北海道にデータセンターが集まる理由|送電線で運べないなら需要を電源のそばへ

北海道でデータセンターの建設計画が相次いでいます。再生可能エネルギーが豊富だから——とよく説明されますが、実はこの土地には矛盾があります。
再エネが余って捨てられている一方で、産業用の電気料金は全国で3番目に高い。この記事では、その矛盾を解きながら、なぜデータセンターが北海道へ向かうのかを整理します。
石狩の実例|さくらインターネット
国内で最も象徴的なのが、石狩市のさくらインターネット石狩データセンターです。
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 稼働 | コンテナ型データセンターを2025年6月11日に稼働開始 |
| GPU | NVIDIA H200を約1,000基 |
| サービス | 生成AI向けクラウド「高火力」 |
| 電力 | 再生可能エネルギー(主に水力)で100%再エネ・CO2排出ゼロ |
| 冷却 | 北海道の外気を活用。空冷と直接液冷を併用 |
冷却方式が示すもの
注目すべきは冷却です。すべてを液冷にするのではなく、必要なサーバーだけを直接液冷で冷やし、残りは空冷という構成をとっています。
これは液冷と空冷が当面は混在するという構造を、実際の商用施設が体現している例です。ラックあたりのサーバー密度を上げつつ、消費電力を抑える狙いがあります。
ただし制約にぶつかっている
順風満帆というわけではありません。GPUサーバーを増やすにつれ、スペースと電力供給の制約に直面する可能性が指摘されており、既存施設を拡張するか別の場所に新設するかの判断が課題になっています。
「北海道なら電力に余裕がある」という話も、無制限ではないということです。
北海道が選ばれる理由
立地の優位性は明確です。
- 外気が冷たい——冷却に使う電力と水を減らせます
- 再エネのポテンシャルが大きい——特に洋上風力は国内で最も導入目標が高い地域です
- 水力がある——太陽光・風力と違い、安定して出せる再エネです
- 用地が確保できる——苫小牧の70万平方メートルのような規模は都市圏では不可能です
- 国の補助が付く——地方拠点整備の政策対象になっています
矛盾|再エネを捨てているのに電気は高い
ここが本題です。北海道には次の2つの事実が同居しています。
①再エネが余って出力制御されている
北海道電力ネットワークのエリアでは、2023年5月8日に初めての出力制御が実施されました。対象は1,916カ所の発電所(太陽光1,177カ所、風力739カ所)です。
発電できるのに、止めてもらう。需要より供給が多くなりすぎて、電力系統のバランスが崩れるためです。
②それなのに電気料金は全国3番目に高い
一方で、産業用の特別高圧の料金(2023年度)は北海道が1kWhあたり23.6円で、地域別で3番目に高い水準にあります。
電気が余って捨てられている地域の電気代が高い——直感に反しますが、理由があります。
なぜこうなるのか
- 再エネは「いつ出るか」を選べない——余るときは余り、足りないときは足りない
- 本州へ送れない——大消費地へ運ぶ送電線の容量が足りません
- 近くに大きな需要がない——使い切れないから捨てるしかない
- 結果としてバックアップの火力が必要——そのコストが料金に乗ります
「電気がある」ことと「安く使える」ことは別問題だということです。
核心|運べないなら、需要を電源のそばへ
ここでデータセンターの意味が変わります。
北海道の再エネを本州で使うには送電線が要ります。日本海ルートの整備には工期6〜10年、工事費1.5〜1.8兆円が見込まれています。待てません。
ならば発想を逆にする。電気を需要地へ運ぶのではなく、需要を電源のそばへ持っていく。
データセンターはこれが可能な設備です。置く場所を選ばない計算需要だからです。工場のように原材料や製品の物流に縛られません。
- 出力制御で捨てていた電力に使い道ができる
- 送電線の増強を待たずに再エネを活かせる
- 発電事業者にとっては安定した売り先になる
これが北海道でのデータセンター誘致の本質です。単に「土地が安いから」ではありません。
残る課題|需給は綱渡り
楽観だけでは終わりません。北海道の電力需給には制約が重なっています。
- ラピダスも電力を使う——千歳工場は4棟フル稼働で最大約60万kW、北海道全体の最大電力需要の約1割にあたる見込みです
- データセンターも積み上がる——苫小牧は将来300MW超を見込みます
- 泊原発3号機は早くて2027年夏の再稼働との観測——それまでの需給は厳しいと見られています
- 再エネは安定しない——出力制御が起きる一方、風がない日には足りません
半導体工場とデータセンターが同じ電力を取り合う構図が、すでに始まっています。半導体工場は瞬時電圧低下すら許容できないため、供給の質という点では工場のほうが要求が厳しくなります。
それでも北海道に集まる理由
課題を並べてもなお、優位性は残ります。
電気料金が高くても、冷却にかかる電力そのものが少なくて済むなら、総コストでは有利になりえます。外気が冷たいことは、単価の高さを部分的に相殺します。
さらに「100%再エネで動かしている」という事実自体に価値が生まれています。顧客企業が調達先の電源構成を問う流れがあるためです。さくらインターネットが再エネ100%を明示しているのは、コストではなく売り物としての意味があります。
