不純物ドーピングの手法まとめ【イオン注入・ガス・SOG】半導体製造の基礎

半導体デバイスの動作に欠かせないPN接合を形成するためには、シリコンウエハに意図的に不純物(ドーパント)を添加する「不純物ドーピング」が必要です。本記事では、半導体製造で用いられる主なドーピング手法を体系的に解説します。
不純物ドーピングとは
純粋なシリコン(真性半導体)は、自由に動ける電荷キャリアがほとんどなく、電気をほぼ通しません。半導体デバイスとして機能させるためには、意図的に不純物原子(ドーパント)をシリコンに添加して、キャリアを生成する必要があります。
- n型ドーピング:リン(P)・ヒ素(As)・アンチモン(Sb)などの5価元素を添加。電子が多数キャリアになる
- p型ドーピング:ボロン(B)などの3価元素を添加。正孔(ホール)が多数キャリアになる
n型領域とp型領域を接合させるとPN接合が形成され、ダイオード・トランジスタなどの半導体デバイスの基本動作が実現します。
不純物ドーピングの主な手法
① イオン注入+熱拡散(最も主流な手法)
現代の半導体製造で最も広く使われているドーピング手法です。
仕組み:
ドーパント原子をイオン化(電荷を持たせ)し、高電圧で加速してシリコンウエハに打ち込みます。その後、高温(800〜1100℃程度)の熱処理(アニール)を行い、打ち込んだドーパントを活性化させて拡散させます。
メリット:
- 注入量(ドーズ量)を1%以下の精度で精密に制御できる
- 注入深さ(プロジェクトレンジ)を加速電圧で制御できる
- フォトレジストやSiO₂マスクで選択的なドーピング領域を形成できる
- 低温での注入が可能なため、下地構造へのダメージが少ない
デメリット:
- イオンが衝突する際に結晶格子にダメージ(欠陥)を与えるため、アニールによる回復処理が必要
- 装置コストが高い
nmオーダーの微細なデバイスを高精度で製造するために、現代の半導体プロセスでは不可欠の手法です。
② ドーパント原子のガスを使ったドーピング
ドーパントを含むガス(例:ジボラン B₂H₆、ホスフィン PH₃)をシリコン表面に供給し、加熱によってドーパントを拡散・添加する手法です。
特徴:
- 半導体表面の浅い領域に、高濃度の不純物領域を形成するのに適している
- 深い拡散層を形成することは難しい
- CVD装置などを利用して実施できる
主に、コンタクト層など表面近傍の高濃度ドーピングが必要な箇所に使われます。
③ ドーパント入り酸化膜+熱拡散(SOGドーピング)
ドーパント原子(ボロンやリンなど)を含む液体酸化膜材料(SOG:Spin On Glass)をウエハにスピンコートし、熱処理によってドーパントを拡散させる手法です。
SOG(Spin On Glass)の概要:
- ドーパントを含む液体(ゾルゲル材料)をウエハにたらし、高速回転(スピン)させて薄く均一に広げる
- 加熱してゲル化・固化させた後、高温熱処理でドーパントをシリコン内に拡散させる
- 「Spin On Glass」の名称は、液体をスピンコートして酸化膜(ガラス質)を形成することから来ている
特徴:
- ガスドーピングと同様に、表面近傍の高濃度ドーピングに適している
- 大面積・均一なドーピングが比較的容易
- 深い拡散層の形成は難しい
手法の比較
| 手法 | 深さ制御 | 量制御 | 選択性 | 主な用途 |
|——|———-|——–|——–|———-|
| イオン注入+熱拡散 | ◎ 精密 | ◎ 精密 | ◎ 高い | 微細デバイス全般 |
| ガスドーピング | △ 浅い領域のみ | ○ | ○ | 表面高濃度層 |
| SOGドーピング | △ 浅い領域のみ | ○ | ○ | 表面高濃度層・大面積 |
まとめ
不純物ドーピングは、半導体デバイスのPN接合形成に不可欠なプロセスです。
- イオン注入+熱拡散:最も精密で微細デバイスに最適。現代の主流手法
- ガスドーピング:表面近傍の高濃度ドーピングに適している
- SOGドーピング:大面積・均一な表面ドーピングに有効
半導体デバイスの微細化が進む現代では、イオン注入の精度がデバイス性能を左右する重要な工程の一つとなっています。













