SiC関連銘柄・企業マップ|バリューチェーン5層で見る日本勢の立ち位置と勝ち筋

「SiC 関連銘柄」と検索すると、脈絡のない企業リストが出てきがちです。しかしSiC産業は基板→エピ→デバイス→モジュールという層構造でできており、層ごとに競争環境も日本勢の強さもまったく違います。どの層の会社かを理解せずに「SiC関連」と一括りにするのは危険です。
本記事はSiCクラスターの第5回として、バリューチェーンの全体図と、各層の主要企業(日本の上場企業は証券コード付き)を整理します。ノエトラ44社マップと同じく「構造で理解する企業マップ」です。
SiCバリューチェーンの全体図
SiC粉末・るつぼ(部材) ↓ 【1】基板(単結晶ウェハー) ← 2,000℃超の昇華法 ↓ 【2】エピタキシャルウェハー ← デバイス品質の結晶膜を成長 ↓ 【3】デバイス(SiC MOSFET・ダイオード) ← 前工程 ↓ 【4】パワーモジュール ← 複数チップを1パッケージに ↓ 【5】搭載製品(EVインバーター・鉄道・AIサーバー電源) ※全工程を【装置・加工】と【部材・ガス】が支える
Wolfspeedの破綻(第4回参照)で明らかになったとおり、「全部を自前で持つ」垂直統合はリスクも大きく、いまは層ごとに強者が異なる分業構造へ移行しつつあります。
レイヤー別・主要企業マップ
【1】基板(単結晶ウェハー)
| 企業 | 備考 |
|---|---|
| Wolfspeed(米) | 長年の王者。再建後も技術力は健在 |
| Coherent(米)、SKシルトロン(韓) | 大手の一角 |
| TankeBlue・SICC(中) | 価格攻勢でシェア急拡大中 |
| SiCrystal(ローム傘下) | ローム(6963)の垂直統合を支える独子会社 |
| レゾナックHD(4004) | 基板とエピの両方を手がける日本の砦 |
【2】エピタキシャルウェハー — 日本勢が強い層
レゾナックHD(4004)が外販エピウェハーの世界大手です。エピ層の品質はデバイスの歩留まりを直接左右するため、価格競争になりにくく、基板より利益率を保ちやすい層です(詳細は次回エピ編)。
【3】デバイス(MOSFET・ダイオード)
| 企業 | 備考 |
|---|---|
| STMicroelectronics(スイス) | シェア首位32.6%。テスラ向けで先行 |
| onsemi(米)・Infineon(独) | 車載・産業の大手。上位5社で市場の9割超 |
| ローム(6963) | 日本勢トップ。トレンチMOSFET先駆、基板から垂直統合 |
| 三菱電機(6503) | 鉄道・産業モジュールの雄。新幹線N700S採用 |
| 富士電機(6504) | 産業パワエレの老舗。8インチ投資推進 |
| ルネサス(6723) | Wolfspeed破綻で戦略再構築中(第4回参照) |
| 東芝デバイス&ストレージ | 非上場(東芝グループ) |
【4】モジュール・搭載
デンソー(6902)はトヨタ系のモジュール・インバーターの中核で、8インチ基板の内製開発も推進。三菱電機(6503)・日立製作所(6501)グループは鉄道・産業用モジュールで存在感があります。
【装置・加工】【部材】 — 見落とされがちな日本の得意分野
| 企業 | 役割 |
|---|---|
| ディスコ(6146) | 硬いSiCの研削・切断の要。レーザーでウェハーを剥がすKABRA技術など加工の革新者 |
| 東海カーボン(5301) | 結晶成長炉に使う黒鉛(グラファイト)部材 |
| フェローテックHD(6890) | るつぼ・石英など炉内部材、中国でのSiC事業も展開 |
| イビデン(4062)ほか | 半導体装置向けグラファイト部材(当サイトのイビデン記事参照) |
| Aixtron(独)など | エピタキシャル成長装置(次回詳述) |
「どの層が儲かるか」で見るSiC産業
- 基板: かつての金脈だが、中国勢参入で価格競争へ。体力勝負の層に変質(第2回参照)
- エピ: 品質差別化が効き、価格が崩れにくい。日本勢(レゾナック)の主戦場
- デバイス: 上位5社寡占。巨額投資が必要だが、車載で採用されれば長期安定収益
- 装置・部材: 「ゴールドラッシュのツルハシ」。SiC市況の波を受けつつも、どの陣営が勝っても需要がある
Wolfspeedの教訓は「基板を握れば勝てる」の終焉でした。次の焦点は、8インチ移行を制するデバイスメーカーと、それを支える装置・部材に移っています。
「関連銘柄」として見る場合の注意点
- SiC比率を確認する: ここに挙げた日本企業の多くは総合電機・総合部品メーカーで、SiCは事業の一部。SiCが伸びても全社業績への寄与は限定的な場合が多い
- EVサイクルに連動する: ローム減損・Wolfspeed破綻が示すとおり、SiCはEV市況の影響を強く受ける。AIサーバー需要が第二の柱に育つかが焦点
- 中国リスクの層差: 基板は価格競争の直撃を受けるが、エピ・装置・部材は相対的に耐性がある
※本記事は業界構造の解説であり、特定銘柄の売買を推奨する投資助言ではありません。
よくある質問(FAQ)
Q. 日本の「SiC本命銘柄」はどこですか?
A. 層によって答えが変わります。デバイスならローム、エピならレゾナック、鉄道モジュールなら三菱電機、加工装置ならディスコ——というように、「どの層の強者か」で見るのが構造的な理解です。単一の本命を挙げる考え方自体が、この産業には合いません。
Q. デンソーやトヨタもSiCを作っているのですか?
A. デンソーはトヨタグループのインバーター・モジュールの中核で、SiCデバイスや8インチ対応の開発を進めています。自動車メーカー側が半導体の内製・共同開発に踏み込むのは、SiCがEVの競争力を左右する部品だからです。
Q. 上場していないSiC企業はありますか?
A. 東芝デバイス&ストレージ(東芝グループ)や、装置系の一部(ニューフレアテクノロジーなど東芝系)は直接投資できません。海外ではWolfspeed・ST・Infineon・onsemiが米欧市場に上場しています。
Q. 部材メーカーはなぜ注目されるのですか?
A. 2,000℃超の結晶成長には黒鉛るつぼ・断熱材などの消耗部材が不可欠で、生産量に比例して確実に需要が発生するためです。デバイス競争の勝敗に関係なく恩恵を受ける「ツルハシ」ポジションです。
まとめ
- SiC産業は基板→エピ→デバイス→モジュール+装置・部材の層構造。層ごとに競争環境が別物
- 日本勢の強い層はエピ(レゾナック)・デバイス(ローム・三菱電機・富士電機)・装置(ディスコ)・部材(東海カーボン等)
- 基板は中国勢の参入でコモディティ化が進み、勝負どころは8インチ移行とエピ品質へ
- 「SiC関連銘柄」はSiC比率・EVサイクル連動・層ごとの中国リスクを踏まえて見るべき
あわせて読みたい: SiCパワー半導体とは?(第1回)/SiCウェハー・基板の全知識(第2回)/Wolfspeed破産の全貌(第4回)
参考: TrendForce調べシェアデータ(EE Times Japan報道)、各社IR資料・製品情報












