IntelのCEO リップ・ブー・タンが進める経営再建【2万4千人削減・アルテラ売却・3つの戦略柱】

2025年3月18日、インテル(Intel)の新CEOに就任したリップ・ブー・タン(Lip-Bu Tan)は、半導体業界で最も積極的と言われる経営再建計画を打ち出し、実行に移しています。
この記事では、リップ・ブー・タンCEOの経歴・改革の具体的内容・2026年時点での成果を解説します。

リップ・ブー・タンとはどんな人物か
- 出身:マレーシア生まれ、アメリカ国籍
- 学歴:ナンヤン工科大学(物理)→ メリーランド大学(物理修士)→ マサチューセッツ工科大学(MBA)
- 前職:Cadence Design Systems CEO(2009〜2021年)
- Intel経歴:2022年9月〜2024年8月にIntel取締役。2025年3月にCEO就任
Cadence時代にEDAツール(半導体設計ソフトウェア)最大手の一角として会社を大きく成長させた実績を持ち、半導体業界の設計・製造の両側面に深い知見を持つことがIntelのCEO選定の決め手となりました。
大規模リストラ:2万4千人の人員削減
リップ・ブー・タン就任後、Intelは半導体業界史上でも最大規模のリストラを断行しました。
- 削減人数:約2万4千人(全従業員の約15%)
- リストラ費用:19億ドル
- 目的:組織のスリム化・意思決定の迅速化・エンジニア文化の復活
リップ・ブー・タンは就任後の社内メッセージで「エンジニアが主役の文化に戻す」と宣言し、管理職層を大幅に削減して技術者が直接成果を出せる組織構造への転換を図りました。
アルテラ(Altera)の51%売却
2025年4月、IntelはFPGA事業部門である**Altera(アルテラ)の51%の株式を43億ドルで売却**しました(取引完了は2025年9月)。
アルテラとは
AlteraはFPGA(フィールドプログラマブルゲートアレイ)の大手メーカーで、IntelがXilinxと並ぶFPGA最大手の地位を狙い2015年に167億ドルで買収した会社です。
しかし、AlteraはIntelの本体事業との統合がうまくいかず、IntelのPC・データセンター中心の収益モデルとのシナジーが限定的でした。
売却の意義
- 資金調達:43億ドルの現金がIntelのバランスシートを改善
- 選択と集中:コア事業(CPU・ファウンドリ・AI)への資源集中が可能に
- Altera独立化:49%の持分を保持しつつ、Alteraは独自の意思決定で成長を目指す
3つの戦略柱
リップ・ブー・タンが掲げるIntelの再建戦略は3本柱で構成されています。
戦略柱①:財務規律あるファウンドリの実現
Intel Foundry Services(IFS)を単なる自社生産部門から、外部顧客(Apple等)を受け入れる独立採算のファウンドリビジネスへと転換します。
採算性を重視した投資判断・コスト管理を徹底し、2026年末〜2027年での黒字化を目指します。
戦略柱②:x86エコシステムの復活
IntelのCPUが長年培ってきたx86命令セットのエコシステム(Windows・Linux・膨大なソフトウェア資産)は依然として唯一無二の強みです。
Panther Lake(18A)・Clearwater Forest(18A)などの新世代CPUで、AMD Ryzenとの競争でのシェア奪還を目指します。
戦略柱③:AI戦略の強化(CEO直轄管理)
AIはリップ・ブー・タンCEOが直接責任者となって戦略を指揮します。
Gaudi 3(AI学習・推論向けアクセラレーター)のデータセンターへの採用拡大、およびAI PCへのIntel CPUの搭載推進が中心的な施策です。
就任1年間の成果(2025年3月〜2026年3月)
- Q1 2026決算:売上136億ドル(+7%)、予想を大幅超過、株価28%急騰
- 18A高量産開始(2025年10月)
- CES 2026でPanther Lake(18A初製品)発表
- Appleとの18Aファウンドリ契約締結
- Altera 51%売却完了(43億ドル)
- AI関連売上が全体の60%、前年比40%増
残る課題
- Intel Foundryの赤字(Q1 2026で24億ドル)の解消
- 18A歩留まりの採算ライン到達(2026年末〜2027年と予測)
- NVIDIAのAI加速器(H100・B200)に対するGaudiの存在感強化
- AMDのEPYC(データセンター向けCPU)への対抗
まとめ
リップ・ブー・タンCEOはわずか1年で、Intelの組織・財務・製品ロードマップを大きく変えました。
2万4千人削減・アルテラ売却・18A量産・Apple受注という実績は、就任当初の市場の懐疑的な見方を払拭しつつあります。
Intelの完全な復活には製造歩留まりの改善とIntel Foundryの黒字化が不可欠であり、2026〜2027年がその正念場となります。













