2026年8月11日、ソニーセミコンダクタソリューションズとTSMCは、次世代イメージセンサーの合弁会社を設立する確定契約を締結しました。会社名はAdvanced Vision Semiconductor Manufacturing株式会社。拠点は熊本県合志市です。

ここで注意が必要です。合志市であって、菊陽町ではありません。菊陽町にあるのはソニーセミコンダクタマニュファクチャリングの本社・熊本テクノロジーセンターで、TSMCのJASMも菊陽町です。熊本に「ソニーとTSMCの拠点」が複数あり、混同されやすくなっています。

この記事では、ソニーの半導体工場が国内のどこにあるのかを公式の拠点一覧で整理したうえで、今回の合弁の中身、そして「積層型イメージセンサの下層は自社で作っていない」という公式フローの記載まで扱います。

【この記事でわかること】
・ソニーの半導体をつくっている会社(SSSとSCK)の関係
・国内8つの生産拠点の正式名称と所在地
・TSMCとの合弁会社の出資額・立地・量産時期
・なぜ菊陽町ではなく合志市なのか
・積層型イメージセンサの下層ロジックは誰が作っているか
・ソニーが世界シェアの数字を公表していないこと

1. ソニーの半導体をつくっているのはどの会社か

ソニーの半導体事業には、よく似た名前の会社が2つあります。

会社資本金出資事業内容(公式の記載)
ソニーセミコンダクタソリューションズ(SSS)4億円ソニーグループ100%半導体関連製品と電子・電気機械器具の研究、開発、設計、生産、販売事業、およびこれに関連、附帯する事業
ソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(SCK)1億円SSSが100%半導体の設計・開発・生産・カスタマーサービス

SCKはSSSの100%子会社です。所在地は熊本県菊池郡菊陽町大字原水4000番地1で、ここが本社かつ熊本テクノロジーセンターになっています。

ここで一点、誤解されやすい点を書いておきます。「SSSが設計、SCKが製造」と説明されることがありますが、公式サイトにそうは書かれていません。上の表のとおり、両社とも事業内容に「設計」と「生産」の両方が入っています。

ただし拠点一覧を見ると役割の傾向は読み取れます。SSSの拠点はすべて「設計・開発拠点」または「設計・開発・営業拠点」、SCKの拠点はすべて「生産拠点」と区分されています。会社の定款上の事業内容と、実際の拠点の機能は別、ということです。

2. 国内の生産拠点8か所

ソニーセミコンダクタマニュファクチャリングが公式の拠点一覧で「生産拠点」として掲載しているのは、次の8か所です。

拠点名所在地区分
本社 熊本テクノロジーセンター熊本県菊池郡菊陽町大字原水4000-1生産拠点
長崎テクノロジーセンター長崎県諫早市津久葉町1883-43生産拠点
山形テクノロジーセンター山形県鶴岡市宝田1-11-73生産拠点
大分テクノロジーセンター大分県大分市大字松岡3500番地生産拠点
大分テクノロジーセンター 国東サテライト大分県国東市国東町小原3319-2生産拠点
鹿児島テクノロジーセンター鹿児島県霧島市国分野口北5-1生産拠点
白石蔵王テクノロジーセンター宮城県白石市白鳥三丁目53番地-2生産拠点
東浦サテライト愛知県知多郡東浦町大字緒川字上舟木50番地生産拠点

このほかに博多オフィス(福岡県福岡市博多区)が設計・開発拠点として掲載されています。

九州に4拠点(熊本・長崎・大分・国東・鹿児島で実質5)、東北に2拠点(山形・白石蔵王)という配置です。九州が「シリコンアイランド」と呼ばれる理由の一端がここにあります(九州の半導体企業・工場マップ/東北の半導体企業・工場マップ)。

間違えやすい拠点名

検索でよく見かける呼び方と、公式名称がずれているものがあります。

よく見る呼び方公式の拠点名
鶴岡テクノロジーセンター山形テクノロジーセンター(所在地は鶴岡市)
多賀城テクノロジーセンター該当なし。宮城の拠点は白石蔵王テクノロジーセンター(白石市)
菊陽町のソニー・TSMC合弁工場合弁会社の拠点は合志市。菊陽町はSCK本社とJASM

