AIデータセンターがどれだけ電力を使うかは、公表データで見えてきました。では次の問いです。その電気を、どこから持ってくるのか。

答えとして急速に浮上しているのが原子力です。この記事では、テック大手が実際に結んだ契約と、なぜ再生可能エネルギーだけでは足りないのかを整理します。

なぜ再エネだけでは足りないのか

データセンターは24時間365日、止まらずに動き続ける設備です。ここに太陽光や風力の性質が噛み合いません。

IEEE Spectrumの表現が的確です。これらの電源からの電力は間欠的(intermittent)であり、電力を大量に消費するAIの需要を満たすには足りない可能性があるとされています。

夜は発電しない、風が止めば出力が落ちる——需要が一定なのに供給が揺れるのが問題です。蓄電池で埋めるにも、この規模では限界があります。

そこで求められるのが「安定して供給でき、かつ二酸化炭素を出さない」電源です。この条件を満たすものは、実質的に原子力しかありません。

テック大手が結んだ原子力契約

ここ数年で、実際の契約が相次いでいます。

企業相手容量稼働
Microsoftスリーマイル島(既存炉の再稼働)835MW2024年9月発表
GoogleKairos Power(SMR)500MW2030年
AmazonX-energy(SMR)5GW(1基80MW)2039年目標

AmazonはX-energyに5億ドルを投資しています。

戦略が分かれている

3社の選択には明確な違いがあります。

  • Microsoft——閉鎖された既存炉を復活させる。技術は確立済みで、最も早く電力を得られる道です。スリーマイル島という名前が持つ意味を考えれば、思い切った判断だといえます
  • GoogleとAmazon——新型のSMRに賭ける。Kairosは熔融塩冷却、X-energyはガス冷却と、炉の方式も異なります

「今すぐ確実な電力」か「将来の拡張性」か——同じ問題に対する答えが分かれています。

SMR(小型モジュール炉)とは

SMRはSmall Modular Reactorの略で、従来の大型原発より出力を小さくした原子炉です。

X-energyの炉は1基80MW。大型原発1基(100万kW=1,000MW)と比べると、10分の1以下の規模です。

小さくすることの狙いは、工場で製造してモジュールとして運び、必要な数だけ並べるという作り方にあります。建設現場での作業を減らし、期間と費用を圧縮する発想です。

ただし商用稼働の実績はこれから

期待は大きいものの、SMRはまだ普及段階にありません。Googleの初号機が2030年、Amazonの目標は2039年です。

需要は2030年に向けて立ち上がるのに、電源が間に合うとは限りません。送電線の増強に6〜10年かかるという話と同じ構造で、時間軸が合っていないという問題がここにもあります。

IEAが見る地域別の電源構成

IEAの報告書「Energy and AI」(2025年4月)は、2035年までのデータセンター向け電源構成をこう見込んでいます。再生可能エネルギーと原子力の合計が占める割合です。

地域再エネ+原子力の割合
米国再エネとSMRで半分以上
中国60%
欧州85%へ上昇
日本・韓国35%から60%近く

また2030年以降にSMRの導入が加速し、IT企業は2,000万kW以上を出資する見込みとされています。Amazonの5GW(500万kW)だけでもその4分の1にあたります。

電力会社ではなくIT企業が発電設備に直接投資する——この構図自体が、これまでにない動きです。

日本ではどうなるか

日本のデータセンター立地は、いまのところ再生可能エネルギーが豊富な地域に向かっています。

秋田のAIデータセンターや北海道の誘致は、風力・太陽光の適地であることが前提にあります。

ただし課題は2つ残ります。

  • 間欠性の問題は同じ——再エネが豊富でも、常時安定して出るわけではありません
  • 需要地まで運べない——北海道で作った電力を本州へ送るには送電線が要ります。日本海ルートの整備には6〜10年と1.5〜1.8兆円が見込まれています

「電源がある場所」と「需要がある場所」が離れている——これが日本固有の制約です。だからこそ、電力を確保できる地域へデータセンターそのものが動いています。

半導体産業にとっての意味

半導体工場も同じ条件に直面します。むしろ工場のほうが要求は厳しく、瞬時電圧低下すら許容できません。

さらに、顧客企業から製造時の電力の中身を問われる流れもあります。カーボンフリー電力を調達できるかどうかが、受注条件になりうるということです。

電源の選択が、工場の立地と競争力に直結する時代になりつつあります。

よくある質問

Q. なぜデータセンターは再エネだけで足りないのですか?

太陽光や風力は間欠的だからです。データセンターは24時間一定の電力を必要とするため、供給が揺れる電源だけでは成立しません。安定してカーボンフリーという条件を満たすのが原子力です。

Q. テック企業はどれくらいの原子力を契約していますか?

Microsoftはスリーマイル島で835MW、GoogleはKairos Powerと500MW、AmazonはX-energyと5GW(2039年目標、5億ドル投資)です。

Q. SMRとは何ですか?

小型モジュール炉(Small Modular Reactor)です。X-energyの炉は1基80MWで、大型原発の10分の1以下。工場で製造して運び、必要な数を並べる考え方です。

Q. SMRはいつ使えるようになりますか?

まだ先です。Googleの初号機が2030年、Amazonの目標は2039年。一方で需要は2030年に向けて立ち上がるため、間に合わない可能性があります。

Q. Microsoftはなぜ新型ではなく既存炉を選んだのですか?

技術が確立しており、最も早く電力を得られるためです。SMRの商用稼働を待つより、閉鎖された炉を再稼働させるほうが確実だという判断です。

Q. 日本のデータセンターの電源はどうなりますか?

現状は再エネが豊富な北海道・東北に立地が向かっています。IEAは日本・韓国で再エネと原子力の合計が35%から60%近くへ上昇すると見込んでいます。

まとめ

  • データセンターは24時間一定の需要。間欠的な太陽光・風力だけでは足りない
  • 安定+カーボンフリー」を満たす電源として原子力が選ばれている
  • Microsoft 835MW(既存炉の再稼働)/Google 500MW(2030年)/Amazon 5GW(2039年目標・5億ドル投資)
  • 戦略は「今すぐ確実な電力」と「将来の拡張性」に分かれている
  • SMRの商用稼働はこれから。需要の立ち上がりに間に合わない可能性がある
  • IEAは日本・韓国で再エネ+原子力が35%→60%近くへ、IT企業が2,000万kW以上を出資と見込む
  • 日本は電源のある場所と需要地が離れていることが制約。だから立地が動く

参考・出典