半導体デバイスは、出荷前に「壊れないこと」を確かめる必要があります。そのために行うのが信頼性試験です。

ところがCMOSイメージセンサーの場合、一般的なロジックICと同じ試験だけでは足りません。理由は単純で、受光面の上に有機材料でできた光学部材が載っているからです。カラーフィルタもマイクロレンズも、熱・光・湿度で劣化します。

さらに厄介なのは合否の判定基準です。

電気的には正常に動作していても、白い点が増えていたら不合格

本記事では、CMOSセンサーの信頼性試験を3つの層に分けて整理し、あわせてどんな装置を使って試験するのかまでを解説します。

信頼性試験は3層で考える

センサーに要求される試験は、次の3層構造になっています。

内容規格の例
第1層半導体共通の試験JEDEC JESD22シリーズ
第2層イメージセンサー固有の試験各社の社内規格が中心
第3層用途別の上乗せ(車載など)AEC-Q100 ほか

第1層はどの半導体でも共通、第3層は用途で決まります。センサーらしさが出るのは第2層です。順に見ていきます。

第1層:半導体共通の試験(JEDEC)

電子デバイス技術の標準化団体JEDECが定めるJESD22シリーズが、事実上の共通言語になっています。主な試験は次のとおりです。

試験規格番号何を見るか
HTOL(高温動作寿命)JESD22-A108高温で通電し続けたときの寿命。Temperature, Bias, and Operating Life が正式名称
HTSL(高温保存)JESD22-A103通電せず高温放置したときの劣化
TC(温度サイクル)JESD22-A104高温と低温を繰り返す機械的ストレスへの耐性
パワー&温度サイクルJESD22-A105通電のON/OFFを伴う温度サイクル
THB(温湿度バイアス)JESD22-A100湿度環境で電圧を掛け続けたときの信頼性
HAST(高加速温湿度)JESD22-A110加圧して湿度試験を加速する

このほかESD(静電気放電:HBM/CDM)、ラッチアッププレッシャークッカー(PCT)、実装前の前処理(プリコンディショニング)などが組み合わされます。

なぜ「加速」するのか

信頼性試験の目的は、10年使ったときに何が起きるかを数週間で知ることです。実時間で待つわけにはいかないので、温度・湿度・電圧といったストレスを実使用より強くかけて劣化を早めます。

温度による加速はアレニウスの式、湿度を含む場合は温湿度を組み合わせたモデルで見積もるのが一般的です。「何時間の試験が実使用の何年に相当するか」という換算が、試験条件設計の中心になります。

第2層:CMOSセンサー固有の試験

ここからがセンサー特有の話です。ロジックICとの違いは、大きく2つあります。

  1. 有機材料でできた光学部材が受光面にある
  2. 合否を「画質」で判定する

① 光学部材の劣化を見る

カラーフィルタは顔料や染料、マイクロレンズは樹脂でできています。いずれも光・熱・湿度で変質する材料です。

対象起こりうる劣化影響
カラーフィルタ退色、分光透過率の変化色再現がずれる
マイクロレンズ変形、クラック感度低下、シェーディング悪化
カバーガラス接着部剥離、気密性の低下内部への水分・異物侵入

そのため耐光性試験——強い光やUVを長時間照射し、分光特性がどう変わるかを見る試験——が必要になります。車載カメラのように直射日光下に長時間置かれる用途では、特に重要度が上がります。

② 暗電流と白点

センサー固有の劣化指標として、次の2つが重視されます。

  • 暗電流:光が当たっていないのに流れる電流。高温で増加し、ノイズや「熱かぶり」の原因になる
  • 白点(白キズ):特定の画素だけ異常に明るく出る欠陥。ストレス試験後に増加していないかを数える

白点は製造直後にもある程度存在し、通常は補正回路で潰します。問題は経時で増えることです。補正可能な数を超えれば画質不良になります。

電気特性がすべて規格内でも、白点が規定数を超えれば不合格になる。

この「電気的にはOKだが画質でNG」という判定軸が、センサーの信頼性評価を難しくしています。欠陥画素数の許容値、暗電流の上限、感度変動の許容幅といったセンサー固有の判定基準を、あらかじめ定義しておく必要があります。

③ 用途によって加わる項目

医療・宇宙用途では放射線耐性、動体撮影が要求される用途では残像(イメージラグ)の評価が加わります。積層構造や新しい画素技術を採用した製品では、その構造に固有の劣化モードを追加で検証することになります。

なお、同じ半導体でもデバイスが変われば固有の課題はまったく異なります。データセンター向けGPUでは、電力密度と大規模運用に起因する別の問題が中心になります(GPUの信頼性試験)。

第3層:車載向けの上乗せ(AEC-Q100)

車載カメラ用センサーでは、AEC-Q100が事実上の必須要件です。自動車向け電子部品評議会(AEC)が定めるICの信頼性試験規格で、部品の種類によって規格が分かれています。

規格対象
AEC-Q100集積回路(IC)— イメージセンサーはここ
AEC-Q101ディスクリート半導体
AEC-Q200受動部品

AEC-Q100では動作温度範囲に応じてグレードが分かれ、要求される試験条件が変わります。実例として、ソニーセミコンダクタソリューションズは車載用イメージセンサーについてAEC-Q100 Grade 2への対応を公表しており、あわせて機能安全規格ISO 26262、品質マネジメントIATF 16949、サイバーセキュリティISO/SAE 21434への準拠を掲げています。

ここで押さえておきたいのは、信頼性試験と機能安全は別軸だという点です。前者は「壊れにくいか」、後者は「壊れたときに危険な状態にならないか」を問います。両者の関係はIATF 16949とAEC-Q・ISO 26262の違いで整理しています。

