2026年の半導体業界の設備投資は2,000億ドルに達する見込みです。前年比20%増、過去最大の水準です。

ただし全社が増やしているわけではありません。大きく増やす会社と、半分に減らす会社が同時に存在します。この記事では各社の金額を並べ、その差が何を意味するのかを整理します。

業界全体|1,660億ドルから2,000億ドルへ

業界合計前年比
2025年1,660億ドル+7%
2026年2,000億ドル+20%

2025年の+7%から、2026年は+20%へ加速します。投資のペースそのものが上がっているということです。

企業別の設備投資

企業2025年2026年増減
TSMC409億ドル520〜560億ドル約3割増
Samsung(半導体分)400億ドル+20%
SK hynix+40%以上
Micron+40%以上
GlobalFoundries+70%
Intel177億ドル据え置き〜減少2025年は-29%
Texas Instruments46億ドル20〜30億ドル約半減

TSMCが突出している

TSMCの2026年の設備投資は520億〜560億ドル(約8兆2,000億〜8兆9,000億円)。2025年の409億ドル(約6兆5,000億円)から約3割増です。

規模を実感するには比率が分かりやすい。2025年時点で、TSMC1社が業界全体の設備投資の25%を占めています。4分の1です。

同社の魏哲家CEOは、2026年のファウンドリ業界全体の成長率が約14%と見込まれる中で、「業界全体を上回り、前年比30%を超える増収を目指す」と述べています。背景にあるのは川下のAI需要の強さです。

注意|Samsungの数字は読み方に罠がある

ランキング記事でよく混乱が起きる箇所です。

Samsungの2026年の投資額は110兆ウォン(約740億ドル)と報じられます。この数字だけ見ればTSMCを上回ります。

しかしこの740億ドルには、R&Dと半導体以外の設備投資が約340億ドル含まれています。半導体の設備投資に限れば約400億ドルです。

比較する土俵を揃えないと、順位が逆転して見えます。半導体の設備投資で比べる限り、TSMCが首位です。

核心|増える会社と減る会社

全体が20%増える中で、各社の動きは真逆に分かれています。

大きく増やす

  • GlobalFoundries——+70%
  • SK hynix——+40%以上
  • Micron——+40%以上
  • TSMC——約3割増
  • Samsung——+20%

減らす

  • Texas Instruments——46億ドルから20〜30億ドルへ約半減
  • Intel——2025年に-29%、2026年も据え置きか減少の見通し

同じ業界にいながら、投資判断が正反対です。

この差が意味すること

①メモリが急増しているのはHBMのため

SK hynixとMicronがそろって+40%以上という水準は、通常のメモリ市況では説明がつきません。牽引しているのはHBMです。

HBMは通常のDRAMより製造に手間がかかり、同じ生産能力から取れる量が少ないという特性があります。需要に応えるには、その分だけ設備を増やす必要があります。

②TIの半減が示す別の景色

Texas Instrumentsはアナログ半導体の代表格で、主な出荷先は自動車と産業機器です。

その投資が約半分に落ちる——これはAIとは無関係な市場が弱いことを示しています。

「半導体が好調」という言葉が指しているのは、実際には業界の一部です。AI関連の先端ロジックとメモリだけが伸び、自動車・産業向けは投資を絞る局面にあります。

③Intelの後退

2025年に-29%、2026年も回復しない見通しです。かつて設備投資でTSMCと競った企業が、この位置にいます。投資額の順位は、そのまま数年後の生産能力の順位になります。

設備投資は装置メーカーの売上になる

この2,000億ドルは、そのまま製造装置と材料の市場です。

ファウンドリとメモリが増え、アナログが減るという構図は、装置メーカーごとに追い風と向かい風が分かれることを意味します。先端ロジックとHBM向けに強い装置・材料を持つ企業に需要が集中します。

パネルレベルパッケージCoWoSのような後工程への投資が増えているのも同じ流れです。投資の中心が前工程だけではなくなっています。

電力という次の制約

投資額が増えても、工場がすぐ動くわけではありません。半導体工場は新増設分だけで2035年度に101万kW——原発1基分の電力を必要とします。

資金より先に、電力と用地がボトルネックになりつつあります。設備投資の数字は、それを引ける場所があって初めて意味を持ちます。

よくある質問

Q. 2026年の半導体設備投資はいくらですか?

業界全体で2,000億ドル、前年比+20%の見込みです。2025年は1,660億ドル(+7%)でした。

Q. 設備投資が最も多い企業はどこですか?

TSMCです。2026年は520〜560億ドルで、2025年の409億ドルから約3割増。2025年時点で業界全体の25%を1社で占めています。

Q. Samsungのほうが多いと聞きましたが?

報じられる110兆ウォン(約740億ドル)にはR&Dと半導体以外が約340億ドル含まれます。半導体の設備投資に限れば約400億ドルで、TSMCが上位です。

Q. なぜメモリ各社が大きく増やしているのですか?

HBMの需要です。HBMは通常のDRAMより製造の手間がかかり、同じ能力から取れる量が少ないため、供給を増やすには設備を増やす必要があります。

Q. 減らしている企業もあるのですか?

あります。Texas Instrumentsは46億ドルから20〜30億ドルへ約半減、Intelは2025年に-29%で2026年も据え置きか減少の見通しです。

Q. TIの減少は何を示していますか?

TIはアナログ半導体の代表格で、出荷先は自動車と産業機器が中心です。AIとは別の市場が弱いことを示しています。

まとめ

  • 2026年の業界合計は2,000億ドル(+20%)。2025年は1,660億ドル(+7%)
  • TSMCが突出——520〜560億ドル(約3割増)。1社で業界の25%
  • Samsungの740億ドルは要注意。R&Dと半導体以外が約340億ドル含まれ、半導体分は約400億ドル
  • 大きく増やすのはGlobalFoundries +70%、SK hynix・Micron +40%以上
  • 減らすのはTI(約半減)とIntel(2025年-29%)
  • メモリの急増はHBMが理由。取れる量が少ないため設備が要る
  • TIの半減は自動車・産業向けの弱さを示す。「半導体好調」は業界の一部の話
  • 次の制約は資金ではなく電力と用地

参考・出典