X線分析装置大手のリガク・ホールディングス(東証プライム: 268A)が、2026年8月7日に2026年12月期 第2四半期(4〜6月)の決算を発表しました。

結果はひとことで言うと「半導体は絶好調、それ以外が足を引っ張る」という明暗のはっきりした内容です。半導体プロセスコントロール機器の売上が前年同期比+60%と急伸する一方、全体の営業利益は-32.4%の減益。本記事では決算説明会の内容を整理し、リガクの半導体計測ビジネスがなぜ伸びているのか、通期計画は達成できるのかを解説します。

リガク・ホールディングスとはどんな会社?

リガクは1951年創業のX線分析装置の老舗メーカーです。X線回折(XRD)や蛍光X線分析(XRF)などの分析装置で世界有数のシェアを持ち、材料研究・製薬・電池など幅広い分野の研究室で「リガクの装置」が使われています。投資ファンドのカーライル傘下を経て、2024年10月に東証プライムへ上場しました。

項目内容
社名リガク・ホールディングス株式会社
証券コード268A(東証プライム、2024年10月上場)
本社東京都昭島市
事業X線分析・計測装置(XRD・XRF等)、半導体プロセスコントロール機器、部品・サービス
決算期12月期

半導体業界の文脈で重要なのは、同社が「研究室向け分析装置の会社」から「半導体工場のインライン計測の会社」へと軸足を広げている最中だという点です。

2026年12月期Q2決算の全体像 — 増収減益

指標Q2(4-6月)実績前年同期比
売上収益216億円+7.4%
営業利益19億円-32.4%
営業利益率9.0%-5.3pt

上半期(1〜6月)の累計では売上395億円(-2.9%)、営業利益25億円(-54.9%)と、さらに厳しい姿になります。増収なのに大幅減益という形は、後述するセグメント間の明暗と、利益率の高い部品・サービスの落ち込みが効いています。

セグメント別 — 半導体+60%、他は軒並みマイナス

セグメントQ2売上前年比Q2営業利益前年比
半導体プロセスコントロール機器74億円+60.0%14億円+69.4%
多目的分析機器84億円-6.1%3億円-77.3%
部品・サービス58億円-11.3%6億円-60.1%

ひと目でわかるとおり、会社の利益の主力がすでに半導体セグメントに移っています(Q2営業利益14億円は全社19億円の7割超)。さらに注目すべきは受注で、半導体プロセスコントロール機器の上半期受注は前年比+86%。売上の伸び(+60%)を受注の伸びが上回っており、成長の持続を示唆する内容です。

一方の多目的分析機器は、大学・研究機関や一般産業の設備投資の弱さを反映して減収減益。装置が売れないと保守・消耗品も伸びないため、部品・サービスも連動して落ち込んでいます。

リガクの「半導体プロセスコントロール機器」とは何か

リガクが半導体工場に納めているのは、X線でウェハー上の薄膜を非破壊計測する装置です。X線反射率法(XRR)やX線回折(XRD)、蛍光X線(XRF)を使い、成膜した薄膜の「厚さ・密度・組成・結晶性」をウェハーを壊さずに測定し、成膜工程が狙いどおりに進んでいるかを監視します(プロセスコントロール=工程管理)。

この分野の需要が急伸している背景には、半導体の構造変化があります。

  • HBM・3D NANDの多層化: 積層数が増えるほど「1層ごとの膜の出来」が歩留まりを左右し、計測の頻度と精度の要求が上がる
  • GAAトランジスタなど立体構造化: ナノメートル級の極薄膜を何層も重ねるため、X線のような非破壊・高精度の計測手段の価値が増す
  • 先端パッケージング: チップを積み重ねる工程でも膜・バンプの計測需要が発生する

計測・検査分野では光学式のKLAや、EUVマスク検査で独占的な地位を持つレーザーテックが有名ですが、X線という「別の物差し」で膜そのものの物性を測れるのがリガクの独自ポジションです。検査・計測装置業界の全体像は、以下の記事で詳しく解説しています。

半導体検査装置メーカー比較 — KLA・レーザーテック・日立ハイテクの強みの違い
レーザーテックの競争優位 — EUVマスク検査で独占できた理由

通期計画は据え置き — カギは「下期の利益回復」

会社側は通期ガイダンスを売上1,010億円(+7.2%)、営業利益194億円(+16.1%)で据え置きました。決算説明会では、川上CEOが「売上収益は多少のアップサイドが期待できる」と述べ、半導体の強いモメンタムが多目的分析機器の遅れを補うという見方を示しています。小畑CTOからは、新製品の開発がスケジュールどおり、または想定を上回って進んでいるとの報告がありました。