3. 【2026年8月】TSMCとの合弁会社

2026年8月11日の確定契約の中身です。

項目内容
会社名Advanced Vision Semiconductor Manufacturing株式会社
拠点熊本県合志市(ソニーが既に投資済みの新工場)
ソニーの拠出約4,650億円(現金出資と会社分割による資産移管)
TSMCの拠出約2,820億円(現金出資)
支配ソニーが単独の支配株主
生産品目スマートフォン向けイメージセンサー
量産開始2029年を予定

出資の合計は約7,470億円です。ただしソニー側の4,650億円は「現金出資」と「会社分割による資産移管」の合計なので、全額が新たに動く現金というわけではありません。

役割分担は明確に書かれています。ソニーがコア技術の開発・製品企画・製品設計を担い、合弁会社がTSMCの先端プロセス技術を使って量産の開発と製造を担うという形です。資金の拠出は「市場の需要などに応じて段階的に実行」されます。

追加投資については「日本政府による支援を受けることを前提として検討を進めています」と記載されています。

この話の起点は2026年5月

確定契約の3か月前、2026年5月8日に法的拘束力のない基本合意書が結ばれていました。そこには「熊本県合志市に新たに建設されたソニーの工場への開発及び生産ラインの構築に向けた検討」とあり、あわせて「ソニーによる長崎の既存工場への新規投資とともに」段階的に実施するとも書かれています。

つまり合志市の新工場と長崎の既存工場は、ひとつの計画の両輪として位置づけられています。ただし長崎への投資の規模と時期は、公式発表では明らかにされていません。

4. なぜ「菊陽町」ではなく「合志市」なのか

熊本には、半導体の拠点が近接して複数あります。整理しておきます。

拠点市町村何か
SCK 本社・熊本テクノロジーセンター菊陽町ソニーの既存の生産拠点
JASM(TSMC熊本)菊陽町TSMC・ソニー・デンソー・トヨタが関わるファウンドリ
Advanced Vision Semiconductor Manufacturing合志市今回のソニー・TSMC合弁。イメージセンサー専用

合志市は菊陽町の隣接自治体です。ソニーは合志市に既に新工場へ投資済みで、その工場を合弁会社の拠点に充てる形になっています。ゼロから土地を探したのではなく、手元にある新工場を使う、という構図です。

なおJASMについては、2024年2月6日にTSMC・ソニーセミコンダクタソリューションズ・デンソー・トヨタ自動車の連名で第二工場の建設が発表されています。ソニーはJASMにも関与しており、合弁の相手としてのTSMCと、出資先としてのJASMという2つの接点を持っていることになります。

5. 積層型イメージセンサの「下層」は自社で作っていない

これは見落とされやすい事実です。

積層型CMOSイメージセンサは、受光する画素のウェーハと、信号を処理するロジックのウェーハを貼り合わせて作ります。ソニーの公式な生産フローの説明には、こうあります。

「製造委託した論理回路ウェーハを積層します」

つまり下層のロジックウェーハは自社の工場で作っているわけではなく、外部に製造委託しているということです。ソニーのテクノロジーセンターのどこかが下層ロジックを担当している、という説明を見かけることがありますが、公式フローの記載はそうなっていません。

この「貼り合わせ」の技術的な中身はハイブリッドボンディング完全解説、積層型センサの各社比較は積層型CMOSイメージセンサーランキングで扱っています。

6. 世界シェア──ソニーは数字を公表していない

ソニーの公式サイトには、こう書かれています。

「世界シェアNo.1※1を誇るイメージセンサー事業」(※1 金額ベース、ソニー調べ)

パーセントの数字は書かれていません。「40%」「50%」といった数値を目にすることがありますが、それらは調査会社の推計であって、ソニー自身が公表した数字ではありません。

シェアの数字を扱うときは、どの調査機関が、どの年の、何を母数にして出した数字かを確認する必要があります。メーカー別の比較はCMOSイメージセンサーメーカーランキング、国内メーカー全体の位置づけは日本の半導体メーカーランキングにまとめています。

7. 海外の生産拠点

公式のニュースリリースで確認できる海外の動きとして、2024年3月28日にタイ(バンカディ)の半導体製造事業所で新棟が稼働したことが発表されています。運営はSony Device Technology (Thailand) Co., Ltd.です。

