AIデータセンターの話題には、必ず「電力」がついて回ります。ただ「大量に使う」と言われても、実感が湧きません。

この記事では公表されている数字だけを使って、規模を整理します。結論から言うと、日本国内では2035年度に原発7基分の需要が上乗せされ、世界では2030年に日本の総電力消費量を超えます。

世界|2030年に945TWh、日本の総電力量を超える

国際エネルギー機関(IEA)が2025年4月に公表した報告書「Energy and AI」の見通しです。

世界のデータセンター電力消費
2024年415TWh
2030年945TWh(約9,450億kWh)

6年で約2.3倍。増加分だけで530TWhです。

この945TWhという水準について、IEAは「現在の日本の総電力消費量をわずかに上回る規模」と表現しています。データセンターだけで、国ひとつ分の電力を使う計算です。

比較対象としてもう1つ挙げられています。2030年のデータセンター電力消費はアルミニウム・鉄鋼・セメント・化学といったエネルギー集約型産業が使う電力の合計を上回る見通しです。

そして伸びの中心はAIです。AI専用のデータセンターに限れば、2030年までに4倍以上になるとされています。米国では、国全体の電力需要の増加分の約半分がデータセンター由来と見込まれています。

日本|2035年度に762万kW=原発7基分

国内の数字は、電力広域的運営推進機関(OCCTO)が2026年1月に公表した需要想定にあります。

この資料の特徴は、データセンターと半導体工場の新増設分を「個別計上」して切り出していることです。2023年6月の経済産業省「半導体・デジタル産業戦略」改定を受けて新増設が活発化したため、2024年度の供給計画から別枠で積み上げるようになりました。

個別計上された最大需要電力(全国計)

年度データセンター半導体工場合計
2026年度64万kW19万kW83万kW
2030年度328万kW92万kW420万kW
2033年度561万kW100万kW661万kW
2035年度661万kW101万kW762万kW

10年で83万kWから762万kWへ、約9倍です。

大型の原子力発電所1基がおよそ100万kW級であることを踏まえると、762万kWは原発7基分を超える規模にあたります。データセンターだけでも約6.6基分です。

電力量ベースでも見ておく

最大需要電力は「瞬間のピーク」の話です。年間の使用量では、同じ資料で2035年度に+568億kWhが個別計上されています(データセンター494億kWh、半導体工場74億kWh)。

日本の電力需要は「減少」から「増加」へ反転する

ここが本質的な変化です。日本の電力需要は長く減り続けてきました。人口減少と省エネの効果です。

ところが同じ資料の全国最大需要電力(送電端)を並べると、流れが変わります。

年度最大需要電力
2021年度(実績)162,308千kW
2023年度(実績)157,259千kW
2025年度(実績)158,815千kW
2030年度(想定)162,435千kW
2035年度(想定)164,601千kW

2030年度に、2021年度の水準を上回ります。OCCTOは、人口減少や省エネによる減少影響よりも、経済成長とデータセンター・半導体工場の新増設が上回るため、2035年度にかけて増加が続くと想定しています。

省エネで需要を抑え込んできた構図が、AIと半導体によって反転するということです。

データが示すもう1つの事実|半導体工場は頭打ち、伸びるのはデータセンター

先ほどの表を、増え方に注目してもう一度見てください。

  • 半導体工場——92万kW(2030年度)→ 100万kW(2033年度)→ 101万kW(2035年度)でほぼ横ばい
  • データセンター——328万kW → 561万kW → 661万kW と伸び続ける