ただし数字を見ると、上半期の営業利益は25億円。通期194億円を達成するには、下半期だけで約169億円を稼ぐ必要がある計算です。半導体セグメントの受注残(+86%)が下期に売上・利益として立ってくること、そして利益率の高い部品・サービスの回復が前提となる、かなり下期偏重の計画といえます。次回Q3決算では、この「下期回復シナリオ」が実際に数字に表れているかが最大のチェックポイントになります。

計測業界の中のリガク — 光学のKLA、X線のリガク

半導体の計測・検査市場は、光学式(光の反射・散乱で測る)を主戦場とするKLAが圧倒的な存在です。それでもリガクの半導体事業が+60%で伸びているのは、光学式が苦手とする領域をX線が補完する構図があるからです。

  • 極薄膜の物性: 原子数層レベルの膜の「厚さ・密度・結晶性」は、X線反射率法(XRR)やX線回折(XRD)が直接測れる領域です。光学式は速度に優れる一方、膜の物性そのものの計測ではX線に分があります。
  • 積層構造の奥: HBMや3D NANDのように何十層も積んだ構造では、表面からは見えない層の情報が重要になります。透過力のあるX線は「埋もれた層」にアクセスできる数少ない手段です。
  • 装置内(インライン)計測へ: かつて研究室の分析装置だったX線計測は、いまや量産ラインで全数管理に近い形で使われつつあります。「実験室からファブへ」という流れそのものが、リガクの成長ストーリーです。

業界団体のSEMIも2026年の半導体製造装置投資が過去最高水準になるとの見通しを示しており、計測分野への波及はまだ序盤とみられます。微細化と立体化が進むほど「作ったものを正しく測る」需要は構造的に増えるため、計測はWFE(前工程装置)投資の中でも息の長い成長領域といえます。

投資家目線での注目ポイント

  • 半導体受注+86%の持続性: AI・HBM投資の恩恵をどこまで取り込めるか。受注→売上への転換スピードに注目
  • 多目的分析機器の底打ち時期: 研究開発投資の回復に依存。ここが戻らないと全社利益の回復が遅れる
  • 利益率の改善: Q2の営業利益率9.0%は通期計画(約19%)から大きく乖離。下期の数字で計画の実現性を検証

※本記事は決算情報の解説であり、特定銘柄の売買を推奨する投資助言ではありません。

よくある質問(FAQ)

Q. リガクは半導体製造装置メーカーですか?

A. 成膜やエッチングを行う「製造」装置ではなく、製造の途中で膜の出来栄えをX線で測る「計測」装置(プロセスコントロール機器)のメーカーです。KLAやレーザーテックと同じ計測・検査の領域に属します。

Q. なぜ半導体セグメントだけ+60%も伸びているのですか?

A. HBMや3D NANDの多層化・トランジスタの立体化により、薄膜を非破壊で精密計測するニーズが急増しているためです。上半期の受注は前年比+86%と、売上以上のペースで伸びています。

Q. 増収なのに営業利益が-32.4%なのはなぜ?

A. 利益率の高い多目的分析機器(-77.3%)と部品・サービス(-60.1%)の利益が大きく落ち込み、半導体の増益(+69.4%)で補いきれなかったためです。

Q. 通期計画の達成は可能なのでしょうか?

A. 会社は据え置きを選択し、CEOも売上のアップサイドに言及していますが、逆算すると下半期に約169億円の営業利益が必要です。半導体受注残の売上化と部品・サービスの回復が前提のシナリオであり、Q3決算が試金石になります。

まとめ

  • リガクHDの2026年12月期Q2は売上216億円(+7.4%)、営業利益19億円(-32.4%)の増収減益
  • 半導体プロセスコントロール機器が売上+60%・受注+86%と急成長し、全社利益の7割超を稼ぐ主力に
  • X線による薄膜の非破壊計測という独自ポジションが、HBM・3D構造化の時代に追い風を受けている
  • 多目的分析機器と部品・サービスの落ち込みが全体の重石
  • 通期計画(営業利益194億円)は据え置きだが、達成には下期に約169億円という大幅な利益回復が必要。Q3決算が試金石

出典: リガク・ホールディングス 2026年12月期第2四半期決算(BigGo Finance、2026年8月7日)、リガク・ホールディングス決算説明会資料