国内の拠点一覧は日本国内分のみの掲載のため、海外拠点の全体像は公式の拠点一覧からは把握できません。

まとめ

  • ソニーの半導体製造を担うのはソニーセミコンダクタマニュファクチャリング(SCK)。SSSの100%子会社で、本社は熊本県菊陽町
  • 国内の生産拠点は8か所(熊本・長崎・山形・大分・国東・鹿児島・白石蔵王・東浦)。ほかに博多オフィスが設計・開発拠点
  • 宮城の拠点は白石蔵王テクノロジーセンター(白石市)。多賀城に拠点はない
  • 山形の拠点の公式名は山形テクノロジーセンター(所在地は鶴岡市)
  • 2026年8月11日、TSMCとの合弁Advanced Vision Semiconductor Manufacturingの確定契約を締結。拠点は熊本県合志市
  • 出資はソニー約4,650億円・TSMC約2,820億円で合計約7,470億円。ソニーが単独の支配株主で、2029年量産開始予定
  • 合志市の新工場と長崎の既存工場への新規投資は一体の計画(長崎の規模・時期は非公表)
  • 積層型センサの下層ロジックウェーハは「製造委託」と公式フローに明記されている
  • ソニーはシェアを「No.1(金額ベース、ソニー調べ)」としか公表しておらず、%の数字は出していない

同じ型で他社の工場一覧も整理しています。ルネサスの工場一覧、イビデンの工場・事業場一覧、ADEKAの工場一覧、三井化学の半導体材料・工場一覧もあわせてどうぞ。

参考・出典

  • ソニーセミコンダクタソリューションズ「ソニーセミコンダクタソリューションズとTSMC、次世代イメージセンサーにおける合弁会社の設立に関する確定契約を締結」(2026年8月11日)https://www.sony-semicon.com/ja/news/2026/2026081101.html──合弁会社名Advanced Vision Semiconductor Manufacturing、拠点は熊本県合志市、ソニー約4,650億円(現金出資と会社分割による資産移管)、TSMC約2,820億円(現金出資)、ソニーが単独の支配株主、スマートフォン向けイメージセンサー、2029年量産開始予定、資金拠出は段階的、追加投資は日本政府の支援を前提に検討
  • ソニーセミコンダクタソリューションズ「ソニーセミコンダクタソリューションズとTSMC、次世代イメージセンサーに関する戦略的提携に向けた基本合意書を締結」(2026年5月8日)https://www.sony-semicon.com/ja/news/2026/2026050801.html──法的拘束力のない基本合意、熊本県合志市に新たに建設されたソニーの工場、長崎の既存工場への新規投資とともに段階的に実施
  • ソニーセミコンダクタソリューションズ「拠点一覧(日本)」https://www.sony-semicon.com/ja/company/base/index.html──SCKの生産拠点8か所(本社 熊本/長崎/山形/大分/大分 国東サテライト/鹿児島/白石蔵王/東浦サテライト)と博多オフィス(設計・開発)の正式名称と所在地。多賀城の拠点は掲載なし
  • ソニーセミコンダクタソリューションズ「会社概要」https://www.sony-semicon.com/ja/company/about/index.html──SSSは資本金4億円・ソニーグループ100%出資、SCKは資本金1億円・SSS100%出資で所在地は熊本県菊池郡菊陽町大字原水4000番地1、両社の事業内容の記載
  • ソニーセミコンダクタソリューションズ「グループ情報」https://www.sony-semicon.com/ja/company/index.html──「世界シェアNo.1※1を誇るイメージセンサー事業」、※1は金額ベース・ソニー調べ。パーセントの記載なし
  • ソニーセミコンダクタソリューションズ「開発・設計・生産の取り組み」https://www.sony-semicon.com/ja/company/operation-flow/index.html──積層型CMOSイメージセンサーの生産フローに「製造委託した論理回路ウェーハを積層します」の記載
  • TSMC/ソニーセミコンダクタソリューションズ/デンソー/トヨタ自動車「熊本におけるJASM第二工場の建設について」(2024年2月6日)https://www.sony-semicon.com/ja/news/2024/2024020601.html──JASM第二工場の建設に関する4社連名の発表
  • ソニーセミコンダクタソリューションズ「タイ(バンカディ)の半導体製造事業所における新棟稼働について」(2024年3月28日)https://www.sony-semicon.com/ja/news/2024/2024032801.html──Sony Device Technology (Thailand) Co., Ltd.の新棟稼働