AIデータセンターの新設が相次いでいます。では実際にどこに建つのか——公表された調査データで整理します。

結論を先に言うと、件数は依然として東京・大阪に集中しています。ところが電力に余裕があるのは北海道と東北です。この矛盾が、いま日本の立地選定で起きていることの中心にあります。

2026〜2030年に24社38件

日経クロステックが2026年4月下旬から5月下旬にかけて、データセンター事業を手掛ける約80社に調査し、42社から回答を得ました。

その結果、2026年から2030年までに24社が合計38件の新設・増設を計画していることが分かりました。

地域別の内訳

地域件数
東京圏(千葉県含む)13件
大阪圏(京都府含む)9件
その他の地域13件
未定3件

東京圏と大阪圏を合わせて22件。地方分散が語られる一方で、実際の計画はまだ東阪に寄っています。

規模と冷却方式

  • 受電容量100MW超が5件——大型化が進んでいます
  • 液冷対応が全体の半数を超える——空冷では冷やせないAI向けを前提にした設計へ移行しています

なぜ東阪から離れられないのか

理由はアクセスと伝送遅延です。

利用者や企業の拠点が集中する場所から遠ざかるほど、通信の遅延が大きくなります。金融取引やリアルタイム処理では、この差が直接効いてきます。

さらに、既存の通信インフラや保守要員も都市圏に集まっています。運用のしやすさという現実的な理由も無視できません。

ところが電力は東阪にない

ここで衝突が起きます。電力広域的運営推進機関(OCCTO)の需要想定では、データセンターと半導体工場の新増設分が北海道・東北・東京・中部・関西・中国・九州で個別計上されており、2025年度と2035年度を比べて北海道と東京が特に増加するとされています。

しかし東京圏は、すでに系統の空き容量が逼迫している地域でもあります。送電線の増強には6〜10年かかります。

「低遅延が欲しいから東阪、でも電力があるのは北海道・東北」——この二律背反を、各社が個別に判断しているのが現在の状況です。

地方の計画は規模が違う

件数では東阪が多いものの、単体の規模では地方の計画が突出しています。

北海道苫小牧市|ソフトバンク「Core Brain」

項目内容
事業者ソフトバンク/IDCフロンティア
開業2026年度に50MW規模
将来の受電容量300MW超まで拡大を見込む
敷地面積70万平方メートル
建設費650億円
補助経済産業省から最大300億円

経産省のデータセンター地方拠点整備事業費補助金に採択された案件です。建設費の半分近くを国が負担していることになります。地方分散が政策として後押しされていることが、金額から読み取れます。

秋田市|最大500MW級の構想

秋田市飯島地区の北部地区再生可能エネルギー工業団地で、300〜500MW級のAIデータセンター構想が進んでいます。2033年の本格運用を目指すもので、UAEの政府系投資会社による大規模な投資検討も報じられています。

詳細は秋田のAIデータセンター計画で解説しています。

苫小牧の300MW超、秋田の最大500MW——東阪の案件と比べて、桁が違います。地方は件数ではなく規模で存在感を出している構図です。

なぜ北海道と東北なのか

立地条件を並べると、必然性が見えてきます。

  • 再生可能エネルギーの適地——風力・太陽光の資源が豊富。秋田の計画地が「再生可能エネルギー工業団地」であることが象徴的です
  • 気温が低い——外気で冷やせる時間が長く、冷却の電力と水を減らせます
  • 用地が確保できる——苫小牧の70万平方メートルは都市圏では不可能な規模です
  • 系統に余裕がある——都市圏のような逼迫がありません
  • 国の補助が付く——地方拠点整備の政策対象です

北海道にはラピダスの千歳工場もあり、半導体とデータセンターが同じ理由で同じ地域に集まっています。

残る課題は「運ぶ」こと

地方に建てても、作った計算能力をどう使うかという問題は残ります。

電力については、北海道から本州へ送る日本海ルートの整備が計画されていますが、工期6〜10年、工事費1.5〜1.8兆円の規模です。

通信の遅延については、AI学習のようなバッチ処理なら問題になりません。用途によって地方立地の可否が分かれるということです。

リアルタイム性が要る処理は東阪に、学習のような大規模計算は地方に——役割分担が進む可能性が高いといえます。

よくある質問

Q. 日本でデータセンターはどこに建設されていますか?

2026〜2030年の計画38件のうち、東京圏13件、大阪圏9件、その他の地域13件、未定3件です。件数では東阪に集中しています。

Q. 地方分散は進んでいないのですか?

件数では東阪が多いものの、規模では地方が上回ります。苫小牧は将来300MW超、秋田は最大500MW級です。国の補助金も地方拠点の整備を対象としています。

Q. なぜ北海道や東北に建てるのですか?

再エネの適地であること、気温が低く冷却しやすいこと、広い用地が取れること、系統に余裕があること、国の補助が付くことが理由です。

Q. 苫小牧のデータセンターの規模は?

ソフトバンクとIDCフロンティアの「Core Brain」で、2026年度に50MW規模で開業し、将来は受電容量300MW超まで拡大を見込みます。建設費約650億円のうち最大300億円が経産省の補助です。

Q. 液冷はどれくらい採用されていますか?

調査対象の計画のうち半数を超える施設が液冷を導入予定です。AI向けの高発熱サーバーが前提になっています。

Q. 東京圏に建てられなくなりますか?

低遅延が必要な用途では引き続き需要があります。ただし系統の空き容量が制約となるため、大規模なものほど地方へ向かうと見られます。

まとめ

  • 2026〜2030年に24社38件の新設・増設計画(日経クロステック調査、42社回答)
  • 内訳は東京圏13件・大阪圏9件・その他13件・未定3件件数では依然として東阪集中
  • 理由はアクセスと伝送遅延、そして運用のしやすさ
  • 一方で電力に余裕があるのは北海道・東北。東京圏は系統が逼迫している
  • 規模では地方が突出——苫小牧は将来300MW超、秋田は最大500MW級
  • 苫小牧は建設費約650億円に対し経産省が最大300億円を補助。政策的な後押しがある
  • 受電容量100MW超が5件、液冷採用が半数超とAI向けへ移行
  • 今後は低遅延は東阪、大規模計算は地方という役割分担が進む可能性

参考・出典