、国家プロジェクト「ラピダス」を通じて2nm世代の最先端半導体の国産化を目指しており、政府・民間合計で2,676億円もの資金が投じられています。

米国との輸出規制の足並みをそろえることは、日米間の技術協力を深め、ラピダスが必要とするASMLのEUV露光装置や米国の最先端技術へのアクセスを確保する上でも重要な意味を持ちます。経済産業省の次世代半導体等小委員会でも2026年4月にこのトピックが審議されており、政府レベルの対応が本格化しています。

ただし、中国市場という巨大な収益源を失うコストと、日米同盟を深化させるメリットをどう天秤にかけるかは難しい政策判断です。日本の装置メーカー各社がどのような戦略をとるか、今後の動向が注目されます。

まとめ

米議会のMATCH法案は、日本の半導体装置メーカーに対して輸出規制の強化という重大な政策転換を迫る可能性があります。東京エレクトロンをはじめとする日本企業のビジネスモデルや日本政府の経済安保戦略にも影響が及ぶため、今後150日間の各国政府の対応に注目が集まります。

参考ソース

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半導体業界の技術・企業・市場動向を発信するブログ「semi-connect.net」の管理人。半導体プロセス・前工程・後工程からエレクトロニクス企業の財務分析まで、業界の基礎から最新情報をわかりやすく解説します。