なお、故障そのものを避けられない前提で設計側が備える手段としては、冗長回路のような考え方もあります。試験は「選別」、冗長は「設計」であり、信頼性はこの両輪で担保されます。

試験に使う装置

ここからは実際の装置です。信頼性試験はストレスを与える装置測る装置の組み合わせで成り立ちます。

ストレスを与える装置

装置対応する試験特徴
恒温恒湿器(チャンバー)HTSL、THB、高温保存温度と湿度を一定に保つ。卓上型から人が入れるウォークイン型まで
冷熱衝撃装置熱衝撃(TS)高温と低温を急激に切り替える
温度サイクル試験装置温度サイクル(TC)緩やかな昇降温を繰り返す
HAST装置HAST加圧して100℃超の高湿環境を作る
プレッシャークッカーPCT/オートクレーブ飽和水蒸気で加速する
バーンイン装置HTOL、初期故障除去加熱しながら通電できる。専用ボードに実装して投入
ESD試験機HBM/CDM静電気放電を模擬的に印加

冷熱衝撃装置の2方式

装置選定で分かれ目になるのが、冷熱衝撃装置の動作原理です。環境試験装置大手のエスペックは、「試料静止型」「昇降式」の2種類を製品化しています。

  • 試料静止型:試料を動かさず、高温・低温の空気を切り替えて吹き付ける
  • 昇降式:試料を載せたバスケットが高温槽と低温槽を移動する

試料を動かさない方式は配線を接続したまま試験しやすい一方、槽を移動する方式は温度の切り替わりが急峻になります。通電状態を保ちたいのか、より厳しい熱衝撃をかけたいのかで選択が変わります。

容量も40L程度の小型から1100L以上まで幅があり、試験する個数(サンプル数)に応じて選定します。信頼性試験は統計で語るため、1ロットあたり数十〜数百個を同時投入することが珍しくありません。

センサー固有の装置

ここがイメージセンサーならではの部分です。

装置用途
耐光性試験機
(キセノンランプ式など)
カラーフィルタの退色を加速する。太陽光に近い分光分布の光源を用いる
暗箱暗電流・白点の測定。外光を完全に遮断した状態で撮像する
積分球・均一光源感度、シェーディング、色再現の測定。面内で均一な光を当てる
分光測定系カラーフィルタの分光透過率の変化を追う

暗箱は特に重要です。暗電流や白点は「光が当たっていない状態」でしか測れないため、わずかな漏れ光も測定を狂わせます。ストレス試験の前後で同じ条件で撮像し、差分を比較します。

測る装置

試験前後の電気的特性は、LSIテスターで測定します。受託試験を行うOKIエンジニアリングも、AEC-Q100試験のサービスにおいてLSIテスターによる試験前後の電気的特性測定に対応していると案内しています。

あわせて、加速寿命試験や環境ストレス試験では試験用ボードの製作が必要になります。チャンバーの中でデバイスに電圧を掛け続けるには、高温に耐える専用基板と配線が要るためです。この治具設計そのものが試験のノウハウになります。

試験の進め方

実務の流れは概ね次のようになります。

  1. 初期特性の測定 — ストレス前の画質・電気特性を記録する
  2. 前処理 — 実装時の熱履歴を模擬する(リフローなど)
  3. ストレス印加 — 各種チャンバーに規定時間投入する
  4. 中間測定 — 途中で取り出して劣化の進み方を見る
  5. 最終測定 — 初期値との差分で合否を判定する
  6. 故障解析 — 不合格品は原因を特定して設計・工程にフィードバックする

重要なのは「初期特性を測っておく」ことです。信頼性試験は絶対値ではなく変化量で判断するため、試験前のデータがなければ評価が成立しません。

まとめ

CMOSイメージセンサーの信頼性試験について、要点を整理します。

  • 試験は3層構造。半導体共通(JEDEC)+センサー固有+用途別(車載など)
  • 共通試験の主軸はJESD22シリーズ(HTOL=A108、TC=A104、HAST=A110 など)
  • センサー固有の理由は受光面に有機材料の光学部材があること
  • 見るのは暗電流・白点・分光特性電気的にOKでも画質でNGになりうる
  • 車載ではAEC-Q100が必須。信頼性試験と機能安全は別軸
  • 装置はストレスを与える側(恒温恒湿器・冷熱衝撃装置・HAST・バーンイン)と測る側(暗箱・積分球・LSIテスター)に分かれる
  • 冷熱衝撃装置には試料静止型と昇降式があり、通電の可否と衝撃の強さで選び分ける
  • 判定は変化量で行うため、初期特性の測定が前提

センサーの信頼性は、素子だけでなくその上に載る有機材料と、封止するガラスまで含めた総合力で決まります。車載カメラ向け製品で各社の差が出るのは、画素性能だけでなくこうした信頼性の作り込みが効いているためです。

参考にした主な調査・資料

  • 環境試験器 製品ラインナップ(エスペック)— 恒温恒湿器、冷熱衝撃装置(試料静止型・昇降式)、HAST装置などの構成と容量
  • AEC-Q100試験(OKIエンジニアリング)— AEC-Q100/Q101/Q200の対象区分、試験用ボード製作とLSIテスターによる電気的特性測定
  • 車載用イメージセンサー(ソニーセミコンダクタソリューションズ)— AEC-Q100 Grade 2、ISO 26262、IATF 16949、ISO/SAE 21434 への準拠

※本文中のJEDEC規格番号(JESD22-A100/A103/A104/A105/A108/A110)は各規格の公開情報に基づきます。規格本体の閲覧にはJEDECへの登録が必要です。