北海道には半導体関連企業の集積も進んでいます。電力を軸に、産業のかたちが変わりつつある地域だといえます。
よくある質問
Q. なぜ北海道にデータセンターが集まるのですか?
外気が冷たく冷却効率が高いこと、再エネのポテンシャルが大きいこと、広い用地が取れること、国の補助が付くことが理由です。加えて、送電線で本州へ運べない再エネを現地で使えるという意味があります。
Q. 北海道は電気が余っているのですか?
時間帯によっては余っています。2023年5月8日には北海道エリアで初の出力制御が実施され、1,916カ所(太陽光1,177・風力739)が対象になりました。ただし常に余っているわけではありません。
Q. 電気が余っているのに料金が高いのはなぜですか?
再エネは出るタイミングを選べず、本州へ送る送電線も足りないためです。バックアップの火力が必要になり、そのコストが料金に反映されます。産業用特別高圧は2023年度で23.6円/kWh、地域別3番目の高さです。
Q. 石狩データセンターの規模は?
さくらインターネットが2025年6月11日にコンテナ型データセンターを稼働させ、NVIDIA H200を約1,000基整備しています。再エネ100%、空冷と直接液冷の併用です。
Q. ラピダスとデータセンターで電力は足りますか?
綱渡りの状況です。ラピダス千歳は4棟フル稼働で最大約60万kW、北海道全体の最大需要の約1割にあたります。泊原発3号機は早くて2027年夏の再稼働との観測があります。
Q. データセンターは電力の安い場所に建てるのでは?
単価だけでは決まりません。冷却に必要な電力量そのものが減ること、再エネ100%という電源構成が顧客への訴求になることが、単価の高さを相殺しています。
まとめ
- 石狩のさくらインターネットは2025年6月11日にコンテナ型DCを稼働、H200を約1,000基。再エネ100%・CO2ゼロ
- 冷却は空冷と直接液冷の併用。液冷と空冷が混在する構造の実例
- 北海道の優位性は冷たい外気・再エネ・用地・補助金
- 矛盾——2023年5月8日に初の出力制御(1,916カ所)が起きる一方、産業用特別高圧は23.6円/kWhで全国3番目の高さ
- 原因は再エネの出るタイミングを選べないこと、本州へ送れないこと、近くに需要がないこと
- 核心は「運べないなら需要を電源のそばへ」。データセンターは置く場所を選ばないため成立する
- ただしラピダスが北海道の最大需要の約1割を使う見込みで、需給は綱渡り
参考・出典
- コンテナ型データセンターの稼働を開始|さくらインターネット、2025年6月11日――石狩データセンターでのコンテナ型設備の稼働、NVIDIA H200の整備、外気と再生可能エネルギーの活用、空冷と直接液冷の併用
- 北海道エリアで初の出力制御、5月8日に実施|日経BP――2023年5月8日の出力制御と対象となった1,916カ所(太陽光1,177・風力739)
- ラピダス新工場など、原発なしでは電力ギリギリの北海道|日本経済新聞――ラピダス千歳の電力需要見込み、産業用特別高圧の料金(2023年度23.6円/kWh、地域別3番目)、泊原発3号機の再稼働時期に関する観測
- 北海道、再生エネ利用データセンター集積 送電網に課題|日本経済新聞――再エネを利用するデータセンター建設計画の集積と送電網の課題