半導体工場の新増設分は2032年度あたりで100万kWに達し、そこから動きません。すでに計画されている工場が出そろっているためです。

一方でデータセンターは最後まで伸び続けます。「電力問題」の主役は、半導体工場ではなくデータセンターだ——この資料はそう読めます。

ただし半導体工場の100万kWも、原発1基分に相当する量です。熊本のTSMC工場のような大型拠点が各地に立つ影響は、決して小さくありません。

なぜAIだけ桁違いなのか|ラック1本で従来の10倍

電力消費が跳ね上がる理由は、サーバーラック1本あたりの発熱量にあります。

従来のサーバーラックAI向けラック
消費電力空冷で実用上8〜25kW約120kW
冷却空冷で足りる液冷が必須

NVIDIAのGB200 NVL72は、ラック1本で約120kWを消費します。従来型の10倍近い水準です。

空冷では物理的に処理しきれません。そのためNVIDIAは直接液冷を前提としています。データセンターの建屋・設備そのものを作り替える必要があるということです。

同じ床面積でも、AI向けに置き換えるだけで必要な電力が一桁変わる——これが「AIデータセンターの電力問題」の正体です。

ただし計画は遅れている

数字を大きく見せるだけでは不正確なので、資料に書かれた注意点も挙げておきます。

OCCTOは前回(2025年度)の想定と比べて、データセンターにおいて事業者の工事延期・遅延があったことを明記しています。その結果、2033年度までは前回想定を下回る推移となりました。

需要の伸び自体は続くため2034年度以降は前回想定を上回る見通しですが、タイミングは後ろにずれています。資料も「今後もデータセンター・半導体工場の動向に注視が必要」と結んでいます。

発表された建設計画がそのまま実現するとは限らない——この前提で数字を見るべきです。

集中するのは北海道と東京

増加は全国に均等ではありません。資料では北海道・東北・東京・中部・関西・中国・九州で新増設分が個別計上されており、2025年度と2035年度を比べると北海道と東京が特に増加すると指摘されています。

北海道が上位に来るのは、ラピダスの千歳工場と、再生可能エネルギーを前提としたデータセンター誘致が重なっているためです。

秋田のAIデータセンターのように、電力を確保できる地域に立地が動く流れは、この数字の裏付けがあります。

よくある質問

Q. データセンターの電力消費はどれくらい増えますか?

世界では2024年の415TWhから2030年に945TWhへ、約2.3倍とIEAは見込んでいます。日本国内では、新増設分だけで2026年度83万kWから2035年度762万kWへ約9倍です。

Q. 原発何基分にあたりますか?

大型原発1基を100万kW級とすると、2035年度の762万kWは7基分を超える計算です。データセンターだけで約6.6基分にあたります。

Q. 半導体工場とデータセンター、どちらが電力を使いますか?

データセンターです。2035年度で661万kW対101万kW、約6.5倍の差があります。しかも半導体工場は2032年度ごろに100万kWで頭打ちになる一方、データセンターは伸び続けます。

Q. なぜAIサーバーはそんなに電力を使うのですか?

ラック1本あたりの消費電力が桁違いだからです。従来は空冷で8〜25kWが実用上の上限でしたが、GB200 NVL72は約120kWに達します。空冷では冷やしきれず、液冷が前提になります。

Q. 日本の電力需要は減っていたのではないですか?

反転します。人口減少と省エネで減ってきましたが、OCCTOの想定では2030年度に2021年度の水準を超え、2035年度まで増加が続きます。データセンターと半導体工場の新増設が減少要因を上回るためです。

まとめ

  • 世界のデータセンター電力消費は2024年415TWh→2030年945TWh日本の総電力消費量を上回る規模(IEA)
  • 国内では新増設分だけで2035年度に762万kW=原発7基分超(OCCTO、2026年1月公表)
  • 内訳はデータセンター661万kW/半導体工場101万kW半導体工場は2032年度ごろ頭打ち、伸びるのはデータセンター
  • 全国の最大需要電力は2030年度に2021年度の水準を超える。減少基調が反転する
  • 原因はラック1本120kWという電力密度。空冷の限界を超え液冷が必須
  • ただし計画は遅延している。2033年度までは前回想定を下回る推移
  • 増加が集中するのは北海道と東京

参考・出典